乳がん検診とは?費用ややり方など解説

がん治療のセカンドオピニオンNIDCのサイトメニュー

286

乳がん検診とは?費用ややり方など解説

乳がん検診とは?費用ややり方など解説

乳がん検診の目的とは

乳がん検診を受けるかどうか、悩んだことはありますか?定期的に受けたほうが良いとわかってはいるものの、時間がない、痛みが心配、恥ずかしいなどの理由で、乳がん検診を躊躇してしまう方は少なくありません。

しかし、乳がんを疑う症状が出ていなくても、検診を受けることで得られるメリットがあります。まずは乳がん検診の目的と必要性について解説します。

乳がん検診で早期発見を目指す

乳がん検診の主な目的は、乳がんの早期発見です。乳がんは、初期には自覚症状があまり出ません。そのため、自覚症状が出て気がつくまで待っていては、進行してしまいます。

乳がんは、早期に発見して治療を開始するほど、治療成績の良いがんとされています。とくに、ステージIIまでの段階であれば、10年生存率は90%程度になります。乳がん検診を定期的に受診することで早い段階で見つけることが可能になるのです。

ステージ0ステージIステージIIステージIIIステージVI
5年生存率100%99%95%76%37%
10年生存率100%99%90%68%19%

乳がんは女性に1番多いがん

国が乳がん検診をすすめている主な理由は、女性にとって最も罹患数の多いがんだからです。

毎年約10万人の方が、新たに乳がんと診断されています。日本人では、11人に1人が乳がんになり、がんによって亡くなる方の人数として乳がんは第5位となっています。35〜40歳頃を境に乳がんの罹患率は急激に高まるため、40歳になったら2年に1度の乳がん検診が推奨されています。

1個の乳がん細胞ができてから、1cmほどの大きさになるまでには、10年近くもかかります。一方で、1cmから2cmへと大きくなるまでには1.2年しかかかりません。2cmを超えてくると、大きくなるスピードもさらに早くなります。

2cmまでの乳がんは「早期がん」と分類されますが、触ってもわからないことが多いです。やはり乳がん検診でしっかりと見つけることが近道といえます。2年おきに乳がん検診を受けていれば、早期がんのうちに見つかる可能性を高めることができるでしょう。

また、乳がんに関するさまざまな研究から、「乳がんになりやすい」要因がいくつかわかっています。

初潮が早い、閉経が遅い、出産歴がない

乳がんにはエストロゲン(女性ホルモンの一種)が関わるため、生理の回数が多いほどリスクが高いとされています。

閉経後の肥満

閉経後は、脂肪組織からエストロゲンが分泌されるようになります。そのため、閉経後に肥満の方はエストロゲン分泌量が増えて、乳がんのリスクが高まります。

アルコールやタバコ

乳がんに限りませんが、さまざまな病気の原因になるので、適度に嗜む程度にすることを心がけましょう。

遺伝的な要因

乳がん全体の5〜10%ほどは遺伝的な要因で発症しています。家族や血縁者にがんになった人がいる場合には注意してください。

乳がん検診の検査内容

乳がん検診では、超音波検査、ABUS(乳房自動超音波)やマンモグラフィなどの機器を使って検査をおこないます。

問診

問診では、以下のような内容について聞かれます。わかる範囲で思い出しておくとスムーズでしょう。

  • 乳がん検診を受けたことがあるか
  • 現在、しこりなど気になる症状はあるか
  • 親族に乳がんの方はいるか
  • 初潮、閉経の年齢
  • 出産、授乳の経験
  • 喫煙歴
  • 経口避妊薬(ピル)を長期間服用していたことがあるか

マンモグラフィ(乳房X線検査)

乳がん検診のメインであるマンモグラフィとは、乳房を撮影する専用のレントゲン装置のことです。乳房を板で挟み、薄く伸ばした状態で撮影します。

マンモグラフィ(乳房X線検査)

薄く伸ばすことで、乳腺の重なりが少なくなり、しこりがある場合にその形などが観察しやすくなります。また、被ばく量も抑えることが可能です。マンモグラフィでは、まだしこりになっていない、1mm程度の「非浸潤がん」と呼ばれる状態も見つけることができます。がんを早期に見つけるために、とても重要な検査です。

見逃しがないよう、乳房を縦方向と横方向の2パターンで撮影しますので、両胸で合計4回撮影することになります。(50歳以上では、1方向だけの撮影とする場合もあります。)少し痛みを伴う場合もありますが、撮影時間は5〜10分ほどと短時間ですので、ご協力ください。

<マンモグラフィができない方>

  • 妊娠中、授乳中の方
  • 豊胸手術をされた方

<ご相談が必要な方>

ペースメーカなどの医療機器を胸に装着している方

撮影時の圧迫で機器の位置がずれたり、リード線に支障が出たりする可能性があるので、事前にお申し出ください。

1年以内に胸部の手術をされた方

状態を確認し、マンモグラフィができるかどうか判断します。

生理前〜生理中の方

生理に伴い胸が張る方は、マンモグラフィの検査で痛みを強く感じる場合があります。生理前や生理中でも乳がん検診をおこなうことはできますが、心配であれば事前に各医療機関へご確認・ご相談ください。生理が終わって1〜2週間後の時期は乳房がやわらかくなるため、痛みが少ないかもしれません。

乳がん検診にかかる費用

乳がん検診の費用は、受ける手段によって異なります。

乳がん検診にかかる費用

自治体の検診なら無料~3,000円程度

40歳以上の方ならどなたでも、2年に1度、自治体の乳がん検診を受けられます。費用は自治体によって異なりますが、無料〜3000円程度です。「費用が心配」という方も安心して乳がん検診を受けてください。

