膀胱がんとは?ステージ別の症状や治療法など解説

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膀胱がんとは?ステージ別の症状や治療法など解説

膀胱がんとは?ステージ別の症状や治療法など解説

膀胱がんは、尿をためる臓器である膀胱にできるがんの総称です。初期症状で多いものは血尿で、膀胱炎などの尿路感染症と同じような症状であることも多く、早期発見・早期治療が望まれる疾患です。この記事では、膀胱がんの概要とステージ別の症状や治療法を解説します。

膀胱がんとは

膀胱がんとは

膀胱がんは、大部分は膀胱内部の尿路上皮から発生するため尿路上皮がんとも呼ばれます。尿路上皮がんは膀胱がんの約90%以上を占めており、がんの深さに応じて、筋層非浸潤性がんと筋層浸潤性がんに分類されます。膀胱は骨盤の中に位置し、尿をためる組織です。

腎臓で生成された尿は尿路を通って膀胱から尿道を通って排泄されます。尿の通り道である尿道は、主に尿路上皮という粘膜で被われています。つまり、私たちの尿をためる膀胱に生じたがんが膀胱がんです。

次に、膀胱がんの原因や膀胱がんの統計を説明します。

膀胱がんの原因

膀胱がんの原因のうち、喫煙は最も大きな危険因子であり、おおよそ半数の膀胱がんの原因と考えられています。研究によると、喫煙者は禁煙者と比べて罹患リスクが2.58倍高いとされています。

特に現在喫煙していると、リスクが3.47倍に上昇し、以前喫煙していた時と比べて2.04倍よりも高くなることが分かっています。また、一部の染料や化学薬品、ウイルス感染にも発癌作用があると考えられています。

膀胱がんの統計

膀胱がんは95%が45歳以上で罹患します。男性の方が女性に比べて約4倍発生しやすいです。過去15年間の推移では、罹患率と死亡率が増加していますが、全体人口が高齢化したため増加傾向にあり、年齢で調整するとほぼ横ばいです。

膀胱がんのステージ(病期)

膀胱がんのステージ(病期)

出典:国立がん研究センターがん情報サービス

膀胱がんのステージ(病期)は、TNMという3つのカテゴリーの組み合わせで決まります。

Tカテゴリー:がんの深達度
Nカテゴリー:骨盤内のリンパ節への転移の有無や程度
Mカテゴリー:がんができた場所から離れた臓器やリンパ節への転移の有無

深達度と転移の有無について、以下の表のように分類されます。

深達度と転移の有無について

出典:国立がん研究センターがん情報サービス

膀胱がんの深達度

ここでは、がんの深さで分類するT分類について詳しく見ていきましょう。T分類は、Ta~T4bまでの7段階になっています。

膀胱がんの深達度
膀胱がんの深達度

Ta

Taは、乳頭状非浸潤がんといい、粘膜内から膀胱内に盛り上がった形状のがんです。Tisは上皮内がん(CIS)ステージの1つで、粘膜上皮内に広がるがんです。T1は、膀胱内〜上皮下結合組織まで広がった膀胱がんを指します。

T2

T2はT2aとT2bの2種類に分けられます。T2aは、筋層の内側1/2に以内であり、1/2以上になるとT2bとなります。

T3

T3は膀胱壁を越え、膀胱周囲の脂肪組織に広がったがんです。T3aとT3bに分けられますが、T3aは顕微鏡で確認できる程度、T3bは肉眼で確認できる膀胱外の腫瘍です。

T4

T4は、膀胱外側までガンが及び、他臓器へと広がりを見せた状態です。T4には前立腺や精嚢・子宮や膣といった生殖器に広がるT4aと、骨盤壁や腹壁に広がるT4bがあります。

Ta〜T1は筋層非浸潤性がんで、T2〜T4は筋層浸潤性がんです。このステージと進行具合により、治療方法が異なります。

膀胱がんの症状

膀胱がんの症状

膀胱がんの主な症状は、排尿関係の症状です。具体的には、血尿・頻尿や排尿時の痛みがあります。特に多いのは、痛みがなくても尿に血液が混ざる無症状性肉眼的血尿です。

がんが進行すると、尿の排出が難しくなったり排尿系の痛み以外に、脇腹や腰・背中の痛みや、足のむくみが生じたりします。

初期症状は膀胱炎と似ていることもあり、そのうち治るだろうと放置してしまい発見が遅れるケースもあります。気になる症状が出た場合は早めに泌尿器科を受診しましょう。

ステージ別の膀胱がんの治療方法

膀胱がんのステージは、TURBT(軽尿道的膀胱腫瘍切除術)で診断し治療法を決めます。TURBTとは、内視鏡を尿道から膀胱内に挿入し、がんを電気メスで切除して検査する方法です。治療方法は、ステージ別に以下のような方法があります。

