がん放射線治療に副作用はある? 抗がん剤治療との違いとは?
日本全体の高齢化が進む中で、がん患者さんの高齢化も進んでいます。それはつまり、手術や抗がん剤での治療が行えないがん患者さんが増加していることを意味しています。
手術も抗がん剤も使えないがん患者さんにとって、救世主となり得るのが放射線治療です。
ですが残念なことに、放射線治療は誤解されがちな治療法です。
今回は、「放射線治療は副作用がきつい」という誤解を解くためのお話をさせて頂こうと思います。
放射線治療の副作用に関する誤解
「放射線治療では、つらい副作用が避けられないのでは……」こう思っている方は多いでしょうが、これは大きな誤解です。
今回は、このことについてお話をしていきます。
ここで想像される「つらい副作用」と言うのは、何でしょうか。多くの方が想像するのが、おう吐や脱毛だと思います。
また、どんどんと体力が削られていき、痩せて弱っていく……。そんなイメージを持たれている方もいるかもしれません。
ですが、これは間違ったイメージです。
放射線治療には、こんな風に日々の治療の中で命を削っていくような副作用は基本的にありません。
これらの「つらい副作用」は実は「抗がん剤」で治療が行われることにより現れるものです。
抗がん剤の副作用と放射線治療の副作用が混同されてしまっている理由は三つ考えられます。
- ドラマや映画の影響
- 放射線治療は二番手の治療法?
- 同時に行われることが少なくない
一つは、ドラマや映画の影響で、「がん治療」=「脱毛、おう吐、痩せ」のイメージが付いてしまっていること。
抗がん剤と放射線治療では副作用が異なるということをそもそも知らない方も多いのではないでしょうか。
二つ目は、今まで放射線治療が二番手の治療法として扱われていたこと。
手術もできないような末期の患者さんに対して使われる場面が多かった放射線治療ですが、末期のがんで弱っていく方の姿は、知らない方の目には、放射線治療で弱っているように映っても無理はありません。
三つめは、抗がん剤と放射線治療が同時に行われることが少なくないこと。
抗がん剤治療と放射線治療が同時に行われる状態では、何がどちらの副作用か、見ているだけではわかりませんね。これも副作用が混同される一つの原因でしょう。
副作用の面で大きな誤解を受けてきた放射線治療の名誉を挽回するためにも、抗がん剤と放射線治療それぞれの副作用について見ていきましょう。
副作用が強いのは抗がん剤
脱毛、おう吐、痩せ……これらは全て抗がん剤治療の代表的な副作用です。
抗がん剤治療は、がんの三大治療法の中でも特に急性の副作用が激しい治療法で、QOL(生活の質)と治療の効果のバランスが非常に取りにくい治療法です。
とは言え、「抗がん剤治療は悪」ではありません。全身性のがんなど、抗がん剤だからこそ、辛い副作用を乗り越えたからこそ、治療が成功する場合も往々にしてあるからです。
放射線治療に副作用はないのか
では、放射線治療に副作用はないのかと言うと、それも違います。
放射線治療も他の治療法の例にもれず、限定的ですが副作用をもたらします。
ピンポイント照射でがん細胞を狙い撃ちすることができるようになったとはいえ、その周辺にある臓器にダメージを全く与えないわけではありません。
ピンポイントの照射では、ピンポイントの副作用が起きることがわかっています。
例えば、消化管への照射では、下痢や吐き気、食欲不振が見られることがあります。
また、頭部への照射では、頭皮の荒れや脱毛が見られることがあります。
照射部位の皮膚が徐々に日焼けのようになることもあります。
それぞれ必要に応じて投薬を行ったり、日々のケアで改善を図ったりすることで、最小限に抑えるように努力がなされます。
まとめ
放射線治療には命を削るようなつらい副作用がある、そう思い込んでいた方に、真実が少しでも届けば幸いです。
日々の生活の中での思い込みや、知識不足による勘違いは、がん治療への間違った意識を生み出してしまいます。
正しい知識と理解のもと、皆さんが満足できる治療を受けられ場と思っています。