肺がん
肺がんとは
私たち人間の肺は左右に1つずつあり、右側は3つ、左側は2つに分かれています。
呼吸して空気を取り込み、体内の酸素と二酸化炭素を交換する重要な臓器です。
この臓器から発生する悪性腫瘍を肺がんと呼びます。
国立がんセンターの調査によると、2018年にがんで死亡した方の部位のうち、男性では肺がんが1位、女性で2位となっています。
50歳以上になると肺がんと診断される確率も高くなっており、注意が必要です。
最近では、20~30代女性の喫煙率が上昇していることもあり、女性の肺がん患者様が増えています。
その一方で、非喫煙者の女性も肺がんを発症しており、受動喫煙の害も問題となっています。
肺がんの症状
初期の肺がんでは自覚できるほどの強い症状が出ないため、たとえば軽い咳が長く続くや、疲れやすいといった症状から肺がんが疑われます。
また、健康診断や人間ドックのレントゲンや胸部CTといった画像診断で、たまたま見つかることもあります。
代表的な肺がんには非小細胞がんと小細胞がんがあり、それぞれ肺の中で発症する部位が異なります。
非小細胞肺がんの代表例である扁平上皮肺がんでは、太い気管や重要な血管近くにがんが発生しやすいため、気管や血管が腫瘍で閉塞してしまうことに伴う症状が出ます。
また、非小細胞肺がんである肺腺癌や小細胞肺がんは肺の末梢に出来やすく、肺の小さな血管から出血して喀血をすることもあります。
肺がんの原因
欧米では、肺がんの発生原因の約90%が喫煙とされ、非喫煙者に比べ喫煙者が肺がんに罹患する確率は20倍以上とされています。
英国では、喫煙者に発生した肺がん治療では高額な抗がん剤治療を保険では認めないと定められており、世界的にもタバコの発がん性が危険視されています。
日本の場合は、喫煙が原因で発生した肺がんは男性で約68%、女性で約18%と言われ、非喫煙者に対し喫煙者の肺がんとなるリスクは男性で4.5倍、女性で4.2倍高いと見込まれています。
また、タバコを吸わない女性の肺がん患者様が増えていることも報告されています。
厚生労働省の調査によると、受動喫煙のあるグループは、受動喫煙のないグループと比較して肺がん発生リスクが約2倍高いとされています。
また、配偶者の喫煙本数別にみると、受動喫煙のないグループに比べ、1日に20本未満で肺がん発生リスクが約1.7倍、20本以上では2.2倍と、本数が多いほど高くなっています。
さらに、女性に発生した肺がんのうち、約37%は夫からの受動喫煙がなかったら発症しなかったとも推計されています。
肺がんが悪化すると・・・
肺は血管に囲まれ、リンパ管も豊富に発達しているため、血液の流れやリンパ管を伝わって肺内部を始め肝臓、副腎、腎臓、脳、骨など全身の臓器に転移します。
肺小細胞がんと呼ばれる種類の肺がんは進行が早く、診断された時点で脳や骨に転移していることがあります。
がんが進行すると、転移した臓器特有の症状も出てきます。
肺がんの治療
肺がんはいまだに治りにくいがんの一つです。 その理由として、以下の4つが考えられています。
- 特有の症状がなく、自覚症状に乏しい
- 他の臓器へ転移しやすい
- 効果の高い治療法が少ない
- 肺がん治療の専門医が少ない
肺がんを治療するためには、早期発見・早期治療が重要です。特に肺がんの中でも肺腺がんはレントゲンや胸部CTに写りやすいので、定期検診で発見されることも少なくありません。
喫煙者の方は、喀痰検査を受けることで痰の中にがん細胞が見つかることがあります。
何より大切なのは、肺がんの進行状況を正確に把握することです。
非小細胞肺がんでは外科的切除が唯一完治を望める治療方法ではありますが、手術の適応は慎重に判断しなければなりません。
そのため、肺がんの治療にはCT、MRI、PETなどの画像診断がとても重要です。
また、近年では肺がんに発現している様々な異常遺伝子をターゲットにした分子標的治療薬、免疫療法として免疫チェックポイント阻害薬など、新しい薬物療法が開発されています。
これらに精通した専門医の元で治療を受けられたほうがよいでしょう。
肺がんのセカンドオピニオン
肺がんに対する治療方法は、どのような種類の肺がんなのか、ステージはいくつなのか、等の条件を加味して選択されます。
一番大切なのは、外科治療を受けるためにも早期に発見することです。
また、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤のような新しい薬剤を用いた治療を行う場合は、副作用の管理にも長けた医療機関で治療を受けることが望まれます。
現在のがんの状態、主治医医から提案された治療方針に少しでも迷いがあるのであれば、積極的に「セカンドオピニオン」を活用し、複数の医師から診察を受け納得いく治療を受けることが重要です。