標準治療と先端医療の違いとは?分かりやすく解説

がん治療のセカンドオピニオンNIDCのサイトメニュー

251

標準治療と先端医療の違いとは?分かりやすく解説

標準治療と先端医療の違いとは?分かりやすく解説

がんであると診断されたとき、「どのような治療方法があるのか」「標準治療と先端医療のどちらがよいのか」などのお悩みを持つ人がいらっしゃることでしょう。今回はがん治療における標準治療と先端医療について、以下の内容をわかりやすく解説します。

  • 標準治療と先端医療の違い
  • 標準治療と先端医療における治療方法
  • 標準治療と先端医療を選ぶときのポイント

納得できるがん治療を受けるために、最後までチェックして参考にしてください。

標準治療と先端医療の基本的な違いとは?

標準治療と先端医療の基本的な違いとは?

がんの治療には、大きく分けて標準治療と先端医療があります。それぞれどのような特徴があるのか見ていきましょう。

標準治療とは

標準治療は、現時点でおこなうことができるもっとも信頼された治療です。大多数の人を対象とした研究・検証において、標準治療は科学的に効果が認められ、安全性も許容範囲内であるため、優先しておこなうよう推奨されています。大半の患者さんに効果が期待できる治療方法であるため、標準治療には健康保険が適用されます。

主ながんの標準治療は、手術・放射線治療・薬物療法の3つです。治療効果を高めるために、それぞれを単独でおこなったり、組み合わせておこなったりすることがあります。

がんの種類やステージによって、標準治療は定められています。年齢や全身状態に合わせて総合的に判断して、患者さん一人ひとりに適した治療を選択するのです。

先端医療とは

先端医療には、厚生労働大臣が認定している「先進医療」と、それ以外の「自由診療」で受けられるものがあります。

「先進医療」は、大学病院など特定の医療機関で開発・研究している高度な医療技術を用いた治療方法で、健康保険の適用になっていないものです。先進医療は、将来的に保険適用にするかどうか検討されている段階で、厚生労働大臣によって認定されています。

先進医療をおこなえる医療機関には基準があり、認可された医療機関にて先進医療による治療を受けられます。現段階で先進医療は保険適用されていませんが、一定の効果と安全性が認められているため、保険診療と併用しておこなうことができるのです。

「自由診療」は、一部の研究などで有効性が報告されている医療技術です。なかには開発途中であったり試験的であったりするものが含まれています。

自由診療でおこなう治療方法の有効性や安全性については、提供している医療機関が判断しています。自由診療は、診療代・検査費用・治療費のすべてが保険適用できないため、全額自己負担になります。

標準治療と先端医療の治療法

標準治療と先端医療の治療法

標準治療と先端医療では、それぞれどのような治療方法があるのでしょうか。がんの治療について具体的な方法をわかりやすく解説します。

「標準治療」の具体的な治療法

標準治療は、がんの種類とステージによって推奨する治療方法が定められています。がんの3大治療は、手術・放射線治療・薬物療法です。ひとつずつ確認しましょう。

手術

手術は、がんの発生している組織やリンパ節を切り取る方法です。手術では、がんをすべて取り除いて根本的な治癒をめざすのが目的になります。

がんが発生した場所にとどまっているケースでは、治療成績の高い方法です。全身状態によっては、根本的な治癒は難しくても、がんによる症状をやわらげるために手術をおこなうことがあります。

手術の技術は年々進歩しているものの、合併症に注意が必要です。手術の合併症には、感染症や臓器の機能低下などが挙げられます。手術による傷やストレスにより、体の回復に時間がかかることもあります。

放射線治療

放射線治療は、がんのある組織に放射線を当てて、がんを小さくしたり死滅させたりする方法です。がんの発生した場所や全身状態によって手術ができない場合に、根本的な治癒を目指す目的でおこなわれるケースと、がんによる痛みや出血の症状をやわらげるためにおこなわれるケースがあります。放射線治療は単独でおこなうこともありますが、手術や薬物治療と併用することも多いです。

放射線治療では、正常な組織にも放射線の影響があるため、副作用が現れます。副作用は、だるさ・食欲低下・皮膚の赤みなど治療後まもなく現れるものと、放射線肺炎や心膜炎など治療後数ヶ月以上経ってから現れるものがあります。

