最新がん免疫細胞療法で活用される「ナイーブT細胞」の効果とは?

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最新がん免疫細胞療法で活用される「ナイーブT細胞」の効果とは?

がんの免疫細胞療法では、いろいろな免疫細胞が活用されます。
その数多い免疫細胞の中から、「ナイーブT細胞」についてご説明します。

最新の免疫細胞療法の一つ「DCハイブリッド療法」の核とも言われるナイーブT細胞は、その働きが明らかになるにつれて、多くの注目を集めるようになりました。

ナイーブT細胞、聞きなれないこの免疫細胞はすごい力を持っています。

免疫細胞のひとつナイーブT細胞とは?

ナイーブT細胞とは何か?

ナイーブT細胞の「ナイーブ」には「無知」や「未経験」という意味が込められています。
一人前になっていないT細胞――、具体的には、「まだ抗原(=敵)に触れていない」T細胞を指します。

T細胞はがんなどの異物を敵とみなして攻撃する働きを持つ免疫細胞です。しかし、攻撃をするためには、攻撃対象の情報を知る必要があります。
この情報を渡す役目を持つのが樹状細胞です。

免疫細胞

ナイーブT細胞は樹状細胞に敵の情報をもらって初めて攻撃態勢に入れるのです。

そのためナイーブT細胞の状態では、体内に敵が侵入してきても、がんがあっても、何の反応も起こしません。

ナイーブT細胞が樹状細胞と出会うのは、リンパ節という場所です。
リンパ節は、リンパ管の途中にある直径1~2センチのソラマメ形の器官で、成人であれば300~600個持っています。

ナイーブT細胞は、リンパ節で樹状細胞から敵の目印を受け取ると、爆発的に増殖、「キラーT細胞」や「ヘルパーT細胞」と言った一人前の免疫細胞へ変身します。

キラーT細胞がより成熟したものを「エフェクターT細胞」と呼びます。エフェクターT細胞もがんを攻撃します。
未熟なナイーブT細胞に比べて、成熟したエフェクターT細胞の方ががんを攻撃する力は強いはず……。

普通はこう考えますし、試験管の中では実際にそのように働きます。

しかし、動物(ネズミ)を使った実験では、逆のことが証明されたのです。

ナイーブT細胞vs.エフェクターT細胞

動物(ネズミ)を使った実験で、ナイーブT細胞とエフェクターT細胞の働きを比べたところ、以下のような結果が見られました。

  • ナイーブT細胞:がんが小さくなった
  • エフェクターT細胞:がんの増殖をほとんど抑えられなかった
臨床試験が行われる医療現場

体内ではエフェクターT細胞よりも、ナイーブT細胞の方ががんを殺す力が高かったわけです。
試験管の中と生体とでは結果が異なる……、これも免疫の難しい一面を示しています。

このネズミを使った実験の後、人間の臨床試験でも、ナイーブT細胞の強い効果が証明されました。
その臨床試験は、京都府立医科大学と関連クリニックで行われています。

対象は男女9人、いずれも標準治療を終えている進行がんの患者さんです。
違う表現をすると「標準治療では治療方法がなくなってしまった患者さんたち」ということになります。

対象となった患者さんの内訳は以下のとおりです。

  • 52歳男性 大腸がん
  • 62歳男性 すい臓がん
  • 60歳男性 胃がん
  • 72歳女性 直腸がん
  • 53歳男性 直腸がん
  • 61歳女性 総胆管がん
  • 75歳男性 肺がん
  • 48歳男性 肝細胞がん
  • 43歳男性 胆管細胞がん

結果は以下のようになりました。

  • がん消滅…1人
  • 30%以上縮小…1人
  • がんが大きくならず成長が止まった…4人
  • 効果がなかった…3人

これは7割近くの患者さんにおいて、がんの勢いがコントロールできたことを表しています。

こうした大きな効果の背景には、ナイーブT細胞が体内で樹状細胞から抗原提示を受けた後、爆発的に増えることが考えられます。攻撃勢の絶対数が増える=攻撃力がアップするわけです。

また、エフェクターT細胞と比べ、ナイーブT細胞は若いT細胞です。
若いということは、それだけ余命が長いということ。
より長期間にわたってがんを攻撃することができるということです。

まとめ

治療法がなくなってしまった、がん患者さんを救うために

免疫細胞の研究がすすみ、免疫細胞療法が進歩することで、より多くのがん患者さん、特に現行の標準治療では治療法がなくなってしまった患者さんを救うことができるようになります。

副作用の心配が少なく、身体への負担も小さい免疫細胞療法と放射線治療は、高齢化が進む日本のがん医療において大きな希望な光です。

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