陽子線治療とは?効果やメリットとデメリット、費用・保険適用などわかりやすく解説

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陽子線治療とは?効果やメリットとデメリット、費用・保険適用などわかりやすく解説

陽子線治療とは?効果やメリットとデメリット、費用・保険適用などわかりやすく解説

がんの治療において、「他の治療法はないだろうか」「いちばん効果的な方法はなんだろうか」と調べていくなかで、陽子線治療の存在を知る方も多いのではないでしょうか。

陽子線治療は、健康な組織への影響を抑えながらがん組織を狙い撃ちできる特性を持ちますが、対象となるがんの種類や治療費用、保険適用の条件については正しい理解が必要です。

この記事では、陽子線治療の仕組みや従来の放射線治療との違い、メリット・デメリット、保険適用や費用について詳しく解説します。

陽子線治療とは?基本的な仕組みをわかりやすく解説

陽子線治療とは?基本的な仕組みをわかりやすく解説

陽子線治療とは、がん治療における先進的な放射線治療の一種です。その仕組みや、ほかの放射線治療との違いについて解説します。

陽子線治療の基本的な仕組み

陽子線治療では、水素の原子核である陽子を加速器という特別な装置で、光速の60%〜70%近くまで加速して作られる陽子線を利用します。

陽子線には、体内に照射された後に設定した深さに達する直前で、持っているエネルギーを一気に放出して停止する「ブラッグピーク」という性質があります。この性質を利用し、がん組織にピンポイントで強いエネルギーを集中させることで、がん細胞のDNAを破壊し増殖を防ぐのが陽子線治療の特徴です。

従来の放射線治療(X線治療)との違い

従来のX線治療では、体の表面近くで最も強い放射線量となり、体の奥に入るにつれて弱くなります。また、X線はがんを通り越して奥まで突き抜けます。そのため、がん組織以外の正常な組織にも放射線があたってしまい、影響を及ぼすことがあるのです。

一方で陽子線治療では、陽子線の持つブラッグピークの性質により、がん組織の位置で最大の効果を発揮した後に急激に線量が低下します。これにより、がんを集中的に狙い、奥にある正常組織へのダメージを最小限に抑えることができるため、体への負担や副作用が少なくなります。

従来の放射線治療についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
>>がん放射線治療について種類やメリット・デメリット、期間や回数、費用などを解説

重粒子線治療との比較

陽子線治療と重粒子線治療は、どちらも原子核などの小さな粒子を使う「粒子線治療」という種類に含まれます。

陽子線治療は、最も軽い元素である水素の原子核(陽子)を使いますが、重粒子線治療は、陽子よりも重い粒子である炭素の原子核を使うのです。

どちらの治療も、がん組織の深さで止まり、そこでエネルギーを放出する特性(ブラッグピーク)を持ち、従来のX線治療では難しかったがんに対しても効果が期待されています。

陽子線治療の効果と適応となるがんの種類

陽子線治療の効果と適応となるがんの種類

陽子線治療の成績や、適応となるがんの種類について解説しましょう。

陽子線治療の治療成績

陽子線治療の治療成績は、治療を受けるがんの種類や進行度によって異なります。

限局性肺がん2年生存率:83.1%
治療開始から2年後の局所制御率

・ステージ1A 84.2%

・ステージ1B 61.8%

限局性前立腺がん5年生存率:97%~98%
5年非再発率:95%~98%
肝細胞がん2年生存率:72.4%
治療開始から2年後の局所制御率:89.2%

陽子線治療における重い副作用は、早期で1.7%、晩期で0.4%と低値になっています。

保険診療の対象となるがん

陽子線治療において、保険診療の対象となるがんは以下のとおりです。

  • 頭頸部がん(口腔・咽喉頭の扁平上皮癌を除く)
  • ステージ1~ステージ2Aまでの早期肺がん
  • 長径4cm以上の肝細胞がん
  • 肝内胆管がん
  • 局所進行性膵がん
  • 手術後に再発した局所大腸がん
  • 限局性及び局所進行性前立腺がん
  • 限局性の骨軟部腫瘍
  • 小児がん(限局性の固形がんに限る)