薬物療法

薬物療法は、がん細胞が増えるのを抑えて、がんの進行を遅らせたり、転移・再発を防いだりする治療です。がんが発生した場所から広がり、手術や放射線治療が難しいときに選択されます。手術や放射線治療の効果を高めるために、薬物療法を併用することもあるのです。

薬物療法で使う薬剤には、細胞障害性抗がん剤・ホルモン剤・分子標的薬などがあります。副作用は使用する薬剤によって異なり、主な副作用は以下の症状があります。

  • 細胞障害性抗がん剤:吐き気・嘔吐、食欲不振、口内炎、脱毛、骨髄抑制、肝臓・腎臓の機能低下
  • ホルモン剤:ほてり、更年期様症状、不正出血、女性化乳房、性機能低下
  • 分子標的薬:高血圧、粘膜出血、間質性肺炎

「先端医療」の具体的な治療法

先端医療において、がん治療に使われるのは陽子線治療・遺伝子治療・免疫療法です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

陽子線治療

陽子線治療は、厚生労働大臣に認定された「先進医療A」のひとつで、一部のがんでは保険適用されています。陽子線治療は、陽子線という放射線を病変部分にあてて、がんを小さくしたり減らしたりする治療です。

陽子線には、一定の深さに達したところで大半のエネルギーを放って止まる性質と、一度止まった場所から奥には通り抜けない性質があります。そのため、照射方法を調節することで、がん病変だけを狙って高エネルギーの陽子線をあてることができるのです。陽子線治療は、X線による放射線治療と異なり、放射線によるダメージを与えたくない重要な臓器(心臓・肺・脳など)への副作用が少なくなっています。

遺伝子治療

自由診療でおこなわれる「がん遺伝子治療」は、がんの発生を抑えるタンパク質をターゲットにした治療です。保険適用されている「がん遺伝子パネル検査」とはまったく異なります。自由診療でおこなわれているのは、「がん抑制遺伝子」と呼ばれる、がんの発生を抑えるタンパク質を作る遺伝子を点滴や注射で体内に導入する方法です。

がんが増えるのを抑えたり、再発を予防したりする効果が期待されていますが、国内未承認の治療方法になります。現時点では研究段階であるため、有効性や安全性が確立されていません。治療費は、診療代・検査代・薬代を含めて全額自己負担となり、高額になる可能性があります。

免疫療法

自由診療でおこなわれる免疫療法のひとつに「免疫細胞療法」があります。患者さんの血液からリンパ球などの免疫細胞を取り出し、体の外で増殖させたり活性化させたりしてから、点滴や注射で体に戻す方法です。保険適用されている免疫チェックポイント阻害薬とは異なります。

免疫細胞療法では、患者さん本人の免疫細胞を利用するため、副作用が少ないと言われています。国内未承認の新しい治療方法であるため、治療実績はまだ十分揃っていません。免疫細胞療法の治療費もすべて自己負担になるため、高額になる傾向があります。

標準治療と先端医療の選ぶポイント

標準治療と先端医療の選ぶポイント

標準治療と先端医療を選ぶときに、どのような点に着目するべきか、ポイントを確認していきましょう。

標準治療

「標準」と聞くと、中くらいのレベルというイメージを持つ人がいらっしゃるかもしれません。しかし標準治療は、科学的根拠に基づいて明らかな効果が認められた、現時点でもっとも信頼できる治療方法です。

がんの種類やステージによって、有効性と安全性のバランスがとれた最適な治療方法が設定されています。日本では、標準治療に対して健康保険が適用されているため、健康保険に加入していれば平等に治療が受けられます。

先端医療

先端医療では、先進医療と自由診療で着目する点が異なります。

先進医療

先進医療を検討するのは、がんのステージが進行して標準治療の範囲で改善が見込めない場合や、治療方法が確立されていない希少がんである場合などです。先進医療の治療は、効果と安全性がある程度認められ、将来的に保険適用される可能性のある先端の技術を使います。先進医療は、厚生労働大臣が健康保険との併用を認めているため、先進医療の実施料は自己負担になりますが、診療代・検査代などは保険適用されます。

自由診療

自由診療による治療は、標準治療や先進医療で改善が見られなかったり体質に合わなかったりするなどのケースで検討されます。自由診療は、研究開発中の医療技術を使った新しい方法で治療をおこないます。健康保険の利用はできませんが、治療の選択肢が増えるため、自分に合った治療を受けられる可能性があります。

