がん治療における代替療法とは?種類や医学的な効果について解説

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がん治療における代替療法とは?種類や医学的な効果について解説

がん治療における代替療法とは?種類や医学的な効果について解説

がん治療を受けるなかで、思うように効果が出ない場合や副作用が辛く感じる時などに、「代替療法」を検討することもあるでしょう。

代替療法には、健康食品・鍼灸・ヨガなど種類がさまざまありますが、期待できる効果や注意すべき点について正しく理解している方は多くありません。

今回は、がん治療における代替療法について、基本的な定義から医学的な効果・安全に利用するためのポイントまで詳しく解説していきます。

代替医療とは?基本的な定義と医学的位置づけ

代替医療とは?基本的な定義と医学的位置づけ

代替療法(補完代替療法)の定義や通常医療との違いなどを解説します。

代替療法(補完代替療法)の定義

代替療法(補完代替療法)とは、通常の治療に加える、または代わりにおこなわれる治療方法です。厳密には、通常治療を補う目的でおこなわれるものを「補完療法」、通常治療に取って代わるものを「代替療法」と区別しますが、しばしば両者を合わせて「補完代替療法」と総称されています。

代替療法の種類は多岐にわたり、ハーブ・ビタミン・ミネラルなどの健康食品、鍼灸・マッサージなどの手技療法、瞑想・ヨガなどの心身療法、漢方・アーユルヴェーダなどの伝統医学などがあります。

代替療法と通常の医療との違い

通常医療は、科学的な根拠に基づいて有効性と安全性が検証された手術・薬物療法・放射線治療などの治療で、国や学会が定めた診療ガイドラインに基づいて実施されます。

一方、代替療法は、病気の進行を遅らせたり、病気そのものを治したりする科学的な根拠が確立されていません。また、通常医療のように、厳密な審査や臨床試験をおこない、有効性・安全性が確認されているものはほとんどないのが実情です。

日本における代替療法の現状と課題

日本では、がん患者さんの約30%〜40%が何らかの代替療法を利用しているといわれています。なかでも漢方薬は、抗がん剤の副作用対策として有効なものがあり、保険診療の範囲内で使用可能な場合もあります。

ただし、国内で利用されている代替療法の多くは、有効性や安全性について科学的な根拠が確立されていません。

患者さんの多くは、代替療法を利用していることを主治医や医療スタッフに伝えていない点が課題となっています。そのため、代替療法が通常治療に与える影響や副作用のリスクなど、患者さんに必要な助言が届かない可能性が問題視されています。

がん治療で用いられる代替療法の種類

がん治療で用いられる代替療法の種類

がん治療で用いられる代替療法の主な種類と特徴について解説します。

健康食品・サプリメント

健康食品やサプリメントは、特定の食品(アガリクス・プロポリスなど)・ハーブ・ビタミン・ミネラルなど、さまざまな天然物や栄養補助食品を摂取する方法で、主に闘病中の栄養状態の改善目的で利用されることが多いです。2005年に厚生労働省がおこなった調査では、代替療法を利用するがん患者のうち約96%が健康食品やサプリメントを摂取していたという報告があります。

健康食品やサプリメントに、がんそのものを治す、あるいはがんの進行を遅らせるなどの効果は現時点で証明されていません。製品によっては、治療薬との相互作用や健康被害のリスクも指摘されており、使用する際は必ず主治医に相談することが大切です。

手技療法

手技療法は、身体に直接刺激を与えたり、特定の手法を用いたりして、身体のバランスを整える療法で、マッサージ・鍼灸・カイロプラクティックなどがあります。たとえば鍼灸は、主にがん治療に伴う副作用や不定愁訴の軽減に用いられ、症状緩和のサポートを目的としています。

手技療法は、がんやがん治療によって生じる身体的・精神的なつらさを和らげ、患者さんのQOL(生活の質)を高めることが期待されているのです。

心身療法

心身療法とは、心と体のつながりに着目し、精神的な状態を整えることで身体の健康に働きかける療法で、アロマセラピー・心理カウンセリング・音楽療法・ヨガ・瞑想などがあります。

アロマセラピーは、エッセンシャルオイルを用いて心身のリラクセーションやストレス軽減を図る自然療法で、痛みの緩和や精神的な安心感をもたらし、QOL向上に寄与する研究報告があります。音楽療法やヨガは、身体の機能維持・QOLの向上・精神的苦痛の軽減に効果が期待されています。

伝統医学

西洋医学とは異なる独自の医学体系に基づいた療法で、アーユルヴェーダ・伝統中国医学・ホメオパシーなどがあります。伝統医学は、心身全体のバランスを整え、自然治癒力を高めることを重視し、病気の根本治療ではなく健康維持や病気を防ぐことを目的としています。