一般的に、上記のがんにおいて手術で根治を目指すことが難しい場合に陽子線治療が検討されます。

先進医療の対象となるがん

先進医療としておこなう陽子線治療の対象となるがんは以下のとおりです。

  • 脳脊髄腫瘍(膠芽腫・神経膠腫・髄膜腫・まれな脳腫瘍)
  • 頭頸部扁平上皮がん
  • 肺縦隔腫瘍(保険適用外の限局性肺がん・局所進行非小細胞肺がん・縦隔腫瘍)
  • 局所進行食道がん
  • 肝胆膵腫瘍(保険適用外の肝細胞がん・胆道がん)
  • 泌尿器腫瘍(膀胱がん・腎臓がん)
  • 転移性腫瘍(転移性肺がん・転移性肝がん・転移性リンパ節)

先進医療による実施は、条件が適合しているか、治療の必要性があるかなど医師の判断によって決定されます。

先進医療についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
>>がん治療における先進医療とは?選択する人の割合や費用、種類なども解説

陽子線治療のメリット

陽子線治療のメリット

陽子線治療のメリットを5つのポイントに分けて解説しましょう。

がん病巣にピンポイントで照射できる

陽子線には「ブラッグピーク」という特性があり、狙った場所に多くの放射線量を効率よく照射できます。特定の深さで最大のエネルギーを放出して停止するため、がん組織より奥へ突き抜けることはありません。

従来のX線治療と比べ、放射線をがんに集中させて、周りの正常な組織へのダメージを最小限に留めます。がん組織の深さや形に合わせて陽子線の照射を調節して、がんをピンポイントで攻撃するのです。

手術が難しい部位のがんにも対応しやすい

陽子線治療は、がん組織に狙いを定めて照射できるため、手術が難しいとされる部位のがんにも対応しやすいメリットがあります。照射した後も臓器の形や機能を比較的保つことができ、治療中や治療後の生活の質を良好に維持できます。

従来のX線治療では、効果が薄かったり治療が困難であったりした部位のがんにも対応可能です。放射線の影響を受けやすい臓器の近くにあるがん組織に対しても、リスクを抑えて照射できます。

入院せず外来通院で治療ができる

陽子線治療は、治療期間中も原則として入院は不要で、毎日の通院で治療を受けることが可能です。陽子線の照射による痛みや熱さはなく、麻酔の必要もありません。

1回の治療時間は、位置合わせを含めて15分から30分程度で済みます。がん治療と日常生活を両立しやすく、仕事や日常生活に支障をきたしにくいメリットがあります。

高齢者や持病がある人も治療を受けやすい

陽子線治療は、身体的な負担が少ないため、手術に耐えられる体力のない高齢者でも治療ができます。また、ほかの病気があり、手術をおこなえない人でも治療を受けられる可能性があるのです。

従来の放射線治療と比べても副作用が軽いため、体への影響が抑えられます。

二次がんの発生リスクが抑えられる

小児や若年者が陽子線治療を受けた場合、将来的に二次がん(抗がん剤や放射線による治療の影響で2つ目のがんを発症すること)の発生リスクを低く抑えられます。

陽子線はがん組織で最大のエネルギーを放つため、周りにある正常組織への線量を最小限に留めることができます。そのため、従来のX線治療と比べて、照射後数ヶ月から数年で生じる晩期副作用のリスクが少なくなります。

特に小児がんでは、治療後の成長障害や二次がん発生のリスク軽減に大きなメリットがあるのです。

陽子線治療のデメリット

陽子線治療のデメリット

陽子線治療は身体に負担の少ない治療ですが、その陽子線の特性や医療体制において、いくつかのデメリットや注意すべき点があることも理解しましょう。

すべてのがんに適応するわけではない

陽子線ではがん組織に集中して放射線をあてるため、がんが全身に広がっている状態の固形がんのステージ4や、血液のがんは治療の対象外です。 消化管は放射線の影響を受けやすいため、慎重な判断が求められます。

