原発不明がん
原発不明がんとは
原発不明がんは、どこの臓器からがんが発生したか分からないにも関わらず、他の臓器への転移を認めるがんです。
私たちに発生する可能性のある腫瘍全体のうち、原発不明がんはその1~3%にしか過ぎず、希少がんともいわれています。
原発不明がんの多くは首、鎖骨の上、鼠径部のリンパ節転移や全身の骨転移を起こして見つかることがあります。
全身の臓器で発生したがんには、転移しやすいリンパ節があります。
たとえば、頭頸部がんは首のリンパ節に、乳がんではわきのリンパ節によく転移するため、リンパ節転移を起こした部位から原発巣を推測しやすくなります。
その一方で原発不明がんでは、転移が見つかったリンパ節の近くの臓器を調べても、原発巣が見つかりません。
原発不明がんの症状
原発不明がんは、リンパ節転移や骨転移で見つかることが多いです。
そのため、リンパ節転移であれば硬い腫瘤が首などに触れる様になります。
骨転移の場合は、転移した骨の痛みや、病的骨折を起こすなどの症状が出現します。
また背骨に転移してしまうと、麻痺やしびれのような症状を呈するようになります。
胸の中に水がたまると呼吸困難感を感じ、お腹に水がたまると下肢のむくみやお腹の張りなどの症状が出ます。
転移が認められたそれぞれの臓器に特有の症状が出ますので、原発不明がんに特有の症状として気付くことはかなり難しいです。
原発不明がんの原因
原発不明がんが発生する原因に関しては明らかになっていませんが、以下のような原因が考えられています。
- 原発巣となりうる腫瘍が小さすぎて検査で見つけられなかった
- 原発巣が自然に消失してしまった
- 転移した腫瘍の数が多く、どれが原発巣かはっきりしない
- 転移した臓器とは関連しない他の臓器からがんが発生した
などといわれています。
CT、MRI、PETといった画像検査では、転移した臓器を診断することはできても、原発巣の同定にまでは至りません。
そこで現在では、転移した臓器を切除して組織を採取し、原発巣を探索する方法が取られています。
切除される臓器は、手術が比較的容易な場所に発生したリンパ節を目標とします。 採取した組織は、病理診断医が顕微鏡を用いた特殊な方法で調べ、ある程度の原発巣まで推定できるようになってきています。
原発不明がんが悪化すると
原発巣が分からない場合は適切な治療が行えないことも多く、転移した臓器に由来する様々な症状が悪化します。
肺への転移が悪化すると胸水や呼吸苦が悪化し、骨転移が悪化すると、全身の病的骨折や麻痺などの神経障害が悪化する可能性があります。
原発不明がんの治療
原発不明がんの多くは、何らかのがんが転移して見つかることが多く、その時点で進行がんと判断されます。
そのため、一般的には抗がん剤などを用いた薬物治療が行われます。
幸いにも転移したがん細胞の種類が判明した場合はそのがんに応じた治療を行いますが、原発巣が特定できない場合は、幅広く使用されている抗がん剤を中心とした治療が検討されます。
たとえば、首のリンパ節に転移が見つかれば口の中やのどに発生したがんを疑い、わきの下のリンパ節に転移が見つかれば乳がんを疑って治療を開始します。
その他、年齢や性別も踏まえて原発巣を推測したりもします。
最近では、がん細胞の遺伝子などを調べることで原発巣を推測したり、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新しい薬剤を用いた治療法などが研究されています。
原発不明がんのセカンドオピニオン
原発不明がん対する治療方法は未だに確立されておらず、どのような薬剤を用いるのか、放射線療法を行ったほうが良いのか、判断がとても難しい病気です。
診断された時には進行してしまっていることも多いため、緩和ケアを中心とした医療を受けるという選択肢もあります。
不安がある場合は積極的に「セカンドオピニオン」を活用し、複数の医師から診察を受け納得いく治療を受けることが重要です。