たとえば漢方薬は、病気の部分だけでなく心身全体のバランスを整えることを大切にし、一人ひとりの体質に合わせて薬を選ぶのが特徴です。

エネルギー療法

エネルギー療法は、目に見えない生命のエネルギーに働きかけることで、心身の不調を整える療法で、レイキ・磁気療法・気功・セラピューティックタッチなどがあります。気功は、ゆっくりとした動作や呼吸法を組み合わせ、体内のエネルギー「気」の流れを整えることで、健康維持やストレス解消が期待されています。

エネルギー療法では、リラクゼーション効果が報告されていますが、医学的な視点における科学的根拠は不十分です。

がん治療における代替療法の医学的効果とエビデンス

がん治療における代替療法の医学的効果とエビデンス

がん治療における代替療法は、つらい症状の緩和やQOLの向上に対して効果が期待されています。それぞれの代替療法の医学的効果とエビデンスについて、以下の3つのポイントで詳しくみていきましょう。

身体症状の軽減

身体症状のうち、がん関連の痛み・倦怠感・治療に伴う副作用について、医学的効果の報告があります。

がん関連の痛み

運動療法には2件のシステマティックレビューがあり、乳がんや頭頸部がんの治療に関連する肩の痛みを軽減するのに有用と考えられています。

鍼治療は8件のシステマティックレビューがあり、なかでも耳介鍼治療はがん患者さんが感じる痛みの軽減に有用であるとされています。

アロマセラピー・マッサージやリラクセーション、音楽療法も複数の研究報告で、痛みを軽減する可能性が示唆されていますが、現時点では研究の質が低く、さらなる検討が必要です。

倦怠感

運動療法には20件のシステマティックレビューがあり、大腸がんを除く多くのがん種において、がん治療中・後の倦怠感の軽減に有用であるとされています。

ヨガは3件のシステマティックレビューがあり、主に女性の乳がん患者および乳がんサバイバーについて、倦怠感を軽減させる可能性が示唆されています。

治療に伴う副作用

健康食品には6件のシステマティックレビューがあり、なかでもプロバイオティクスは放射線治療に伴う下痢を軽減する可能性があるとされています。

運動療法は5件のシステマティックレビューがあり、乳がん患者のリンパ浮腫の軽減、肺がん患者の術後合併症の軽減や入院期間の短縮に有用であるとされましたが、小児がんについての有用性は認められませんでした。

鍼治療には6件のシステマティックレビューがあり、化学療法による悪心・嘔吐を軽減させると考えられています。

精神症状の改善

運動療法は12件のシステマティックレビューがあり、造血器腫瘍を除き、多くのがん患者の不安・抑うつ・ストレス・情緒の改善に有用であるとされました。

ヨガは9件のシステマティックレビューがあり、治療中のがん患者の不安や抑うつ状態、心理的落胆、ストレスを軽減させる可能性があります。

音楽療法は6件のシステマティックレビューがあり、がん患者の不安を軽減できる可能性はありますが、うつ症状に対する有用性はないとされています。

QOLの向上

運動療法は22件のシステマティックレビューがあり、大腸がん・肺がん・小児がんを除く多くのがん患者の全般的なQOLを改善するとされました。

ヨガには3件のシステマティックレビューがあり、治療中の乳がん患者の全般的なQOLを改善する可能性があります。

鍼灸治療は3件のシステマティックレビューがあり、がん患者のQOLを改善させると考えられています。

がん治療で代替療法を利用するメリットと期待できること

がん治療で代替療法を利用するメリットと期待できること

代替療法を利用するメリットや期待できることについて3つのポイントに分けて解説します。

種類が豊富で手軽に始められる

代替療法は、健康食品・鍼灸・ヨガ・伝統医学など、多種多様なものが存在し、患者さん自身の状況や好みに合わせて選択できます。代替療法の多くは、特別な場所に出向かなくても始められ、アロマセラピーや瞑想、ヨガなどは自宅で実践可能です。また、代替療法は自分のペースで取り組めるため、日常生活に取り入れやすいメリットもあります。

がん治療によるつらい症状の緩和が期待できる

代替療法は、がんそのものへの効果は証明されていないものの、がん治療に伴う吐き気・痛み・倦怠感といった身体的な症状、治療に対する不安やストレスなどの精神的なつらさを和らげる効果が期待できます。運動療法・鍼治療・ヨガなどは、症状緩和や精神症状の改善に役立つ可能性が臨床研究で示唆されています。

QOLの向上が見込める

代替療法は、心身の両面からQOL(生活の質)向上に寄与する可能性があります。つらい症状の緩和やストレスの軽減、リラクゼーション効果により、日常生活の質の改善が期待できます。

自分で健康管理に取り組むことで、主体性や自己効力感が高まり、精神的な充実感も得られます。セルフケアへの意識が高まると、食事や運動など生活習慣全般の改善につながることも多く、総合的な健康感や幸福感の向上が見込めるのです。

