骨転移したがんの治療方法について ステージ4でも治るのか?余命・生存率についても解説

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骨転移したがんの治療方法について ステージ4でも治るのか?余命・生存率についても解説

骨転移したがんの治療方法について ステージ4でも治るのか?余命・生存率についても解説

がんには、発生した部位や臓器だけにとどまらず、転移する性質があることはご存じのとおりです。全身のあらゆる場所に転移する可能性がありますが、そのひとつに「骨転移」があります。

骨転移と聞くと、がんの末期であることをイメージする方が多いかもしれません。しかし、骨転移はすぐに命にかかわる訳ではなく、余命に大きく影響することがないといわれています。

本記事では、骨転移が生じたがんの症状や治療方法、余命・生存率について解説していきます。がんを発症されて骨転移を心配されている方や、骨転移について詳しく知りたいという方は、ぜひ最後までご一読ください。

がんの骨転移とは

がんの骨転移とは

骨転移とは、がんがはじめに発生した臓器や部位から離れて骨で定着し、増殖する状態のことです。

がん細胞は、原発巣(はじめにがんが発生した臓器・部位)にとどまることなく、近くの組織に広がったり、血液を通じて体のなかを循環したりします。血液にのって体内を循環するがん細胞はCirculated tumor cellと呼ばれ、この体内を循環するがん細胞が骨髄などを通るときに定着し、増殖することで骨転移が発生します。

人の骨は、新しい骨を作る骨芽細胞と、古い骨を吸収して新たな骨の造成を促す破骨細胞がバランスよく作用することで維持されています。

がん細胞には破骨細胞を活性化させる作用があり、活性化した破骨細胞が骨を徐々に溶かしてしまいます。その結果、がん細胞が骨の溶けた部位に定着し、溶けた骨の栄養を吸収してさらに増殖していくというのが骨転移発生のメカニズムです。

がんが骨転移することであらわれる全身への影響

がんが骨転移することであらわれる全身への影響

骨転移の代表的な症状として痛み(疼痛)や骨折が挙げられますが、そのほかにも全身の状態にさまざまな影響があらわれます。

  • 高カリウム血症を発症する恐れがある
    骨転移が生じることで破壊された骨のカルシウムが血液に流れ出し、血液中のカルシウム濃度が高くなった状態をいいます。高カリウム血症になると、口喝感や食欲不振・吐き気・便秘などの症状がみられます
  • がん細胞が活性化する
    がん細胞が骨に蓄積された栄養を吸収することにより、活性化してしまうことがあります。
  • 合併症を併発する可能性がある
    肺炎・膀胱炎・尿道炎・腎盂腎炎・認知症などの合併症を併発するケースが多くみられます。特に、高齢者は合併症を起こしやすく寝たきりになる恐れがあるため、早期に治療を開始することが重要です。

骨転移を起こしやすいがん

骨転移を起こしやすいがん

骨転移を生じやすいといわれているがんは、以下のとおりです。

  • 肺がん
  • 胃がん
  • 乳がん
  • 前立腺がん
  • 甲状腺がん
  • 腎がん
  • 大腸がん(直腸がん・結腸がん)

ほかの部位に発生したがんであっても骨転移が生じる可能性はありますが、以上に挙げた部位のがんは骨転移がしやすいことがわかっています。

骨転移の種類

骨転移は3つの種類に分けられており、それぞれ症状や治療法が異なります。

  • 溶骨型
    骨転移した部分の骨が溶けてしまうタイプ。
    骨の強度の低下により骨折が生じやすくなることが特徴で、病巣はX線やCTで黒く写る。
  • 造骨型
    骨転移により正常ではない骨組織が造られるタイプ。
    骨折は少なく骨痛を訴えることが多い。溶骨型とは違い、病巣はX線やCTで白く写る。
  • 混合型
    溶骨型と造骨型の混合タイプ。

これらの3つのなかでは混合型がもっとも多いといわれており、純粋な溶骨型・造骨型の転移は少ないといわれています。

骨転移の好発する部位

骨転移の好発する部位

骨転移は全身のあらゆる骨に生じる可能性がありますが、特に転移が多くみられる骨の部位(好発部位)が存在します。

骨転移の好発部位とおもな症状は、以下のとおりです。

骨転移の部位おもな症状
頸椎(首)首・腕の痛み
手足がうまく動かせない(四肢麻痺)
尿意・便意を感じない
上腕骨(肩・腕)肩・腕の痛み
体重をかけたり腕を回したりすることで骨折する
(腕を使うことが困難になる)
肋骨呼吸しづらくなる
(呼吸時に肋骨に刺激が加わるため)
胸椎・腰椎(背骨)背中・脇腹の痛み
下半身麻痺(歩行困難・尿意や便意の喪失)
骨盤骨盤の痛み
起立・歩行困難
歩行困難(負荷をかけると骨折の恐れがあるため)

