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肩関節の疾患における正確な画像診断の重要性について

高齢になると痛み出す肩関節の痛みにはさまざまな原因があります。スポーツや事故など外傷を既往とするもの、加齢による老化が原因のもの、その原因の種類は枚挙にいとまがありません。しかも、ご自身でも痛みの原因に思い当たることがない場合も多いのです。

それだけ原因が多岐にわたるにもかかわらず、適切な診断が行われずに間違った治療方針のまま半年、一年と通院をよぎなくされてしまう場合があるのをご存じでしょうか?

そこで今回は、肩関節の痛みに対する治療には、MRIによる正確な画像診断とセカンドオピニオンの選択の大切さについて、宇都宮セントラルクリニックの佐藤先生にお話を伺います。

肩関節の痛みにお悩みで長らく通院を余儀なくされている方や、これから肩関節の治療を検討されている方は、ぜひ最後までお読みいただき、ご自身の治療の参考にお役立てください。

佐藤俊彦先生

佐藤俊彦
医療法人 DIC
宇都宮セントラルクリニック 理事

−−本日は、佐藤先生に肩関節の治療についてのお話をお伺いします。よろしくお願いいたします。

佐藤俊彦先生(以下、佐藤) はい。よろしくお願いいたします。今日は肩関節の病気と画像診断の重要性、そして複数の医師の意見を聞くセカンドオピニオンの大切さについてお話ししたいと思います。

肩関節疾患とその種類について

佐藤 肩関節の病気は、中高年を過ぎると加齢が原因で多くの方が発症します。肩関節の病気で有名なのは「四十肩」ですよね。4050代を中心に肩関節の痛みを感じると同時に、腕が上にあがらないという症状を発症します。また若い人でもスポーツによる外傷が原因で肩関節を痛める人がいます。

一概に肩関節に痛みがあるといっても、いろんな原因が考えられるのです。ここでは、肩関節疾患の種類を以下の表にまとめてみたのでご覧ください。

【肩関節疾患の種類】

疾患名称 症状
ルースショルダー(肩関節不安定症)

生まれつき肩関節が緩いことにより起こる疾患で、思春期頃に痛みや外れやすさで発症し、女子に多いが男子にも起こります。
基本的にリハビリで症状は改善しますが、まれに手術を要することがあります。

肩インビンジメント症候群

腕は上がるが、下ろすときに引っかかったり、痛みが出たりするなどの症状が特徴です。腱板断裂や石灰沈着症など構造的な異常があって引っかかる場合と、構造的な異常がなく純粋に機能的な問題で引っかかる場合があります。
まずは理学療法(リハビリ)を試みますが、腱板断裂や石灰沈着症の場合は手術を要することがあります。

腱板断裂

50代や60代など比較的若い肩は外傷の既往があることが多いのですが、高齢になるほど外傷歴がハッキリしないことが多くなります。症状は、断裂の大きさや形態によりさまざまですが、夜間痛や安静時痛がある場合はまず注射や内服薬などで消炎処置を行い、リハビリで機能改善を図ると症状が軽減するなど、保存療法も効果があります。
ただし、手術が必要と判断された場合は、手術(関節鏡視下腱板修復術)を行います。

五十肩(凍結肩)

40代以降で、外傷などの誘因なく肩関節の痛みと可動域制限が起こる疾患です。1番つらいのは炎症期で、夜間痛が強く眠れない、日中もちょっとした動作で激痛が走るなどの症状があります。
まず局所の安静と薬の内服や注射による炎症が必要で、夜間痛が取れてからリハビリへと移行しますが、まれに手術を要する場合があります。適切な時期に適切な管理ができれば、通常は後遺症なく治癒します。

石灰沈着性腱板炎

レントゲンで肩関節に石灰沈着が見られる疾患です。症状は切開の場所や大きさにより多彩であり、動作時の痛み、関節可動領域制限、または肩インビンジメント症候群のような引っかかりが主な症状であることがあり、適切な診断の元に症状に応じて治療します。
多くは注射療法やリハビリなどによく反応しますが、手術(関節鏡視下切開摘出術)を要することもあります。

変形性肩関節症(一次性)

股関節や膝関節と同様に、関節面の軟骨が摩耗して消失し変形のために痛みと関節可動領域制限を来す疾患です。
早期の場合は、保存領域や関節鏡視下手術で対応できますが、進行期になると人口肩関節置換術が必要になります。