  • 筋層非浸潤性がんの場合
  • 筋層浸潤性がんの場合
  • 放射線療法
  • 尿路変向術

膀胱がんの治療方法は進行度合いにより0期〜Ⅳ期まであり、それぞれを分かりやすく解説します。

筋層非浸潤性がんの場合

筋層非浸潤性がんの場合
筋層非浸潤性膀胱がん(0期・Ⅰ期)の治療の選択

出典:国立がん研究センターがん情報サービス

筋層非浸潤性がんの場合、初期段階の0期〜Ⅰ期ではリスクは4分類です。低リスクの場合、手術後膀胱内に抗がん剤の短回投与が一般的です。中リスクの場合は、膀胱内に抗がん剤を短回投与または複数回投与することがありますが、場合によってはBCGを複数回投与します。

高リスクの上皮内がん以外の病態の治療は、BCGを複数回投与します。場合によってはTURBTで再検査を行い、結果に応じて膀胱全摘出や臨床試験対応です。上皮内がんの高リスクでは、BCGを複数回投与します。

超高リスクの場合は、TURBTで再検査を行い、患者の状況をみて膀胱を全摘出したり、臨床試験を行ったりします。

筋層浸潤性がんの場合

筋層浸潤性膀胱がん(Ⅱ期・Ⅲ期・Ⅳ期)の治療の選択
筋層浸潤性膀胱がん(Ⅱ期・Ⅲ期・Ⅳ期)の治療の選択

出典:国立がん研究センターがん情報サービス

筋層浸潤性がんの場合、TURBT診断後、II期・Ⅲ期の治療方法は、膀胱全摘除術です。この時、補助薬物療法と言い、手術前後に抗がん剤の投与が行われる場合があります。

Ⅳ期は抗がん剤治療を行いますが、効果がない場合・再発した場合は、免疫チェックポイント阻害薬を使用し、抗がん剤とは別角度からアプローチします。

なお、免疫チェックポイント阻害薬とは、免疫ががん細胞を攻撃する力を助ける薬です。

放射線療法

放射線治療は、放射線を利用し、がんを縮小させる治療方法です。膀胱がんにおいて一般的ではありませんが、筋層浸潤性膀胱がんの場合や、膀胱の温存を望む場合、または全身状態などから膀胱全摘除術が難しい場合に検討されます。

TURBTや薬物療法と組み合わせた集学的治療の一環として採用され、がんが進行した結果膀胱の出血や、骨転移による痛みなどの症状を和らげるために、放射線治療が行われることもあります。

尿路変向術

尿路変向(変更)術は、膀胱摘出した時に尿を排泄するための通り道をつくる方法です。尿路変向(変更)術には、主に3つの方法があります。

回腸導管造設術:一般的に広く行われている方法で、小腸の一部と左右の尿管をつなぎ、腹壁に固定して排尿させます。その際に膀胱の代わりになるストーマ(採尿袋)をつけます。

自己排尿型新膀胱造設術:小腸や大腸の一部を切り、つなぎあわせて新しく膀胱を作り、左右の尿管と尿道に取り付けます。膀胱を新しく作るため、ストーマの装着は不要です。このやり方は排尿にコツがいるのと、手術による体への負担が大きいなどの理由から選択できる方が限られます。

尿管皮膚ろう造設術:尿管を直接腹壁に固定し、尿の出口とします。尿をためるためのストーマの装着が必要です。短時間の手術で済むため、高齢者や合併症のリスクがある方に選択されます。

それぞれの方法には上記のような特徴があります。なお、手術後は変更後の尿路を生涯使用します。このため、がんの位置や全身の状態、生活状況などをよくヒアリングしてから決めます。

膀胱がんの検査方法

膀胱がんの検査方法

膀胱がんの検査方法には、超音波(エコー)検査、膀胱鏡検査(内視鏡検査)、CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィ、TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)などがあります。

このうち、正確な病理診断ができるもので、ほぼ全ての膀胱がん治療で行われるのが、TURBT(軽尿道的膀胱腫瘍切除術)です。手術前に全身麻酔や腰椎麻酔をしてから、内視鏡を尿道から膀胱に入れ、電気メスでがんを切除します。