ただし、効果には個人差があることに留意しましょう。

がん治療における代替療法のデメリットとリスク

がん治療における代替療法のデメリットとリスク

がん治療における代替療法のデメリットと利用する際のリスクについて解説します。

効果が科学的に証明されていない

代替療法には、がんそのものを消滅させたり、小さくしたりする効果が科学的に証明されていません。

一部の療法では「深刻な副作用がなく、がんの進行を抑えられる」と謳われていますが、科学的根拠を示す大規模な臨床試験がおこなわれていないのが実情です。試験管内や動物実験の段階の結果が、人間にも有効であるかのように紹介されることもあるため、正しい情報収集が不可欠です。

がん治療によるつらい症状の緩和についても、一部の研究結果において効果が期待されていますが、大規模な臨床試験がおこなわれていないため注意しましょう。

通常の治療の妨げになる可能性がある

代替療法の中には、がん治療薬の効果を弱めたり、予期せぬ副作用を引き起こしたりする可能性があるものが含まれています。また、代替療法に頼ることで、最も効果が証明されている標準治療を受ける時期が遅れたり、機会を失ったりする危険性もあります。

代替療法は「体にやさしい」と謳われているものがありますが、体質や健康状態、使用量によっては、かえって健康を損なう副作用や弊害が出ることも理解しておきましょう。

経済的負担がかかる

代替療法の中には、高額な費用がかかるものも少なくなく、高額であるからといって効果が高いとは限りません。たくさん使うほど効果が得られるのではないかと考えて、多くの代替療法を取り入れて、結果的に出費がかさむケースも見受けられます。主治医や家族と相談し、自分にとって本当に必要なものだけ取り入れるようにしましょう。

がん治療の代替療法を選択する際に検討する5つのポイント

がん治療の代替療法を選択する際に検討する5つのポイント

がん治療において、代替療法を選ぶ際に注意することを5つのポイントに分けて解説します。

①代替療法をおこなう目的を明確にする

はじめに、代替療法に何を期待しているのか明確にすることが大切です。代替療法の主な目的は、がんを直接治すことではなく、がんや治療に伴う不快な症状を和らげ、QOLを向上させることにあります。標準治療のサポートとして利用することを理解しておきましょう。

代替療法は、がんを小さくしたり治したりする効果は科学的に証明されていないため、代替療法のみでがん治療をおこなうのは非常に危険です。がんの治療を目的として代替療法を利用することは避けましょう。

②医師に相談する

代替療法を試す前に、必ずがん治療の主治医に相談しましょう。主治医以外にも、看護師・薬剤師・がん相談支援センターの相談員などの専門家にも相談可能です。

すでに代替療法を始めている場合も、なるべく早く主治医に伝えることで、予期せぬ副作用を未然に防ぎ、現在の治療への影響の有無を確認できます。「現在受けているがん治療に影響しないか」「つらい症状が和らぐか」など、具体的な質問をすると良いでしょう。

③情報収集する

代替療法を取り入れる際は、正しい情報を得ることが大切です。情報収集することで、主治医や医療スタッフへ相談するべき内容を明確にできます。情報収集するときは、いつの情報か・誰が発信しているか・何を根拠にしているかの3点を確認し、信頼できる情報源であるか見極めましょう。

「がんが消えた」といった大げさな表現や個人の体験談は、科学的な根拠に基づかない情報である可能性があります。また、代替療法を提供する業者が、通常のがん治療を強く否定して不安を助長しているような場合も注意が必要です。

④通常治療に影響しないか確認する

代替療法が通常のがん治療に悪影響を及ぼさないか、事前に主治医や専門家へ確認するようにしましょう。たとえば、 一部の健康食品やサプリメントは、特定の成分による健康被害や、治療薬との飲み合わせによる悪影響などがあり、通常のがん治療を中断せざるを得ない状況になる可能性もあるのです。また、代替療法を優先することで、通常の治療を受けるタイミングを逸することのないように注意しましょう。

⑤費用を確認する

ほとんどの代替療法は公的保険が適用されず、全額自己負担となります。継続して利用する場合は、総額が膨大になる可能性も頭に入れておきましょう。費用対効果を慎重に検討し、経済的負担を考慮して決定することが大切です。一部の悪質な業者は、不安をあおって強引に勧誘するケースもあるため、すぐに契約をしないように注意しましょう。

まとめ

がん治療における代替療法は、治療に伴う症状の緩和やQOL向上に一定の効果が期待されています。

がん治療における代替療法は、健康食品・鍼灸・ヨガ・伝統医学など多岐にわたり、がんそのものを治す科学的根拠は確立されていないものの、治療に伴う症状の緩和やQOL向上に一定の効果が期待されています。

ただし、通常治療への影響や予期せぬ副作用のリスクもあるため、利用を検討する際は正しい情報収集をおこない、主治医に相談することが不可欠です。

代替療法は通常治療のサポートという位置づけを理解し、自分に合った方法を見つけていきましょう。

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