膀胱がんの末期・ステージ4における治療の選択肢について

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膀胱がんの末期・ステージ4における治療の選択肢について

膀胱がんの末期・ステージ4における治療の選択肢について

膀胱がんの末期・ステージ4と診断を受けたとき、「もう治療方法はないのだろうか」「余命は残されていないのだろうか」など不安を感じる方が多いでしょう。しかし「がんに負けない、諦めたくない」という本音が、心の奥に隠れている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、膀胱がんの末期・ステージ4の症状や標準治療などを解説し、最近注目されている治療方法についても紹介します。ご自身・ご家族が納得のいく治療方法を見つけるための参考としてください。

膀胱がんとは

膀胱がんとは

はじめに膀胱がんの基本的な情報や症状について確認しましょう。

膀胱がんの基本知識

膀胱がんは、膀胱に発生したがんのことを指します。膀胱は骨盤の内側にある、尿をためる袋状の臓器です。

膀胱がんは、発生する場所によりいくつか種類があります。膀胱がんのうち90%以上は、膀胱のもっとも内側にある尿路上皮細胞から発生する尿路上皮がんです。ほかに、扁平上皮がんや腺がんなどがあります。

2019年に膀胱がんと診断されたのは23,383人で、人口10万人あたりの発生人数は18.5人です。男女で比べると、男性の方が女性より3倍多いことが報告されています。

参考: 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)

膀胱がんのリスク要因

膀胱がんの一番のリスク要因は、喫煙です。タバコを吸わない人と比べて、喫煙者は2.58倍の発症リスクがあります。また、タバコの本数が多く長期喫煙している人ほど、膀胱がんになりやすいことがわかっています。

ほかのリスク要因は、芳香族アミンやPAH(Polycyclic Aromatic Hydrocarbon)などの化学物質に長期間さらされることです。これらの化学物質は染料や合成樹脂などに含まれており、仕事で取り扱う人は膀胱がんの発生リスクが高くなります。

膀胱がんの主な症状

膀胱がんの症状でもっとも多いのは血尿です。血尿が出ても、がんがそれほど大きくないうちは痛みを伴わないことが多くみられます。しかし、がんがだんだん大きくなってくると、排尿の回数が増える・排尿時の痛み・尿がすっきりと出ないなどの症状が現れます。そのため、血尿が一度治ってもくり返すことがあれば、詳しい検査が必要です。

膀胱がんのステージ

膀胱がんのステージは、ステージ1からステージ4まであり、ステージ4が病状のもっとも進行した状態です。ステージ分類には、がんの広がり・周辺のリンパ節転移・離れた場所への転移を示したTNM分類が用いられます。膀胱がんの大まかなステージ分類は以下のとおりです。

ステージ1がんの広がりが上皮下結合組織にとどまっており、リンパ節やほかの臓器への転移もない
ステージ2がんが筋層まで広がっているが、リンパ節やほかの臓器への転移はない
ステージ3・リンパ節やほかの臓器への転移はないが、がんが膀胱の外側の脂肪組織や、隣り合う前立腺・精巣・子宮・膣まで広がっている。
・がんが上皮下結合組織や筋層にとどまっていても、骨盤内や総腸骨のリンパ節に転移がある
・がんが脂肪組織・隣接する臓器まで広がっており、骨盤内や総腸骨のリンパ節に転移もある
ステージ4・転移がなくても、がんが骨盤壁や腹膜まで広がっている
・がんが骨盤壁や腹膜に広がっていて、骨盤内や総腸骨のリンパ節転移もある
・がんが骨盤壁や腹膜に広がり、離れた場所にあるリンパ節や臓器への転移もある

膀胱がん末期(ステージ4)の特徴

膀胱がん末期(ステージ4)の特徴

膀胱がんが末期といわれるステージ4まで進行したときの、症状や余命などについて確認しましょう。

膀胱がん末期の症状

膀胱がんが進行すると、これまでの血尿・排尿痛・頻尿のほかに、排尿障害もみられるようになります。また、がんからの出血により血液の塊ができて、膀胱を塞いでしまう膀胱タンポナーデを発症することもあるのです。がんが広がり尿管を塞ぐと、腎機能障害が起こることもあります。