変形性肩関節症(二次性)

腱板広範囲が長期にわたって放置され、骨頭が肩峰下に突き上げて腕が上がらない状態です。痛みと力が入らないことが症状で、リバース型人工肩関節置換術の適応となります。

上腕骨外側上顆炎(通称:テニス肘)

テニス肘と呼ばれ、肘関節の外側に痛みを伴います。
リハビリがとても大切ですが、難治性の場合は手術が必要になることもあります。

変形性肘関節症

肘関節の変形で、痛みと関節可動領域制限、または遊離体(※)による引っかかり症状があります。スポーツに関連していることがほとんどで、症状が強い場合には関節鏡視下授動術もしくは、クリーニング手術を行います。

※遊離体……別称「関節ねずみ」。けがや病気によって関節軟骨、または軟骨下骨の一部が剥離して、膝や肘の関節内に移動してしまった骨片(かけら)のことを指します。

佐藤 このように肩関節の疾患というのは、原因が多岐にわたるので正確に治療を行うためには、正確な画像診断が必要になります。当クリニックでは、このような肩関節の診断の場合は、MRI(※)を用いた画像診断を行います。

※MRI…強力な「磁力」とFMラジオに用いられる「電波」を利用して体の断層写真を撮影する装置。無侵襲で安全な検査です。

【当院導入のMRI紹介動画】

正確な画像診断によって適切な治療へと導いた症例

佐藤 今回は、当クリニックで実際にあった肩関節の疾患による患者さんのお話を例に、いかに正確な画像診断が大切なのかをお話ししましょう。

患者さんは50代女性の方で、20178月にヨットレースに参加されたのですが、そのときに左の肩関節に激痛が走って、手が上がらなくなってしまいました。

市民病院の整形外科でレントゲン撮影による検査を受けたところ、特に異常が認められないと診断されました。その後、痛みを止めるブロック注射(※)を実費で打ちながら、痛みをこらえてリハビリ治療の滑車運動(※)を半年間も続けられたそうです。

※ブロック注射…痛みの部位の神経の近くに局所麻酔薬を注射すること。保険適用は月1回のみ、追加で行う場合は実費となります。

※滑車運動…別称「プーリー」は、椅子に腰を掛けた状態で、頭上の滑車に通したロープ両端の握り棒を持ち、両手を交互に上げ下げするリハビリ運動のこと。

ですが、一向に症状の改善は見られなく、痛みがますます強くなるばかりだったそうなのです。そこで、セカンドオピニオンとして当クリニックを受診されました。すぐにMRI検査を実施したところ、以下の所見となったのです。

【MRI所見】

  • 棘上筋腱遠位に部分断裂。全長に変性や挫傷疑い
  • 肩鎖関節に軽度の変性
  • 関節唇に異常なし
  • 上腕二頭筋長頭腱鞘炎疑い
  • 上腕骨頭後部に嚢胞。

【実際の肩関節のMRI画像とレントゲン画像】

 

【実際の肩関節のMRI画像とレントゲン画像】

実際の患者さん肩関節のMRI画像(左)とレントゲン写真(右)。MRI画像には、レントゲン写真で写っていない腱の異常が認められます。

佐藤MRIの画像診断の結果、この患者さんは肩関節の腱板(棘上筋)断裂だったことがわかりました。腱板断裂というのは、肩関節を動かすための靱帯が損傷していることです。

【腱板断裂の図解例】

【腱板断裂の図解例】

しかも、肩関節の炎症が広範囲に及んでいました。肩関節の周囲にある筋組織、肩甲下筋(けんこうかきん)、棘下筋(きょくかきん)にまで炎症が広がっている状態だったのです。そんな状態で滑車運動のリハビリを続けたのですから、症状は悪くなる一方だったわけです。

もちろんリハビリで回復する場合もあります。ですが、それは断裂しそうになっている靱帯に対する場合に有効でして、完全に断裂してしまった靱帯にはつなげるための手術が必要となります。

ですが現状は残念ながら、肩関節の痛みを訴えて病院を訪れた多くの患者さんの診断は、このようなケースがとても多いのです。レントゲンを撮って骨折がないから様子をみましょうとリハビリ治療となって、半年から一年と症状が改善されないまま通院することになってしまう、私はこの現状はゆゆしき問題だと思いますね。