骨転移のおもな症状

骨転移のおもな症状

ここでは、骨転移により生じるおもな症状について解説していきます。

疼痛(痛み)

骨転移が生じた部位の骨そのものが痛むことはありませんが、がんが骨を包んでいる骨膜や周囲の神経に影響を与えることで痛みが引き起こされます。

骨転移による痛みは一過性ではなく、持続的で徐々に悪化していくことが特徴です。普段とは異なる質の痛みや治まらない痛みがある場合は、できるだけ早く医師に相談することが重要です。

骨折

大腿骨・骨盤・脊椎・四肢骨など、体重負荷が大きくかかる部位に骨転移が生じると、がん細胞が破壊して弱くなってしまった骨が骨折してしまうことがあります。このような骨折は「病的骨折」と呼ばれています。

なかでも、大腿骨や脊椎の骨折は歩行障害にいたる恐れがあり、高齢者の場合は寝たきりになってしまうケースもみられます。そのため、骨折を予防するためにも骨転移がないか定期的にチェックし、転移がみられた場合は早急に治療を開始する必要があります。

また、ビタミンD・カルシウムの積極的な摂取や適度な運動により、骨の健康をサポートして骨折のリスクを軽減させることができます。

麻痺

骨転移による麻痺は、おもに脊椎(頸椎7個・胸椎12個・腰椎5個・仙骨)のいずれかに転移することで発症します。

脊椎のなかを通っている脊髄にがん細胞が増殖すると、神経を圧迫したり損傷したりして四肢に麻痺を引き起こし、日常生活に大きな影響を及ぼします。そのため、手足が動かしづらい、末梢の感覚がいつもと違うなどの症状がある場合は、早めに医師に相談するようにしましょう。

骨転移の診断と検査方法

骨転移の診断と検査方法

ここからは、骨転移の診断時におこなわれる検査について解説していきます。

骨シンチグラフィ

骨シンチグラフィは、放射性医薬品を注射することで骨の代謝が活発に起こっている部位を画像化する検査です。骨転移の広がりや、X線検査やCT検査では診断が難しい部位の代謝の状態を確認するためにおこなわれ、核医学検査・アイソトープ検査・RIアールアイ検査とも呼ばれています。

全身の骨を一度の検査で調べることができ、ごく小さな骨転移も発見されることがありますが、骨折や打撲・関節症・外傷など、骨転移ではない病変でも異常所見となる場合があります。

PET検査・PET-CT検査

骨シンチグラフィと同じように放射性医薬品を使用した検査で、全身の骨の状態を調べることが可能です。

PET検査やPET-CT検査には、骨転移以外のがんも発見できるという大きなメリットがあります。ただし、検査にブドウ糖を用いるため、血糖値が高い人は受けられないことがあります。

X線検査・CT検査

骨シンチグラフィやPET検査・PET-CT検査で骨転移の疑いがあると診断されたり、骨の痛みが強かったりする場合は、X線検査やCT検査をおこないます。

X線検査やCT検査の結果から、骨の変形の程度や強度など、骨折の危険性を評価する情報を得ることができます。また、CT検査はがんの経過観察で一般的に用いられている検査でもあるため、その過程で骨転移が見つかることもあります。

ただし、溶骨型か造骨型かはっきり判断できなかったり、小さい骨転移はみつかりづらかったりするため、ほかの検査と組み合わせて実施することが一般的です。

血液検査

アルカリホスファターゼという骨代謝マーカーの値を調べることで、骨転移の可能性について評価をおこないます。

しかし、骨折が治癒する過程や成長期の子供でも数値の上昇がみられるため、アルカリホスファターゼの値が高くても骨転移であるとは限りません。

骨転移の治療方法

骨転移の治療方法

ここからは、骨転移の治療方法について詳しくみていきます。

薬物療法

骨転移の薬物療法には、痛みを緩和する治療方法と骨に直接働きかける治療方法の2つがあります。

  • 痛みを緩和する治療方法
    鎮痛剤を使用して痛みを緩和する治療です。痛みの強さによって使用する鎮痛剤(消炎鎮痛薬・鎮痛補助薬・オピオイドなど)を選択しますが、場合によっては複数の薬を用いることもあります。
  • 骨に直接働きかける治療方法
    骨修飾(こつしゅうしょく)薬を用いて治療をおこないます。がん細胞は、破骨細胞が古くなった骨を溶かすことを利用して骨に転移します。骨修飾薬には、この破骨細胞の働きを阻害することにより骨転移を抑制させる作用があります。