また、遠隔転移した場所により、さまざまな症状が現れます。骨転移では強い痛みがあり、リンパ節や肺への転移があれば、浮腫や呼吸困難などの症状もみられるでしょう。

膀胱がん末期の余命

膀胱がんの全ステージにおける5年生存率は62.6%です。早期であるステージ1の5年生存率は82.0%ありますが、進行がんになるとステージ2でも53.9%まで下がります。膀胱がん末期のステージ4まで進むと、5年生存率は18.3%と非常に厳しくなるのです。

膀胱がん末期の予後因子

予後因子とは、がんが今後どのような経過をたどるかを予想するための判断材料のことです。ステージ4の日本人における調査では、以下に当てはまる条件が多いほど、予後が悪いと予測されます。

  • 男性である
  • ECOG PS(患者さんの全身状態の指標)が1または2以上
  • ヘモグロビン値が10g/dL未満
  • 白血球数が8,000/μL以上
  • 肝臓への転移がある
  • ほかの臓器への転移がある

膀胱がん末期(ステージ4)の標準治療

膀胱がん末期(ステージ4)の標準治療

膀胱がん末期(ステージ4)でおこなわれる標準治療について確認しましょう。がんの勢いをコントロールする治療には、細胞性抗がん剤・免疫チェックポイント阻害薬・抗体薬物複合体があります。そのほか、緩和ケアなどについても解説します。

細胞障害性抗がん剤

細胞障害性抗がん剤は、細胞が増える過程の一部を妨げることで効果を発揮します。膀胱がん末期でおこなわれる主な抗がん剤治療は、GC療法です。

GC療法では、代謝拮抗剤に分類されるゲムシタビンと、白金製剤に分類されるシスプラチンの2種類の薬剤を使用します。投薬スケジュールは、4週間を1サイクルとして、一般的に6サイクルおこないます。

免疫チェックポイント阻害薬

GC療法など細胞障害性抗がん剤の効果が得られなかった場合、免疫チェックポイント阻害薬で治療をおこないます。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞にブレーキがかからないようにして、がん細胞を攻撃する力を高める作用があります。

膀胱がん末期で使用される免疫チェックポイント阻害薬は、ぺムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)です。がん細胞は、免疫をつかさどるT細胞の表面にあるPD-1に結合し、T細胞の攻撃から逃れる性質があります。ペンブロリズマブはT細胞のPD-1に作用し、がん細胞とT細胞が結合するのを防ぎます。それにより、T細胞の攻撃する力が高まり、がんを小さくするのです。

抗体薬物複合体

細胞障害性抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬の効果が得られない場合に、抗体薬物複合体(ADC)治療がおこなわれます。ADC治療では、特定のタンパク質に結合する性質をもつ抗体を用いて、抗がん剤を効率よくがん組織に運ぶ点が特徴です。

膀胱がん末期では、膀胱がんの表面にあるネクチン-4というタンパク質に結合する抗体に、モノメチルアウリスタチンEという抗がん剤をつなげた薬剤(製品名:パドセブ)を使用します。週1回の投与を3週間おこない、4週目は休薬するのを1サイクルとして、患者さんの体力や病状に応じて何回くり返すか決定されます。

緩和ケア

緩和ケアとは、がんが引き金となって起こる症状や、薬物などの副作用を改善するためにおこなう治療です。末期まで進行すると、膀胱からの長引く出血や、肺や骨に転移したときの痛みが現れます。これらの症状を改善することを目的におこなうのは、放射線治療です。

ほかにも、膀胱けいれんを起こし、鋭い痛みが生じることがあります。痛みの強さにあわせて、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やコデインなどのオピオイド製剤が治療に用いられます。

そのほかの治療

膀胱がん末期において、細胞障害性抗がん剤による治療後にがんが小さくなった場合は、患者さんの状態に応じて、膀胱をすべて切除する手術がおこなわれることがあります。また、転移したがんについては、以下の条件を満たす場合に手術がおこなわれることがあります。

  • 全身状態が良好である
  • 病巣が1ヶ所で完全に取り除くことができる
  • 細胞障害性抗がん剤の効果がある
  • がんの進行が急速ではない

膀胱がん末期(ステージ4)でもおこなえる免疫放射線治療とは

膀胱がん末期(ステージ4)でもおこなえる免疫放射線治療とは

近年、放射線治療と免疫療法を組み合わせた「免疫放射線治療」が注目を集めています。どのような治療方法であるのか確認しましょう。

免疫放射線治療の概要

免疫放射線治療は、1回の線量を増やし照射回数を少なくした「寡分割照射」にて放射線治療をおこない、免疫治療を併用しておこなうことで、免疫細胞の攻撃力を高めてがんを小さくする方法です。

