がんの種類によって使い分ける4つの免疫チェックポイント阻害薬
免疫に備わっているブレーキ「免疫チェックポイント」。
このブレーキをがんが踏んでしまうことがわかっています。
がんが「免疫チェックポイント」を作動させてしまわないように開発された、免疫チェックポイント阻害薬にはいくつか種類があります。
その免疫チェックポイント阻害薬についてご説明します。
目次
免疫チェックポイント阻害薬って?
免疫チェックポイント阻害薬は、文字通り、免疫チェックポイントを阻害する薬です。
がんが利用してしまう免疫のシステムを邪魔する薬で、いくつかの種類が開発されています。
「免疫チェックポイント阻害薬って何だろう?」という方は、こちらの記事もご覧ください。
『最先端がん治療「免疫チェックポイント阻害薬」の治療能力が高い理由』
『がん治療で承認・申請中! 4種類の免疫チェックポイント阻害薬』
免疫チェックポイント阻害薬を使い分ける
免疫チェックポイント阻害薬の種類によって適用は異なります。
新しいものを含めて、4種類の免疫チェックポイント阻害薬について詳しくご説明します。ターゲットは進行がん(ステージIII以降の深めのがん)です。
内訳は、抗PD-1抗体が2種類、抗CTLA-4抗体と抗PD-L1抗体がそれぞれ1種類です。
抗PD-1抗体:ニボルマブ(オプジーボ)
日本では、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫で承認されており、頭頚部がんや胃がんでも承認を申請中です。
頭頚部がんの承認は間もなくとみられています。
食道がん、胃食道接合部がん・食道がん、肝細胞がん、膠芽腫、尿路上皮がん、悪性胸膜中皮腫、卵巣がんなどでの臨床試験も実施中です。
抗PD-1抗体:ペムブロリズマブ(キイトルーダ)
日本では、メラノーマ、非小細胞肺がん(PD-L1陽性)で承認されている薬です。
オプジーボが化学療法に対する優位性を示せなかった一方、キイトルーダは、PD-L1が高発現する患者さんの無増悪生存期間を優位に延長しています。
このことにより、ファーストライン(PD-L1の発現率50%以上)、セカンドライン(PD-L1の発現率1%以上)のいずれでも、キイトルーダは使用可能です。
承認申請中なのは、ホジキンリンパ腫。臨床試験が行われているのは膀胱がんや乳がん、胃がん、頭頚部がん、多発性骨肉腫、食道がん、肝がん、腎細胞がんなど。
胃がんは厚生労働省が導入した「先駆け審査指定制度」の対象です。
これは、2015年10月に厚生労働省が導入したもので、重い病気に対する革新的な新薬の審査短縮などを優遇する精度です。
抗CTLA-4抗体:イピリムマブ(ヤーボイ)
日本ではメラノーマで承認されています。非小細胞肺がん、小細胞肺がんでは臨床試験中。
日本以外では、FDA(アメリカ食品医薬品局)も、未治療の進行期メラノーマ、切除不能や転移性のメラノーマにも、抗PD-1抗体と併用治療が承認されています。
抗PD-L1抗体:アテゾリズマブ
2017年2月、抗PD-L1抗体としては国内で初めて非小細胞肺がんの適応で申請されました。膀胱がん、乳がん、腎細胞がんへの申請も検討中です。
免疫細胞療法との併用の効果
特に進行がんの治療において、免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞療法と併用して使われることがあります。
治療段階としては、まず、免疫チェックポイント阻害薬(第一選択は主にPD-1抗体)、そして2種類の免疫細胞療法(DCハイブリッド療法とBAK療法)を施します。
もちろん、免疫細胞は事前に増殖と活性化を行います。
免疫細胞療法について詳しくはこちらをご覧ください。
『免疫力が高いとがんをやっつけられる? 最新の免疫細胞療法とは』
免疫チェックポイント阻害薬を使った状態で、増殖・活性化された免疫細胞を体内に送り込むと、がんに対する殺傷能力はうんと高くなります。
放射線治療に力を入れている医療機関であれば、ここにトモセラピーが加わることもあります。
治療法の併用は、それぞれのウィークポイントを補いながら、良い面は相乗効果で伸ばす、そんな嬉しい効果をもたらしてくれます。
どのような治療に力を入れているのか、医療機関や医師によって異なるので、事前に確認するのがお勧めです。
まとめ
免疫チェックポイント阻害薬の開発は、世界中の関係者たちの注目の的です。今後も研究はますます加速し、かなりの数の免疫チェックポイント阻害薬が、順次承認・商品化されるでしょう。
医療の進歩は、くるしむがん患者の減少につながります。より多くの患者さんが救われ、より多くの選択肢が生まれるように、一つでも多く治療法や薬が開発されることを願っています。