また、がんの大きさが10cmを超えると、陽子線治療装置では照射できる範囲に限りがあるため、治療できない場合があります。

治療可能な施設が限られている

陽子線治療には、高度で大規模な設備が必要なため、日本全国で陽子線治療を受けられる施設は20ヶ所と限られています。そのため、住まいの地域によっては、陽子線治療を受けるために遠方への通院が必要となるでしょう。従来のX線治療と比べ、施設設置に高額な費用がかかることが普及の課題です。

経済的負担が大きい場合がある

陽子線治療を先進医療や自由診療で受ける場合、経済的負担が大きくなる傾向があります。

先進医療でおこなう場合、陽子線治療の技術料は全額自己負担となり、施設によって異なりますが約300万円が目安です。先進医療については保険外併用療養費制度が適用されるため、陽子線治療以外の診察・検査・入院費用などは公的保険が利用できます。

自由診療でおこなう場合は、治療にかかわる全ての診療費が全額自己負担となり、さらに高額となるのです。

陽子線治療の費用と保険適用について

陽子線治療の費用と保険適用について

陽子線治療にかかる費用は、公的医療保険が適用される場合と、先進医療や自由診療になる場合によって異なります。それぞれの費用目安について確認しましょう。

保険診療の場合の費用目安

保険診療の対象となるがんであれば、陽子線治療にかかる費用は、国が定めた診療報酬に基づき、以下のとおりになっています。

  • 前立腺がん:160万円
  • そのほかのがん:237万5000円

医療機関の窓口では、上記の金額の自己負担割合分が支払い額となります。

先進医療・自由診療の場合の費用

先進医療として陽子線治療をおこなう場合、技術料は公的医療保険の対象外となり、全額自己負担となります。先進医療の技術料は施設によって異なり、288万円~350万円程度です。陽子線の照射技術料以外の、診察・検査・投薬・入院などの費用は公的保険が適用されます。

自由診療では、施設によって技術料が380万円~480万円と高額になります。公的保険の併用ができないため、陽子線治療だけでなく、診察や検査など全ての診療費が全額自己負担となるのです。

高額療養費制度や医療費助成制度の活用

保険診療の対象となる場合は、高額療養費制度によって自己負担額を軽減できます。さらに「限度額適用認定証」を利用することで、あらかじめ定められた限度額の支払いで済ませることが可能です。

先進医療の場合は、陽子線の照射技術料は高額療養費制度の対象外ですが、そのほかの保険診療部分は制度が適用されます。また、民間の医療保険の「先進医療特約」に加入していると、先進医療による陽子線治療の技術料をカバーできる場合があります。

地域によっては、先進医療の陽子線治療にかかる治療費や交通費の助成制度があるため、確認すると良いでしょう。

陽子線治療を受けられる病院・施設

陽子線治療は高度な専門施設でのみ実施されています。さらに治療を受けるまでの流れについても解説しましょう。

全国の陽子線治療施設一覧

全国の陽子線治療施設一覧

2025年10月現在、日本国内で陽子線治療を受けられる施設は20ヶ所あります。

都道府県施設名称
北海道北海道大学病院陽子線治療センター
北海道札幌禎心会病院陽子線治療センター
北海道札幌孝仁会記念病院 札幌高機能放射線治療センター
福島県南東北がん陽子線治療センター
茨城県筑波大学附属病院 陽子線治療センター
千葉県国立がん研究センター東病院
神奈川県湘南鎌倉総合病院先端医療センター陽子線治療室
長野県相澤病院 陽子線治療センター
岐阜県中部国際医療センター 陽子線がん治療センター
静岡県静岡県立静岡がんセンター
愛知県社会医療法人明陽会 成田記念陽子線センター
愛知県名古屋市立大学医学部附属西部医療センター 名古屋陽子線治療センター
京都府京都府立医科大学附属病院 永守記念最先端がん治療研究センター
大阪府大阪陽子線クリニック
奈良県社会医療法人 高清会 陽子線治療センター
福井県福井県立病院 陽子線がん治療センター
兵庫県兵庫県立粒子線医療センター
兵庫県兵庫県立粒子線医療センター付属神戸陽子線センター
岡山県岡山大学・津山中央病院共同運用 がん陽子線治療センター
鹿児島県メディポリス国際陽子線治療センター

