最先端のがん放射線治療機器「サイバーナイフ」が持つ4つの機能
がんの放射線治療の最先端として注目されているサイバーナイフ。
サイバーナイフは、海外では「ラジオサーフェリー」とも呼ばれています。
ラジオサージェリー(Radiosurgery)のラジオとは「放射線」、サージェリーは「外科手術」のこと、直訳すると、ラジオサージェリーは「放射線による外科手術」という意味になります。
がんの放射線治療の救世主とも言えるサイバーナイフについて、詳しく見ていきましょう。
サイバーナイフとは?
サイバーナイフは、ロボットアームでがんを切り取るように消滅させることができる放射線治療のための医療機器です。
サイバーナイフは、産業用ロボットに放射線を照射する小型のリニアック(放射線治療装置)が取り付けられた本体、天井部分のX線撮影装置、床部分の画像検出器、患者さんが寝るためのカウチで成り立っています。
定位置放射線治療
定位置放射線治療とは、身体の周囲の様々な方向から放射線を照射して、がんをピンポイントで照射する治療法です。
がんの形状に沿って、3D的に正確な照射が可能なので、正常な細胞や組織に影響が少なく、痛みも副作用も少ない治療法です。
サイバーナイフは定位置放射線治療ですが、サイバーナイフの前身のガンマナイフも定位置放射線治療でした。
ガンマナイフはもともと脳腫瘍治療のために開発されたものでしたが、頭部以外の全身に使える定位置照射の装置をと考えて開発されたのがサイバーナイフです。
サイバーナイフのメリット
サイバーナイフは、放射線の照射制度も高く、受ける側の固定の苦痛も軽減されました。
ガンマナイフでの治療は、頭部を固定するためにレクセルフレームを頭蓋骨に固定しなければならなかったのですが、フレームの固定は痛みを伴いますし、時間もかかっていました。
さらに身動きも取れず、圧迫感があり苦痛の時間が長かったのです。
しかし、サイバーナイフの固定具は薄いメッシュ性のプラスチックでできたマスクです。
マスクは伸びる素材でできており、ガンマナイフと比べると、苦痛や負担は比較にならないほど小さくなりました。
さらに肺がん、肝臓がん、前立腺がん、乳がんなどの体幹部のがんでは、患者さんのボディにフィットする簡単な補助器具を使って身体を固定すれば良いので、固定マスクも不要です。
患者さんにとっては、サイバーナイフの治療は、放射線治療のハードルをかなり軽減しました。
治療中は、患者さんはなるべく動かないように寝ているだけで、ロボットアームの先につけられた装置から自動的に放射線が照射されて、あっという間に放射線治療が終わります。
ピンポイント照射
サイバーナイフについているロボットアームは、360度、最大で100ヶ所から照射が可能で、それぞれが12方向に照射可能です。
サイバーナイフでの照射時には、放射線の照射ノズルに「コリメーター」と呼ばれる絞り装置をつけ、放射線を5~60mmまでの12のサイズに合わせて細いビームに絞り込んで照射します。
コリメーターは、ターゲットとなるがんの大きさに合わせて使い分けますが、使い分けもロボットアームが自動的にピックアップします。
ロボットアームが搭載されているサイバーナイフは、進歩したロボット工学とコンピューター制御の二つの技術を活用して、がん治療の未来を大きく変えていっているのです。
多方向からの照射
ロボットアームが搭載されているサイバーナイフは、自由自在に多方向からがん細胞に向かって放射線を照射することができます。
サイバーナイフは、ピンポイントでがん細胞だけを狙って照射することができるので、周囲の正常な細胞や組織を放射線のダメージから守ってくれます。
これは、多方向から放射線を照射できるサイバーナイフのとても大きなメリットなのです。
自動位置計測機能
サイバーナイフには「自動位置計測機能」が搭載されています。
がんに放射線を正確にピンポイント照射するには、ターゲットとなるがんの位置をきちんと確認する必要があります。
天井の左右2ヵ所に設置されたX線の撮影装置と、床に設置された画像検出器の組み合わせで自動位置計測を行い、画像検出器を通じて位置データとしてコンピューターに認識されていきます。
がんのある場所を正確に測定するために、サイバーナイフが独自に作用している自動位置計測機能は、巡航ミサイルで使われる自動位置計測装置の技術が応用されているためとても精度が高いです。
動体追尾機能
私たちの臓器は呼吸で動くものも多いです。がんも呼吸で動くため、これまでの放射線治療の際には、呼吸で動く範囲に放射線を照射していました。
そこで、サイバーナイフに動体追尾機能がついて、呼吸の動きに合わせてロボットアームは精密に動き、がんだけをピンポイントで狙い撃ちできるようになりました。
動体追尾照射の誤差は、1㎜以内と言われているので、正常な細胞への放射線を照射するリスク抑えられます。
サイバーナイフを使用すると、放射線治療についての副作用のリスクは大幅に低下しました。
LEDを患者さんの身体の表面に設置し、LEDの動きをカメラで読み取り呼吸波形を検知、治療前の画像、そして天井にある2台のX線撮影装置を連動させながら、治療中の呼吸振幅やリズムの変化にもリアルタイムに対応出来るのがサイバーナイフです。
動体追尾照射での誤差は1㎜以内と言われています。
このおかげで、正常細胞への放射線照射を抑えられ、サイバーナイフの副作用のリスクは従来機に比べて大幅に低下しました。
まとめ
サイバーナイフが放射線治療に使われるようになり、これまでの放射線装置に比べて、患者さんへの負担はより軽くなりました。
サイバーナイフの登場は、がんの放射線治療に対しての適応範囲も広がり、がん治療の未来を大きく変えることになったのです。