ただし、骨修飾薬にはアゴの骨の壊死・炎症、腎障害などの副作用があるため、治療中には十分は注意が必要です

手術療法

骨折や脊髄圧迫が生じた場合には、患者さんの状態に応じて手術による治療をおこないます。また、骨転移の治療としてではなく、骨を補強して骨折を予防することを目的に手術をすることもあります。

手術は大きな負担がかかる治療方法であるため、全身状態や病状・薬物療法の有効性・骨移転の数や範囲・痛みや麻痺の程度など、あらゆる面から検討して実施の可否が判断されます。

また、骨転移が原因の骨折や脊髄の麻痺が切迫している状態に対しては、QOL(生活の質)を保つための手術をおこなうことがあります。

放射線療法(外部照射)

骨転移と診断された場合、治療方法の第一の選択肢となるのが放射線療法(外部照射)です。

放射線を照射した部位のがん細胞が減ることにより、痛みの緩和・脊椎圧迫の予防・骨折予防への効果が期待でき、がんの種類によっては照射した部位のがん細胞が消失するケースもみられます。また、手術に比べて体への負担が少ないことも、放射線療法が治療方法として多く用いられている理由のひとつです。

痛みの緩和については、治療を受けた人の60~80%に効果がみられたとの報告がありますが、副作用として、吐き気・だるさ・放射線を照射した部位のかゆみ・赤みなどがあらわれることがあります。

免疫放射線療法

免疫放射線療法とは、がんが存在している部位に放射線を照射する「放射線療法」と、がん細胞が免疫にブレーキをかける働きを阻止する「免疫チェックポイント阻害薬」を併用し、免疫力を高めることでがんを攻撃する治療方法です。

放射線療法によってがんに対する免疫が活性化すると、放射線を照射していない離れた部位のがん細胞にも攻撃の効果が発揮されます。この現象は「アブスコバル効果」と呼ばれており、免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせることで、効果の出現率がより高くなることがわかっています。

骨転移に関しても、免疫放射線療法によるアブスコパル効果の出現を期待することができます。加えて副作用が比較的少ないこともあり、近年では骨転移の治療方法のひとつとしても注目を集めています。

リハビリテーション

薬物療法や手術・放射線療法だけではなく、リハビリテーションも骨転移の治療方法のひとつとして挙げられます。

骨転移によって体の動きに制限が生じている場合、リハビリテーションで筋力の低下を予防したり、コルセットや杖などの補装具を使用したりすることが必要となります。QOL(生活の質)を維持しながら日常生活を送るためには、リハビリを専門とする医療従事者の指導を受けることも治療の重要なポイントだといえます。

骨転移の余命・生存率について

骨転移の余命・生存率について

骨転移が直接命にかかわることはまれであり、余命に大きく影響することはありません。ただし、骨転移による全身への影響から、四肢の麻痺や合併症を引き起こして重篤になることがあります。

骨転移をしたがんは、ステージ4であると診断されます。その時点で骨以外の部位にも転移がみられることが多いため、骨転移が見つかってからの余命や生存率は、原発がん(はじめに発生したがん)のステージ4の余命と生存率に依存するといえるでしょう。

たとえば、肺がんの骨転移があるステージ4の場合、余命の平均は半年から1年といわれていますが、乳がんや前立腺がんの場合、余命が10年を超えるケースもみられます。

まとめ

骨転移したがんの症状や治療方法、余命・生存率などについて解説

今回の記事では、骨転移したがんの症状や治療方法、余命・生存率などについて解説してきました。

骨転移は、はじめに発生した病巣(原発巣)のがん細胞が血液を通して体内を巡回し、骨に定着して増殖することにより生じます。おもな症状には、痛み(疼痛)・骨折・麻痺が挙げられ、おもに薬物療法・放射線療法・手術などの治療がおこなわれます。

骨転移をともなうがんはステージ4と診断されますが、骨転移そのものが余命や生存率に与える影響は少ないといわれています。そのため、骨転移をしたがんの余命と生存率は、はじめに発生したがん(原発がん)の余命と生存率に依存するとされています。

また、近年注目されている免疫放射線療法では、骨転移などの多発転移が生じたがんが寛解した例も報告されています。病状や全身状態から従来の骨転移治療がおこえない患者さんであっても、免疫放射線療法による治療であれば続けられるケースもあります。

骨転移のあるステージ4のがんでも転移の状態や症状はさまざまであり、「骨転移=末期」であるとは限りません。また、がんについての研究や治療方法も日々進歩しています。骨転移をしているがんやほかの転移性のがんに罹患している方であっても、セカンドオピニオンなどの活用により、新たな治療方法を見出す可能性があるといえるでしょう。

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