標準治療と先端医療の問題点とは

標準治療と先端医療の問題点とは

標準治療と先端医療をおこなう上で、デメリットや注意点について確認しましょう。

標準治療のデメリット

標準治療であっても、年齢や全身状態次第では、優先される治療が受けられないことがあります。たとえば、がんの手術により体力が大きく損なわれることが考えられる高齢者では、手術が第一選択であっても放射線治療や薬物療法などに切り替えることがあるのです。

健康保険内で治療を受けたい場合、標準治療ではできることが限られる可能性があります。がんの標準治療では、治療できる条件が細かく決められています。希望する治療方法があっても、条件に合わないときは標準治療が受けられないことがあるのです。

先端医療のデメリット

先端医療のデメリットについて、先進医療と自由診療にわけて確認しましょう。

先進医療

先進医療は、厚生労働大臣に認められた先端の医療技術を使った治療ですが、先進医療の種類ごとに適用できる条件が定められています。また先進医療は実施できる医療機関が限られています。日本国内で、陽子線治療がおこなえる医療機関は19ヶ所、重粒子線治療がおこなえる医療機関は7ヶ所です(2024年1月時点)。

先進医療の治療を受ける場合、診察料や検査費用は保険適用されますが、先進医療の技術料は自己負担になるため、標準治療と比べると治療費が高額になります。

自由診療

自由診療による治療方法は、国内未承認であるため、有効性や安全性について確立されたデータがありません。治療をおこなうかどうかは、実施する医療機関の判断に委ねられます。

どのくらいの効果が見込めるか、ほかの治療と併用しても差し支えないかなど、実施する医療機関で十分な説明を受けるようにしましょう。公平な判断をするための方法として、セカンドオピニオン制度の利用も有効です。自由診療は患者さんの希望で治療を受けられますが、診療代・検査費用・治療薬などすべてが全額自己負担となり、かなり高額になる傾向があります。

標準治療と先端医療における費用の違い

標準治療と先端医療における費用の違い

標準治療と先端医療では、治療費にどのくらいの違いがあるか見ていきましょう。

標準治療の費用

標準治療は、診療代・検査費用・薬代などすべて健康保険が利用できます。高額療養費制度を利用すると、実際の支払額がさらに抑えられます。2022年における、がん部位別の1入院あたりの平均費用は以下のとおりです。

治療費総額3割負担の場合
胃がん996,965円約30万円
直腸がん1,150,026円約35万円
肺がん913,065円約27万円

(参考:全日本病院協会 2022年度医療費(重症度別・急性期グループ)

先進医療の費用

先進医療における費用は、照射部位や回数にかかわらず一律となっており、陽子線治療の照射技術料は約280~300万円、重粒子線の照射技術料は約314万円です。先進医療の照射技術料は全額自己負担となりますが、保険外併用療養費制度が認められているため、診察料・検査費用・薬代などは健康保険が利用できます。また民間医療保険にて先進医療特約をつけている場合は、先進医療の技術料と同額を補償してもらえます。

自由診療の費用

自由診療では、診察料・検査費用・薬代などすべてが自己負担となります。民間医療保険の先進医療特約は利用できません。がんの自由診療でおこなわれる免疫細胞療法とがん遺伝子治療の費用相場は以下のとおりです。

  • 免疫細胞療法:1クール約180万円~400万円
  • がん遺伝子治療:1クール約100万円〜300万円

まとめ

がんの治療は標準治療と先端医療に大別されます

がんの治療は標準治療と先端医療に大別され、さらに先端医療は先進医療と自由診療にわけられます。標準治療は、科学的根拠に基づいて有効性と安全性が認められた治療方法で、健康保険が適用されるため、ほかの治療より優先的におこなわれています。

先進医療は、一定の有効性と安全性が確認されており、将来的に健康保険適用される可能性のある治療方法です。自由診療は、一部の研究で効果が確認されている開発中の新しい医療技術が多く使われています。

標準治療以外の治療では、有効性や安全性が確立されていなかったり、費用が高額になったりすることがあります。先進医療や自由診療を希望する場合は、十分理解できるまで医師から説明を受けることが大切です。自分が受けるがん治療に対して、第三者の公平な意見を聞きたいときは、セカンドオピニオン制度を活用しましょう。

がん治療一覧へ