PSAの数値が高いと言われたら?原因や前立腺がんとの関係性も解説

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PSAの数値が高いと言われたら?原因や前立腺がんとの関係性も解説

PSAの数値が高いと言われたら?原因や前立腺がんとの関係性も解説

健康診断やがん検診でPSAの数値が高いと指摘され、医師から精密検査を勧められていませんか?PSA値が上がる原因を知りたい人や、何か大きな病気にかかっているのではと不安な人もいるでしょう。

今回はPSAについて、検査でわかること・基準値・上昇する原因・前立腺がんとの関連などを詳しく解説します。さらに、PSA値が高くなり前立腺がんが否定できないときにおこなう、注目のPSMA-PET検査についても紹介します。

より精度の高い検査を選び、前立腺がんの早期発見やステージ決定につなげて、適切な治療を受けられるようにしましょう。

PSAとは?概要や基準値について

PSAとは?概要や基準値について

PSAとは何の指標であるのか、数値を調べてわかることなどを詳しく解説します。PSAの基準値や判定についても確認しましょう。

PSAの概要

PSAは、前立腺特異抗原(prostate specific antigen)のことです。男性のみに存在する前立腺細胞で作られるタンパク質の1つで、大半は精液に分泌されますが、一部は血液中に流れ出る性質があります。

PSAはほかの臓器に異常が現れたときは反応せず、前立腺に異常が現れたときのみ増えることから、前立腺がんの腫瘍マーカーとして利用されています。

PSA検査でわかること

PSA検査では、前立腺がんの可能性があるか否かを知ることができます。ただし、PSA値はがんだけではなく、加齢・射精・炎症などの影響によって、前立腺の組織や細胞が刺激されたり破壊されたりすることでも数値が高くなることがあります。そのため、PSA値が上昇するだけではがんであると確定診断することはできません。

PSAの基準値

PSAの基準値は、通常4.0ng/mL以下ですが、年齢を重ねるごとにPSA値は上昇するため、以下のように年齢階層別に基準値が定められています。

  • 50~64歳:3.0ng/mL以下
  • 65~69歳:3.5ng/mL以下
  • 70歳以上:4.0ng/mL以下

基準値を下回っていてもPSA値が1.1ng/mLを上回る場合は、年1回定期的に前立腺がん検診を受けることをおすすめします。

PSA値の判定の目安

PSA値が高くなるほど、前立腺がんである確率が上がります。PSAの数値における前立腺がんの発見される割合は次のとおりです。

  • 4~10ng/mL:20~28%
  • 10~30ng/mL:35~53%
  • 30~50ng/mL:75~86%
  • 50ng/mL以上:がんの可能性が非常に高く、転移している疑いもある

一方で、基準値4ng/mLに満たなくても、生検などの詳しい検査をおこなうと、がんが発見される場合があります。PSA値2~4ng/mLにおいても、約25%の割合でがんが見つかったという報告もあるのです。

PSAの数値が高くなる原因

PSAの数値が高くなる原因

PSAの数値が高くなる病気や行動に、どのようなものがあるか確認しましょう。

前立腺がん

前立腺がんは、前立腺の細胞が何らかのきっかけで無秩序に増え続ける病気です。男性が発症するがんのなかでもっとも多く、罹患者数は50歳以降から急激に増えて、70歳代がピークになります。がん細胞は増殖スピードが速く、正常な前立腺組織を壊しながら増え続けるため、血液中に多量のPSAが流出します。早期がんのときは自覚症状が少なく、大きくなるにつれて尿の回数が多い・尿が出にくい・血尿が出るなどの症状がみられます。

前立腺肥大症

前立腺肥大症は、加齢とともに前立腺が肥大することで尿道を圧迫し、尿が出にくい・残尿感があるなどの排尿障害を起こす病気です。50歳代では20~30%、80歳以上では80~90%の人に前立腺の肥大がみられます。前立腺が大きくなると、それに伴ってPSAが多く生成されるため、血液中に流出する量も増えるのです。前立腺の肥大からがんに発展することはありませんが、前立腺肥大症の患者のなかには、前立腺がんを合併している人もいます。