広い範囲にリンパ節転移のあるステージ4の膀胱がん患者さんに、高線量の放射線を当てて、免疫治療を並行しておこなうと、リンパ節にあったがんが消失したという症例報告があります。また、泌尿器系のがんは、免疫放射線治療の効果が得られやすい特徴があります。

アブスコパル効果とは

アブスコパル効果の仕組みについてみていきましょう。がんに放射線を当てると、がん細胞が破壊されて、そのがんに特有のタンパク質である抗原が放出されます。

新しく放出された抗原が、抗原提示細胞に取り込まれると、がんを攻撃するT細胞に抗原の情報を伝えます。情報を得たT細胞が全身にまわり、生き残っているがんや離れた場所にあるがんも攻撃してくれるのです。

免疫放射線治療のメカニズム

以前は放射線治療で免疫が下がるといわれていましたが、最近の研究報告では、がんに放射線を当てると免疫が上がることがわかってきました。放射線を当てると、がん細胞がPD-L1を作るようになり、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすくなります。

がん細胞の表面には、MHCという免疫細胞から認識される部分があります。しかし、がん細胞のなかにはMHCを隠してしまい、免疫細胞から攻撃されないようにするタイプがあるのです。

そのため、免疫療法のみをおこなっても効果が現れにくくなります。放射線治療をおこなうと、がん細胞が再びMHCを発現するようになり、この状況で免疫療法を追加すると効果が得やすくなるのです。

免疫放射線治療に用いる放射線治療機器

免疫放射線治療では、高線量の放射線をがんにピンポイントに当てることが大切です。より適切にがん組織へ放射線を当てる機器は、トモセラピーとサイバーナイフがあります。それぞれの特徴についてみていきましょう。

トモセラピー

トモセラピーは、放射線治療とCT撮影を一体化した装置です。患者さんは装置のベッド上に横たわり、ベッドをスライド移動させながら放射線を当てていきます。角度や線量を調整しながら当てることができるため、がん組織に放射線を集中的に照射し、健康な細胞への副作用を減らせる特徴があります。

サイバーナイフ

サイバーナイフは、ロボットアームの先端に放射線を照射する装置がついたものです。呼吸などで動く部位にあるがん組織を自動的に追いかけて、あらゆる方向から細いビームで照射することを得意としています。そのため、正常な組織への照射をできるだけ抑えることが可能です。

免疫放射線治療に用いる免疫療法

免疫放射線治療では、免疫チェックポイント阻害薬のほかに、BAK療法・樹状細胞療法・がんワクチン療法などの免疫療法が使用できます。それぞれどのような特徴があるかみていきましょう。

BAK療法

BAK療法は、ガンマデルタT細胞とNK細胞というがんを攻撃する免疫細胞を使用した治療です。患者さん本人の血液を採取してリンパ球を抽出し、免疫細胞を培養してから体内に戻します。ガンマデルタT細胞とNK細胞は、自然免疫をつかさどっており、より多くのがん細胞に対して攻撃することが可能です。

樹状細胞療法

樹状細胞療法は、がんを攻撃するT細胞にがんの情報を伝える「樹状細胞」を使った治療です。患者さんの血液からリンパ球を採取し、樹状細胞に育てます。この樹状細胞に、がんの目印となるがん組織やがんペプチドを認識させてから、体内に戻します。

がんワクチン療法

がんワクチン療法は、がんに特異的に現れる遺伝子・タンパク質・ペプチドなどを投与して、がんを攻撃するT細胞を活性化する治療です。ただし、BAK療法・樹状細胞療法・がんワクチン療法は、保険適用されていないため、治療にかかる費用は全額自己負担になります。

まとめ

免疫放射線治療でステージ4でも良い治療成績が得られる

膀胱がん末期のステージ4まで進行すると、5年生存率は18.3%まで低下します。免疫チェックポイント阻害薬や、抗体薬物複合体などの治療方法も登場しましたが、思うような効果が得られないケースも多々あるのです。

最近では、免疫放射線治療が登場し、がんが全身に転移したステージ4においても、良い治療成績が得られたという研究発表もあります。膀胱がん末期と診断されて、標準治療が思うように進まなかったり、現在の治療方法が自分に合っているか気になったりした場合は、セカンドオピニオン制度を活用して、納得のいくがん治療を受けるようにしましょう。

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