切除して取り出したがんを顕微鏡で調べ、Ta〜T4で示されるがんの深さや性質などについて正確な病理診断を行うことが可能です。この検査は、ほぼすべての膀胱がんに対して実施され、場合により複数回行います。

また、上皮内がん(CIS)の合併が疑われる時は、正常に見える膀胱上皮を数カ所採取し、検査をします。
TURBTは、非浸潤性膀胱がんで、がんを切除する治療方法としても用いられます。

膀胱がんの検査と確定診断までの流れ
膀胱がんの検査と確定診断までの流れ

出典:認定NPO法人キャンサーネットジャパン

膀胱がんの検査項目は、血尿が出た場合・尿検査の結果血尿が分かった場合と膀胱の刺激症状があり、膀胱炎などではなかった場合の3種類に分けられます。そして、検査は、血尿がでた場合とそれ以外の場合の2通りがあります。

  • 血尿が出た場合:膀胱鏡検査・CT検査や骨盤部MRI検査を行います。その後、TURBT(軽尿道的膀胱腫瘍切除術)にて確定診断を行います。
  • 尿検査の結果、血尿が分かった場合と膀胱の刺激状態(膀胱炎などではない):尿細胞診・超音波検査やCT検査をします。結果を見ながら膀胱鏡検査を行い、必要に応じて骨盤部MRI検査をします。そして、TURBTによる確定診断を行います。

確定診断後は胸腹部CT検査や骨シンチグラフィーを利用して、膀胱がんの広がりを調べます。骨シンチグラフィーや場合により全身CT検査を行うと、がんのリンパ節や他の臓器への転移があるかどうかが分かります。

膀胱がんの治療費

膀胱がんの治療費

膀胱がんの治療費は、切除する場合において金額の目安があります。病院ごとによって大きく異なりますが、4〜7日間の入院で約15万円ほどになります。

この金額は、保険適用時1割負担〜3割負担の目安であり、その他の治療方法を行なった場合、入院施設によって金額が大きく変動します。あくまで、切除し、上記の日数入院した場合の目安として情報を役立ててください。

膀胱がんの生存率

膀胱がんの生存率は、以下の3つのパターンにて統計データが発表されています。

  • 膀胱全摘除術
  • 膀胱温存治療
  • 転移を有する膀胱がん

5年生存率は、初期段階ほど高いというデータが出ており、早期発見・早期治療が大切であると言えます。

それぞれのパターンについて順に解説します。

膀胱全摘除術

膀胱全摘出術後生存率
膀胱全摘出術後生存率

出典:千葉大学大学院医学研究院

膀胱全摘除術では、筋層までの浸潤の病態で、5年生存率は約75〜80%です。筋層を超える浸潤では約41%〜49%です。1つでもリンパ節転移があると、5年生存率は約35%〜40%です。

なお、局所進行性の膀胱がんの約16%は転移を有しています。例えば、千葉大学大学院医学研究院泌尿器学科では、手術と化学療法を組み合わせて、50%生存率の改善が見られました。

膀胱温存治療

膀胱温存治療
膀胱温存治療

出典:千葉大学大学院医学研究院

膀胱温存治療の5年生存率は、左のグラフで、約90%です。このデータは、化学療法と放射線療法を組み合わせています。再発率は、右のグラフで、53.1%です。このため、治療の継続が大切です。

転移を有する膀胱がん

転移を有する膀胱がん

出典:千葉大学大学院医学研究院

転移がある膀胱がんでは、グラフ上、生存率は向上しています。50%生存率は24.9ヶ月です。化学療法の他に、尿路変更など、他の方法が考えられるようです。

まとめ

膀胱がんは、尿をためる膀胱にできるがんの総称です。がんの深さにより、Ta〜T4まで7段階の分類があります。膀胱がんの確定診断には、TURBT(軽尿道的膀胱腫瘍切除術)が用いられ、治療の一部にもなります。

膀胱がんの初期症状は、血尿など膀胱炎などの感染症と似ていることもあり、早期の病院受診につながらないことが多いです。膀胱がんの発見が遅れることのないよう、自己判断せず泌尿器科で検査を受けるようにしましょう。

膀胱がんの治療内容はがんのステージや進行度合いにより多様化しており、主治医以外の意見を聞きたいときは、セカンドオピニオンの活用も有効です。この記事を膀胱がんの疑問解消に役立ててください。

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