前立腺炎

前立腺炎は、前立腺に炎症が起こり、排尿障害や排尿痛が生じる病気です。さまざまな年代で発症しますが、30歳代〜40歳代にもっとも多くみられます。前立腺炎は、細菌感染が原因のものと、感染に関係なく発症するものに分けられます。さらに、細菌感染が原因となるものは、急性と慢性の2つに分類できます。どの場合も、炎症によって前立腺の細胞や組織が破壊されるため、PSAが血液中に流出して数値が上昇するのです。

そのほかの原因

長時間の座位やサイクリングといった陰部の圧迫・激しい運動・射精など外部刺激によって一時的にPSAが上昇します。ほかにも、尿道の検査やカテーテル・直腸診・生検によって前立腺が刺激されることで、PSAの数値が高くなるケースもあります。

PSAの数値が高いときにおこなわれる精密検査

SAの数値が高いときにおこなわれる精密検査

PSAの数値が基準値を超えて高くなると、がんの可能性があるため精密検査が行われます。一般的におこなわれる精密検査について確認しましょう。

直腸診

前立腺は、骨盤内の奥深いところにあるため、体表面から直接触れることはできません。直腸診は、前立腺が直腸に接していることを生かした検査で、肛門から指を入れて前立腺の様子を観察します。石のように固いものがある・表面が凸凹になっている・左右の大きさが非対称であるといった状態では、前立腺がんであると考えられるでしょう。しかし、直腸診では前立腺全体を確認することができないため、ほかの検査と組み合わせて判断します。

経直腸前立腺超音波検査

経直腸前立腺超音波検査は、直径2cmほどの超音波装置(プローブ)を肛門から挿入して、前立腺を観察する検査です。主に前立腺の大きさや形を調べることができます。経直腸前立腺超音波検査において、正常な前立腺の組織は白く描出されますが、がんのある場合は黒色に描出されるため異常を判別できるのです。

前立腺MRI検査

前立腺MRI検査は、強力な磁石と電磁波を使用して、前立腺内部の断面画像が得られる検査です。放射線を使用しないため、検査による被ばくを防ぐことができます。病変部分と正常な組織を区別するだけではなく、がんが見つかった場合に位置・大きさ・悪性度をある程度判別することが可能です。さらに、組織生検をおこなうかどうかの判断材料にも使用されます。

前立腺生検

前立腺生検は、前立腺の組織を採取して、顕微鏡で状態を観察するものです。PSA検査・直腸診・画像診断などの結果から、がんが強く疑われるときに確定診断としておこなわれます。組織を採取するときは、経直腸超音波を使用して画像を確認しながら、10ヵ所~14ヶ所ほど針を刺します。PSA値が基準値に満たなくても、家族歴によっては生検をおこなうことがあるのです。

PSA数値が高いときにおこなう注目のPSMA-PET検査

PSA数値が高いときにおこなう注目のPSMA-PET検査

PSAの数値が上昇したときに、一般的な精密検査と比べて、精度の高いPSMA-PET検査が注目されています。PSMA-PET検査の基本情報やほかの検査との違いについてみていきましょう。

PSMA-PET検査とは

PSMA-PET検査は「前立腺特異的膜抗原(PSMA)」というタンパク質を標的にした放射性薬品を用いて、特殊なカメラで撮影するものです。

CT検査やMRI検査ではがん組織の形状や大きさを調べるのに対して、PSMA-PET検査では病変部にどのくらいがん細胞が集まっているか、がん組織の活動性が高いかどうかを調べることができます。一般的なPET検査ではがん以外の炎症部分に対しても反応しますが、PSMA-PET検査はがん病変のみに反応する特徴もあります。

PSMA-PET検査は日本国内で未承認の検査ですが、欧米ではガイドラインで推奨されており、ステージ決定・再発時の早期発見・治療効果の確認に活用されているのです。

PSAとPSMAの違い

PSAは、前立腺の正常細胞から精液や血液に流出するタンパク質で、がんだけではなく前立腺の肥大・炎症・射精などの刺激によっても数値が上昇します。本当にがんであるか確認するためには、ほかの検査を追加でおこなう必要があるのです。また、PSAの数値が上がるだけでは、がんの悪性度を予測することはできません。

