30代からの女性に知ってほしい乳がんと放射線治療のこと
乳がんの患者数は年々増加しており、日本人女性の11人に1人は乳がんを発症すると言われています。
一方、著名人の乳がん告白により、乳がんは私たちにとって身近な病気となりました。
そこで、乳がんと放射線治療についてと、放射線治療における副作用についてご説明します。
目次
乳がんとは
乳がんとは、乳腺に発生する悪性腫瘍で、放置しておくとがん細胞は増殖し、乳腺の外へ広がります。
さらに乳がんが進行すると、がん細胞は血管やリンパ管へ入って全身を巡り、乳腺以外の組織や臓器へ転移します。
乳がんが乳管内にとどまっている初期の段階では、ほとんどの場合、手術療法や放射線療法など局所治療だけで治療することが可能です。
しかし、乳がんが発見された時点で、がん細胞が血液やリンパの流れにのって他の臓器に転移している可能性がある時は、抗がん剤を使用する治療が選択されることがあります。
抗がん剤の副作用はとてもきつい?
抗がん剤は全身の細胞に作用するようになっており、がん細胞だけでなく正常な細胞にも作用してしまうため、きつい副作用が起きてしまう可能性が高いのです。
抗がん剤の副作用として代表的なものは、吐き気・脱毛・白血球が減少するなどの症状があります。
副作用には個人差がありますが、人によっては動けないほどきつい副作用が出てしまうこともしばしばです。
放射線治療と虚血性心疾患の関係性
放射線治療は、ピンポイントでがん細胞に放射線を照射することができるので、がん治療の中でも副作用が少ない治療法です。
最新の放射線治療装置のサイバーナイフやトモセラピーなどの開発によって、放射線治療は乳がん患者の生存率を大きく向上させました。
しかし放射線治療の副作用として「虚血性心疾患」(IHD)のリスクを高める恐れがあるとも言われています。
虚血性心疾患(IHD)とは
心臓の周りを通る冠動脈が、動脈硬化などによって狭まり閉塞して、心臓の筋肉に血液が通らなくなることで起こる疾患を虚血性心疾患と言います。
近年、乳がん治療中に受ける放射線量が、虚血性心疾患の続発のリスクに影響を与えるということで、各国で研究が進められてきました。
イギリス・オックスフォード大学の臨床試験サービス部門・治験責任者であるSarah C. Darby医師らは、乳がんと放射線治療による虚血性心疾患の関連性を研究してきました。
その結果、放射線治療による心疾患のリスクは、もともと本人の持つリスクと重複するものがあるため、心疾患のリスクが高い患者さんは、放射線治療による虚血性心疾患のリスクも高まると考えられています。
心臓への放射線照射線量
放射線治療における放射線照射技術は、この数十年で大幅に改善されており、最新の医療機器では医療機器の進化とともに放射線のピンポイント照射も可能になっています。
しかし、乳がん治療においての放射線照射によって心臓が被ばくしてしまう可能性があることには変わりありません。
乳がん患者さんの心臓への放射線治療
心臓への放射線量を大幅に減少させるためには、放射線治療中の患者さんの向きを仰向けではなくうつ伏せにする、放射される領域を変更するなどの処置が取られます。
放射線治療に使用されるサイバーナイフについて
サイバーナイフは、がんの放射線治療の最先端として世界中で注目される最新医療機器です。
サイバーナイフは「ラジオサージェリー」とも呼ばれ、ロボットアームでがんを切り取るように消滅させることができる最先端の画像解析技術・産業ロボット技術を応用した高精度の定位放射線治療装置です。
サイバーナイフのピンポイント照射
サイバーナイフは、体にメスを入れることなく、がんなどの病巣だけを多方面から狙って放射線を集中的に照射します。
最大で1200の様々な方向から照射ビームを選択することが可能で、サイバーナイフが登場する以前の放射線治療では難しかった頭蓋底、脊髄、体幹部をはじめ広範な部位に発生した腫瘍に幅広く対応できるようになりました。
サイバーナイフを使った放射線治療は、がんの形状に沿って3D的に正確な照射することが可能になったので、正常な細胞や組織に影響が少なく、痛みも副作用も少ない治療法なのです。
サイバーナイフの自動位置計測機能
サイバーナイフは、天井部分に2ヵ所に設置されたX線の撮影装置と、床に設置された画像検出器の組み合わせでがん細胞の自動位置計測を行っています。
サイバーナイフに搭載されている自動位置計測機能は、巡航ミサイルで使われる自動位置計測装置の技術が応用されているため、がんの位置もより正確に計測することが可能になりました。
サイバーナイフのメリット
サイバーナイフが登場する以前のガンマナイフによる放射線治療では、治療中に患者さんが動かないように頭部を固定しなければなりませんでした。
しかし、サイバーナイフの固定具はメッシュ製の伸びるマスクですので、放射線治療を受ける患者さんの負担は大幅に軽減されたのです。
サイバーナイフの放射線治療では、治療中に患者さんが動いてしまっても、標的の移動が1cm以内であれば自動的に照射点を補正することが可能になりました。
放射線治療を受ける患者さんにとっても、サイバーナイフの登場により、体に負担がなく放射線治療を受けられるようになったのです。
まとめ
乳がんにおいて放射線治療は、心臓への放射線照射が懸念材料でした。
しかし近年はがんの画像診断機器も進化しており、CT画像でがん細胞の位置をより正確に捉えることができるようになってきました。
放射線治療医も、より正確に心臓への放射線量をコントロールする能力を向上させることが大切になっています。