参考:公益財団法人 医用原子力技術研究振興財団ホームページ「日本の粒子線治療施設の紹介」

陽子線治療の流れ

陽子線治療を受けるまでの流れや、治療期間・通院スケジュールなどを解説します。

初診から治療開始までの流れ

陽子線治療は、がん組織へ正確に照射するため、患者さん一人ひとりに合わせた準備が必要となります。初診から治療開始までの大まかな流れは以下の通りです。

①初診主治医からの紹介状や画像データなどをもとに診察をおこない、陽子線治療の対象となるか判断します。状況によっては、追加の検査をおこなうこともあります。

治療の概要や費用についての説明もおこないます。

②治療方針の決定陽子線治療が適応できると判断されると、放射線治療専門医や他科の専門医も交えたキャンサーボード(検討会)で、患者さんにとって適切な治療方法を検討します。その後、改めて患者さんに予測できる効果や副作用などの詳細な説明をおこないます。
③治療計画の作成陽子線治療中に体が動かないように専用の固定具を作成し、それを装着した状態で治療計画用のCT撮影をおこないます。このCTデータに基づき、医師や放射線技師らが適切な照射方法を検討します。

検討した治療計画が問題なく実施できるか、リハーサルもおこないます。

④治療開始陽子線治療では、毎回位置確認をおこなってから照射します。

1回の治療時間は15分〜30分程度です。

治療期間と通院スケジュール

陽子線治療は、一般的に週5日の通院治療でおこなわれます。

治療回数や期間は、がんの種類によって以下のとおりになります。

  • 頭頸部がん:治療回数15回~35回、治療期間 約4週間~7週間
  • 限局性肺がん:治療回数10回~25回、治療期間 約2週間~5週間
  • 肝細胞がん:治療回数10回~38回、治療期間 約2週間~8週間
  • 前立腺がん:治療回数21回~22回、治療期間 約4週間
  • 局所大腸がん:治療回数18回~35回、治療期間 約4週間~7週間

陽子線治療におけるセカンドオピニオン

陽子線治療を検討する際、セカンドオピニオン外来を利用することで、自身の病状に応じた医師の詳しい見解や説明を受けることができます。先進医療や自由診療の対象となるケースでは、初回受診をセカンドオピニオンとして扱っている施設もあり、治療の適応について専門医の見解を聞くことが可能です。

相談方法は、医療機関での対面形式のほか、オンラインでの相談を選択できる施設もあり、遠方の人でも利用しやすくなっています。セカンドオピニオンを受けた後、実際に陽子線治療を受けることを決めた場合は、必要な書類を準備した上で、改めて実施施設を受診する流れとなります。

まとめ

陽子線治療はがん組織に狙いを定めて放射線を照射し周りの正常組織へのダメージを抑えられる

陽子線治療は、がん組織に狙いを定めて放射線を照射し、周りの正常組織へのダメージを抑えられる放射線治療の1つです。外来通院で受けられ、手術が難しい部位のがんにも対応できるメリットがある一方で、対象となるがんの種類が限られること、施設数の少なさ、費用面での課題もあります。

保険適用の対象であれば高額療養費制度の活用も可能ですが、先進医療や自由診療として受ける場合は経済的負担が大きくなります。陽子線治療が自身のがんに適応となるか判断するためにも、まずは主治医への確認やセカンドオピニオンで相談してみましょう。

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