一方、PSMAは前立腺細胞の膜の表面に現れるタンパク質で、前立腺細胞ががん化すると通常の数十倍〜数百倍まで増加します。さらに悪性度の高いがん組織では、PSMAが数千倍まで増加することがわかっています。

PSMA-PET検査のメリット

PSMA-PET検査には、大きく4つのメリットがあります。

1つ目は、CT検査でも発見できない微小ながんを見つけることが期待できることです。CT検査では少なくとも5mm~1cmの大きさにならないとがんを発見できませんが、PSMA-PET検査では1mmほどのごく小さながんでも検出できるとされています。

2つ目は、がんの悪性度が高いほど画像に強く映ることです。悪性度が高いとPSMAが多く出現するため、その部分に検査薬が集まりやすくなり、コントラストが強くなります。

3つ目は、感度や特異性に優れていることです。PSAはがんだけではなく炎症などでも数値が高くなりますが、PSMAはがんの病変部分のみに反応する特徴があります。

4つ目は、転移がんについても検出率が高いことです。転移を調べる検査で、CT検査と骨シンチグラフィにおける検出率は65%ですが、PSMA-PET検査では92%の検出率を誇ります。

PSMA-PET検査を受けるには

PSMA-PET検査を受けるには

PSMA-PET検査を希望する場合、受診にふさわしいタイミングや検査の流れなどについて解説します。

PSMA-PET検査が有効となるPSAの数値

PSAの数値が上昇するほど、PSMA-PET検査におけるがんの検出率は高くなります。PSA値が上昇して生検をおこなってもがんが検出されなかったケースや、生検でどの部分を採取したら良いか分からないケースでは受診を検討して良いでしょう。

前立腺がんが再発しているかどうかPSMA-PET検査において確認したいケースでは、PSA値が2.0ng/mL以上の患者さんで約90%検出することが可能です。PSA値が0.5~1.0ng/mLの場合でも、約7割の人で検出できます。

PSMA-PET検査の流れ

PSMA-PET検査を希望する場合、過去の検査結果や治療状況などの診療情報提供書が必要になります。主治医とよく相談し、現時点で治療を受けている医療機関から検査を実施する施設へ予約を取ってもらいましょう。

PSMA-PET検査は、以下の流れで進行します。

  1. 問診・着替えをおこなう
  2. 検査薬を静脈注射する
  3. 薬ががん組織に集まるまで1時間ほど安静に待機する
  4. 撮影前に排尿を済ませる
  5. 撮影をおこなう(20分~30分程度)
  6. 着替えをおこない終了

検査を受けるにあたって食事制限はありませんが、検査当日は乳幼児や妊婦との接触は控えるようにしましょう。

PSMA-PET検査の受診場所と費用相場

PSMA-PET検査をおこなっている日本国内の医療機関は、2024年10月時点で数ヶ所しかありません。宇都宮セントラルクリニックは東日本で初導入した施設で、2024年4月1日より検査をおこなっています。検査を希望する際は、治療を受けている医療機関からの紹介状が必要です。

PSMA-PET検査は、現在保険承認されていないため全額自己負担となり、費用の相場は25万円前後になります。

まとめ

PSA(前立腺特異抗原)は、前立腺がんの腫瘍マーカー

PSA(前立腺特異抗原)は、前立腺がんの腫瘍マーカーとして使用されており、数値が高くなるほど、前立腺がんの可能性が考えられます。ただし、PSAの数値は前立腺がんだけではなく、前立腺肥大症や前立腺炎などの病気によっても上昇するため、がんの診断には追加検査が必要です。

近年、前立腺がんに対して感度や特異性に優れたPSMA-PET検査が登場しました。一般的な前立腺がんの精密検査と比べて、ごく小さながんでも発見できる・がんの悪性度を予測できる・転移がんを検出できるなどのメリットがあります。2024年時点において日本国内未承認の検査で、実施できる医療機関がわずかではありますが、PSMA-PET検査は前立腺がんの早期発見・ステージ決定・治療効果の確認に非常に有用です。

前立腺がんの適切な治療を受けたい人や、治療が順調に進んでいるか確かめたい人は、PSMA-PET検査の受診を検討しましょう。

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