この患者さんの場合は、MRIの画像診断に基づき当クリニックの紹介で関節鏡視下手術(※)の権威がいらっしゃる病院を紹介させていただき、腱板断裂を修復する手術を受けていただきました。

※関節鏡視下手術…関節の周囲に数カ所小さな穴を開けて、そこから関節の中を還流液(組織の洗浄、形態保持に用いる液体)で満たしたのち、高性能の小型カメラを備えた内視鏡を挿入して、関節部位を視認しながら損傷部位の修復する手術法。従来の関節部を大きく切開して行う手術に比べて、患者さんの体への負担が軽く、入院期間も短くなった。

今回の症例でお分かりいただけたかと思いますが、肩関節の痛みをレントゲン撮影だけで診断するのは、適切な診断ではないということを皆さんに知っていただきたいですね。関節疾患は、必ず、MRIの診断が必要なのです。

この患者さんは、奇しくもセカンドオピニオンとして当クリニックを選択いただいたことで、正確な画像診断から正しい治療へと導くことができました。

もし皆様の中で、肩関節の痛みに悩まれている方がいらっしゃいましたら、当クリニックのセカンドオピニオンまでお問い合わせください。画像診断のスペシャリストによる診察によって、現在の症状を再診断、適切な治療方針を提案いたします。

「患者自身が納得して治療を受ける選択」セカンドオピニオンの大切さ

佐藤 いま長期に通院されている患者さんの中で、症状が改善されないと感じる方がいらしたら「その診断や治療方針は大丈夫かな?」と疑問に思うこと、そしてほかの医師の意見、診断を聞くセカンドオピニオンの選択を検討することをおすすめしたいです。

いまの治療で症状が改善しないということは、別な診断や治療の切り口が必要な可能性、あるいは重大な疾患が見逃されている可能性が考えられますからね。

−−たしかに患者さんの目線だと、先生の指示は絶対的な意見と感じてしまうので、病状が改善しなくてもいつかは治るでは?と考えて、そのまま治療を続けてしまいがちです。

佐藤 はい。ですが医者は一人ではないのですから、治りが悪ければ別の先生に診ていただくことは大切ですよ。不足している検査があれば実施することで、より正しい診断が可能となり、正しい治療へとつながりますからね。

−−セカンドオピニオンを選択しようと思ったら、先生の近著「ステージ4でもあきらめない新がん治療」(幻冬舎刊)に記述されていたとおり、主治医の先生と相談してその病院で検査したデータを持って、セカンドオピニオンの外来を訪れるという流れでよろしいのでしょうか?

佐藤 はい、それが良いですね。別のお医者さんに検査データを診てもらって「どういう診断で、なにを疑って、検査結果がどうだったのか」ということを、もう一回冷静に診断してもらえることは、正確な治療への近道ですからね。

−−セカンドオピニオン、つまりほかの先生の意見を伺うというのは、かかりつけの先生や、主治医の先生に不義理をするようで申し訳ないと思っていたのですが、全然そんなことはないのですよね?

佐藤 はい。むしろその逆で、保険診療でセカンドオピニオンを推奨しているくらいなのですから。セカンドオピニオンの紹介状を書くとき、主治医が検査データを渡すと、保険診療の診療報酬がもらえるのです。

−−それは存じませんでした。セカンドオピニオンは保険診療の一環なんですね。

佐藤 ある外科の先生は、診断結果から治療に入る段階で、ご自身の診断をほかの医師と比べてもらうために、患者さんにセカンドオピニオン、サード・オピニオンの診断を受けることを薦めていらっしゃるくらいです。

−−医師自らセカンドオピニオンを提案してくださる場合もあるのですね。

佐藤 はい、そうです。患者さんご自身が納得して治療を受ける選択ができるように、医師は患者さんに医療行為についてわかりやすく十分な説明をして、患者さんも十分納得した上で治療を受けられる「インフォームドコンセント」が成り立つ診療が大切ですよね。

それを実現する方法のひとつがセカンドオピニオンで、患者さんの基本的な権利なのです。ご自身やご家族の健康長寿のために積極的に選択することをご検討いただきたいです。

−−本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

 

聞き手

吉田 剛

吉田 剛:1971年、東京生まれ。短大卒業後、大手IT系出版社に就職。編集長を経験したのち、大手ゲーム会社に転職。その後、WEBメディアの編集長、フリーライターを経て、2021年からGIコンサルティングパートナーズのデザイン戦略部にてライターを務める。

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