がん放射線治療で適用範囲がますますサイバーナイフの最新情報
1999年に米国で頭頚部および頚胸椎の腫瘍でその使用が承認されてから現在まで、サイバーナイフの適用範囲は大きく広がってきました。
今ではがんはもちろん、それ以外の疾患の治療にも使われています。
今回は、サイバーナイフの効果が再認識されているいくつかのケースについてのお話です。
原発巣の再発、手術不能の肺がん、そして前立腺がん。
サイバーナイフはこれらのがん治療の未来を明るく照らしていることがわかります。
原発巣に再発したがんでも、サイバーナイフなら大丈夫
サイバーナイフ治療は基本的に初めて発見された早期がんを対象にしています。
ですが、サイバーナイフの特性を考えると、以下のようなケースでも利用が可能です。
- 過去に手術をした場所に再発したが、手術はもう受けたくない場合
- 過去に放射線治療を受けた場所に再発した場合
どちらの場合も、あまり大きくないがん、具体的には6cm以下のがんに対してに限ります。
放射線治療を受けていると、原発巣(最初に発生したがん)の再発に放射線治療はできない……。
従来の放射線治療では、これが常識でした。正常細胞へのダメージを考えれば当然の話です。
しかし、サイバーナイフには、可動範囲が360°のロボットアームと自動位置計測機能、そして患者さんの動きよる誤差合わせて照射位置を修正する動体追尾システムが搭載されています。
これらの技術があれば、ゼロとは言えなくても、正常細胞への照射はかなり抑えられるのです。
放射線治療を受けたことのある原発巣の再発でも、サイバーナイフなら治療が可能だという根拠はここにあります。
過去に放射線治療を受けていても再度、放射線治療が受けられる――。多くのがん患者さんに希望を与えるサイバーナイフのメリットです。
手術不能の早期肺がんで標準治療に
ASTRO(米国放射線腫瘍学会)では、サイバーナイフに関する様々な治療実績が報告されています。
特に、2008年、ジョナサン・ハース博士による、手術できない早期肺がん21例に関する報告の内容は驚くべきものでした。
14カ月という期間の中で、無増悪生存率(がんの進行を止められた率)が90%、そして全生存率は100%――。
サイバーナイフが手術不能の早期肺がんに対して大きな効果を持つことを示す、素晴らしい結果です。
米国では現在も、手術が早期肺がんの標準治療です。しかし、体力がなかったり、合併症があったりすれば、手術はできません。
そんな、手術ができない方の早期肺がんに対して、サイバーナイフの定位放射線治療が最適だということがわかりました。
現在、ASCO(米国臨床腫瘍学会)では、手術ができない初期の肺がんの標準治療にサイバーナイフを位置付けています。
標準治療は一定の基準に基づいて認定された治療です。医師の個人的な経験や推測に基づくものではありません。
放射線治療の業界において、この認定は大きな意味を持っています。
実は、手術ができるがんでも、サイバーナイフが選択されるケースも少なくありません。例えば「インオペラブル」と呼ばれるケースです。
手術は不可能ではないが、術後は常に酸素ボンベを手放せない状態になってしまう……、このような状態の肺がんをインオペラブルと呼びます。
インオペラブルの肺がんの場合、肺機能を損なう手術より、肺を温存してがんを叩ける放射線治療の方が、はるかにQOL(生活の質)が高く維持されます。
現在、手術が標準治療とされている肺がんにも、サイバーナイフによる放射線治療が標準になる日が来るかもしれません。
前立腺がんでもサイバーナイフ標準治療に
2013年のASTROで、前述のハース博士は前立腺がんについて報告しています。
低リスクから中リスクの前立腺がんの患者さん605例で、寡分割照射での非再発率は99%――。
寡分割照射は標準的な照射に比べて、照射回数を減らす代わりに、一回の照射放射線量を増やした治療法です。
この報告の治療にはサイバーナイフが使われました。非再発率が99%というのは驚くべき数字です。
現在、米国における前立腺がんの標準治療は寡分割照射です。
寡分割照射はサイバーナイフ以外の放射線治療装置でも可能ですが、前立腺がんの治療に用いる装置としては、現在サイバーナイフが最有力候補になっています。
日本でも、前立腺がんに対する寡分割照射が保険適応になりました。日本でサイバーナイフによる寡分割照射が前立腺がんの標準治療として認められる日も近いでしょう。
まとめ
周囲の正常細胞へのダメージを最小限に抑えることができるサイバーナイフは、今後も様々なケースに適用が認められていくでしょう。
がん患者さんが、なるべく負担の少ない治療を受け、がん治療中も、がん治療後も快適な生活を送ることが当たり前になることを切に願っています。