がん治療でセカンド・オピニオンを活用するための3つの心得
日本でも「セカンド・オピニオン」という言葉が広く知られるようになりました。しかし、言葉は知っていても実際にセカンド・オピニオンを受ける方は、まだまだ少ないのが現状です。
今回は、セカンド・オピニオンを受ける方がなかなか日本で増えない理由について一緒に見ていきましょう。
目次
信頼するからこそぶつけられる疑問
がんという診断を受け入れるのは簡単ではありません。いきなり「あなたはがんで、こうした治療法があります」と言われれば、困惑して当然です。
患者さん本人にも、周囲の方々にも「本当にがんなのか?」「その治療法が本当に最適なのか?」「この先生の診断は確かなのか?」と様々な疑問が浮かぶものです。
がんの治療に欠かせないのが、患者さんが医師を「信じる」気持ちです。
ここで間違えて欲しくないのは、「信じる」と「言いなりになる」が同じではないということです。
がんの治療で医師を「信じる」と言うのは、「自分の意見や疑問を安心してぶつけることができる」ということです。
たとえば、治療法の選択について考えてみましょう。
医師から「放射線治療が最適だと思います」と伝えられたとき、「先生の良いようにお願いします」と答える関係は信頼関係ではありません、どちらかと言えば主従関係でしょうか。
医師を本当に信頼しているのであれば「どうして放射線治療がベストなんですか?」とか、「放射線治療は怖いんですが……」とか、「どうして手術をしてもらえないんですか?」と言ったような疑問を、安心してぶつけることができるはずです。
セカンド・オピニオンはこの延長線上にあるものだと、私は思います。
なぜ日本でセカンド・オピニオンが浸透しないのか
2012年、製薬会社のファイザーがインターネットでアンケートを行っています。対象は1000人のがん患者さんです。
その中に、セカンド・オピニオンを知っているか、受けたかという項目がありました。結果は以下のようなものだったそうです。
1位(73.2%)…セカンド・オピニオンを知っていたが、受けなかった
2位(15.2%)…セカンド・オピニオンを知っており、受けた
3位(11.6%)…セカンド・オピニオンを知らなかった
セカンド・オピニオンという言葉を知っていても、受けていない患者さんがいかに多いかが良く分かります。
なぜ、日本でセカンド・オピニオンが広がらないのか。それはひとえに医師への「遠慮」だと、私は考えています。
日本で医者は「お医者様」と呼ばれ、敬われてきました。その中で、医療は医師に任せるもの、患者は命を救っていただく側、という感覚が強く存在していたんですね。
今でこそ全面禁止を強調している病院も増えましたが、手術前後に心づけとして患者さんが大金を包んで渡すのも珍しくない光景でした。
そんな関係の中で「セカンド・オピニオンを……」なんて言い出そうものなら、「セカンド・オピニオンだって?そんなに私を信用できないなら、二度と来るな!」と暴言を吐かれることもあり得たのです。
そのような時代から、まだ日本人は抜け出せていないのです。
もちろん、今の時代、あからさまな暴言を吐く医師はほとんどいません。ですが、患者さんが強く出にくいという感覚はまだまだ根強く残っているのが現実です。
セカンド・オピニオンが日本で広がるためには、間違った「遠慮」の文化が正されなければいけません。セカンド・オピニオンを否定するような医師は、自分の診断に自信のない医師だという認識をもっと多くの患者さんが持たなければいけないのです。
セカンド・オピニオンの心得
セカンド・オピニオンは患者さんが持つ当然の権利です。なぜなら、がん治療の主役はあくまでも医師ではなく患者さん本人だからです。
医師の利益のために治療をするのではありません。患者さんの健康や命のために治療は行われるのです。
セカンド・オピニオンを申し出られて不機嫌になる医師がいるとすれば、その医師は医療者失格です。こちらから願い下げる位の気持ちを持ってもいいでしょう。
それくらい、セカンド・オピニオンは患者さんにとって大切にされるべきものなのです。
ここでは、その大切なセカンド・オピニオンを最大限活用するための心得をご紹介します。
以下のことを頭に入れて検討してみて下さい。
- まずは主治医に相談を
- 主治医とセカンド・オピニオンの意見が食い違うこともある
- 自分でも勉強しましょう
まずは主治医に相談を
疑問があるときはまず現在の主治医に素直に相談しましょう。内緒で他の医師に意見を聞きに行っても検査が二度手間になるだけです。
どんな疑問もまずは主治医にぶつけるのがおすすめです。それでも納得できなければ、セカンド・オピニオンの段階です。
主治医とセカンド・オピニオンの意見が食い違うこともある
セカンド・オピニオンの結果と、主治医の言うことが全く相反することもあり得ます。
どちらを信頼するのか、さらにサード・オピニオンを仰ぐのか、最後に判断するのは患者さん自身です。
選択肢が増えることは選択が迫られることとイコールだということを念頭に置きましょう。
自分でも勉強しましょう
がんの治療法やお薬について、自分でも勉強してみましょう。主治医の話やセカンド・オピニオンの話をより理解できるようになりますし、的確な質問もできるようになります。
何に納得ができないのか明確にして初めてセカンド・オピニオンの効果が生きてきます。
まとめ
セカンド・オピニオンは、医師と患者さんの信頼関係を築く上でも、患者さんが納得して自分で治療法を選ぶためにも欠かせないものです。
医師の方から「セカンド・オピニオンはどうしますか?」と問われる……、日本でもそんな光景が当たり前になることを、日々祈っています。