脳腫瘍の種類と原因~放射線治療が効果を発揮する理由とは?
脳腫瘍などの頭部のがんも、放射線治療が適用されます。
脳腫瘍と放射線治療の関係について、詳しく見ていきましょう。
目次
脳腫瘍とは
脳腫瘍は頭蓋内に発生する腫瘍のことです。腫瘍が発生する部位は以下の通りです。
- 脳そのもの
- 脳を覆う髄膜
- 脳から直接出ている脳神経
- 脳下垂体
脳腫瘍の種類
転移性脳腫瘍
発生したがん細胞が、血液によって運ばれて頭蓋内に転移する腫瘍
原発性脳腫瘍
脳内の細胞そのものががん化することで発生する腫瘍
脳腫瘍発症率は、10万人に対して3.5人とされ、患者数は10万人あたり10~15人とも言われます。
なかでも転移性脳腫瘍が15%、原発性脳腫瘍が85%とされています(国立がん研究センター調べ)。
転移性脳腫瘍も原発性脳腫瘍も、周囲の組織との境界が明瞭な場合、外科的な手術によって全摘出が可能な良性腫瘍と、がん細胞が周囲の細胞に広がって境界が不明瞭な悪性腫瘍に分かれます。
脳腫瘍は一般的に予後不良であり、1年生存率は60.5%、2年生存率17%、5年生存率数%と言われています。
脳腫瘍の症状
脳腫瘍の症状は、頭痛・嘔吐・うっ血乳頭です。
頭痛
脳腫瘍の特徴的な頭痛として、早朝に強めの頭痛が頻繁に発生します。
嘔気、嘔吐
早朝に吐き気を感じます。噴射性嘔吐ともいわれ、噴射するように嘔吐します。
うっ血乳頭
頭蓋内圧が亢進し、視神経に浮腫が生じます。左右両目とも耳側の視野が欠け、頭蓋内圧が亢進することで、網膜にある「盲点」の範囲が拡大するマリオット盲点が起こります。
脳腫瘍の治療について
脳腫瘍で一番多く選択される治療法は手術療法で、がん病巣を外科手術により取り除きます。
手術療法は、全摘出・亜全摘出・部分摘出で行われます。
加えて、腫瘍が多発していて手術による摘出が困難であると判断された場合や、画像診断では判別が難しい場合などは、確定診断目的で小さく開頭して腫瘍の一部を取り出すという手術も行われます。
放射線治療
脳腫瘍において、最も優しい治療法とされるのが放射線治療です。
放射線治療は、治療はもちろんのこと、腫瘍の成長を遅らせるためや、腫瘍自体を縮小させるためにも選択されます。
放射線治療はがん細胞に侵されてしまった部位が温存できるというメリットがあります。
がん治療においては局所療法であるため、副作用も少ないことから、体力の弱い人や高齢者にも適応できる治療法なのです。
脳腫瘍の放射線治療
脳腫瘍などの頭部のがんにも、放射線治療が適用されます。脳腫瘍による放射線療法は、以下の2通りが主流です。
標準的放射線治療
X線装置を使用し、1週間あたり数日の治療を、数週間単位で実施します。
定位放射線照射(ガンマナイフやサイバーナイフ)
標準放射線治療よりも細い放射線治療ビームを、腫瘍に集中的に照射していく治療法です。
放射線を小さな範囲に集中させて、1回で大量の放射線を照射します。
定位置放射線治療は、大きさが直径30mm以内の腫瘍に適しています。
適応疾患は良性の腫瘍、転移性脳腫瘍、原発性悪性脳腫瘍、手術困難と判断された脳深部の腫瘍です。
また、合併症や高齢者で手術療法ができない場合や、多発性腫瘍で手術治療が困難な場合などに適用されます。
サイバーナイフ
サイバーナイフは1990年代にアメリカのスタンフォード大学の脳神経外科医であるジョン・アドラー師らによって、脳腫瘍の治療を目的として開発されました。
当初は脳腫瘍のような頭部のがん治療が主体であったサイバーナイフですが、徐々に全身のがん治療に適用されています。
日本でサイバーナイフが適用できるがんは、肺、肝臓、胸椎から仙骨部の脊椎病変や膵臓、前立腺などです。
定位放射線治療装置のサイバーナイフはロボットアームを搭載しており、自由自在な方向から放射線を放射することができます。
サイバーナイフの一番の特徴は、動体追尾システムを搭載していることです。この動体追尾システムのおかげで、患者さんのわずかな動きに合わせて放射線の照射位置を調整することが可能になりました。
放射線治療中に患者さんが動いてしまった場合の修正はもちろん、人間の意思で動きを止めることができない肺などの臓器の動きにも対応可能です。
放射線を1本の細いビームとして照射するサイバーナイフは、「まるで刃物で切り取ったかのようにがんを消滅させる」と言われています。
サイバーナイフは、比較的小さな3センチ以下の小さながんの場合、1週間に4~5回の照射で治療を終わらせることが可能です。
そのため、患者さんは入院する必要もなく、普段の生活を乱すことがないため、QOLを保ちながらがん治療ができるのです。
重粒子線治療
放射線治療の中の重粒子線治療は、がん病巣に集中して放射線を照射することが可能です。
また、がんの周りに重要な臓器、あるいは放射線に弱い組織がある場合、そこを避けて放射線の照射ができるため、ピンポイントでより強力ながん治療法とされています。
重粒子線治療は、脳腫瘍にも効果が期待されています。
まとめ
放射線治療の最新医療機器サイバーナイフは、自動位置計測機能と動体追尾システムで、がんへのピンポイント照射を可能にしました。
脳腫瘍のような頭部のがん治療が負担なく受けられる放射線治療は、高齢者だけでなくみんなに優しいがん治療だと言えるでしょう。
脳腫瘍のために開発されたサイバーナイフですが、今では多くのがん治療に適用範囲が広がり、日本中でがん治療に適用されています。