基本的には、偶数年齢(40歳、42歳、44歳…)の年に検診をお受けいただきます。自治体からクーポンやはがきが送付されることが多いですが、それらがない・失くしてしまった場合でも乳がん検診を受けることが可能です。

乳がん検診についての問い合わせ先は、こちらからお住まいの自治体をご確認ください。

職場検診で数千円程度

職場検診を利用して乳がん検診を受ける選択肢もあります。ご自身のお勤め先(専業主婦のかたはご主人のお勤め先)の健康保険組合の制度を確認してみましょう。

費用は組合によって異なりますが、自治体での乳がん検診と同様に無料〜数千円程度のことが多いようです。

全額自費で20,000円〜60,000円程度

人間ドックなどをおこなう際に、希望すると乳がん検診も受けられます。この場合は全額自費になるため、ほかの検診に比べると費用がかかります。

マンモグラフィは10,000〜30,000円ほど、超音波検査は4,000円ほどです。最新のABUS(乳房自動超音波)になると30,000円ほどの費用がかかる場合もあります。

このほかに初診料や診察料などが加わり、20,000円〜60,000円程度になると考えられます。

症状があっての検査は保険適用になる

乳房がでこぼこしている、乳頭から分泌物が出ているなど、何か症状があって乳がん検診を受けたいという場合には、保険適用となります。

保険適用となった場合の費用は、検査の内容にもよりますが7,000円〜20,000円程度です。通常の乳がん検診の内容に加えて、「生検」といって、がんかもしれない部分の組織を採取しておこなう検査や、血液検査などを追加した場合にはさらに費用がかかります。

乳がん検診の流れ

乳がん検診は、以下のような流れでおこなわれます。

①受付、問診票の記入

問診票の記入は、事前にお願いされる場合もあります。乳がん検診を受ける医療機関の指示を確認してください。

乳がん検診の流れ①受付、問診票の記入

②着替え

マンモグラフィなどの検査をおこないやすいよう、上半身の着替えをおこないます。

ワンピースのような上下が一緒になっている服は避け、上下が分かれた脱ぎ着しやすいものを着ていきましょう。ピアス・ネックレスは、検査のときには外します。

乳がん検診を受ける医療機関によっては、肩からかけて胸をおおうためのバスタオルの持参を求められる場合もありますので、持ち物を確認しましょう。

③問診、視触診

問診票を参考に、問診をおこないます。視触診(目で観察したり、手で触れたりして乳がんがないか確認する検査)は、おこなわない場合もあります。

④マンモグラフィ検査

マンモグラフィ検査は、5〜10分程度で終わります。中には、乳腺濃度が高く、マンモグラフィでがんを見つけにくい方もいます。そういった場合には、超音波検査の併用をおすすめされるかもしれません。

乳腺濃度は、一般的に若い方で高く、年齢を重ねるごとに低くなりますが、日本人は欧米の方と比較すると全体的に乳腺濃度が高い傾向にあります。

⑤後日、結果説明

乳がん検診の結果は2週間程度で出るので、説明を受け、問題なければまた定期的に乳がん検診を受けましょう。問題があれば、細胞診などの精密検査ができる施設へご紹介となります。

乳がんの自覚症状について

乳がん検診を受けようとお考えの方の中には、何か気になる症状があるという方もいるでしょう。ここでは、乳がんの代表的な自覚症状をご紹介します。思い当たる症状がある方は、乳がん検診をご検討ください。

乳房のしこり

「乳がんかも」と不安に思う症状で最も多いのは、乳房のしこりです。実際、乳がん検診を受ける方の多くがしこりを気にして来院しています。

「硬い・触っても動かない・痛みがない」という特徴のあるしこりは、乳がんかもしれません。ただし、乳がん以外にもしこりを感じる疾患はいくつかあります。いかに代表的なものをいくつかご紹介しますので、ご自身の症状と比較してみてください。

乳腺線維腺腫

10歳代〜40歳代によくみられる、良性の腫瘍です。コロコロとして、触ると動きます。乳がんに変化することもないため、とくに治療は必要ありません。

乳腺炎

乳汁の滞りや細菌感染によって乳房が炎症を起こし、腫れ・痛み・しこり・膿といったさまざまな症状が出た状態のことです。ほとんどが授乳期に起こりますが、授乳していない方でも生じることがあります。

乳腺症

乳房に生じるさまざまな良性の病気を総称して乳腺症と呼びます。嚢胞(のうほう),乳管内乳頭腫,腺症などが代表例です。しこりが生理前に大きくなり、生理後に小さくなる、というように生理周期と連動する場合は、乳腺症かもしれません。

乳房がでこぼこする

乳がんのしこりが大きくなったり、複数できたりすることで、乳房の表面がでこぼこしたり、引きつったようになったりすることがあります。

乳頭や乳輪の湿疹、ただれ

乳がんの一部では、乳頭や乳輪に湿疹やただれ・かゆみといった症状が出る場合があります。

乳頭や乳輪がただれる乳がんは「乳房パジェット病」と呼ばれ、頻度はごくまれです。ただれやかゆみから、引っ掻いてしまってカサブタとなったり、出血したりするため、皮膚科へ受診する方もいます。乳房パジェット病はしこりができないため、乳がんと気が付きにくいかもしれません。

なかなか治らない湿疹、ただれ、アトピー、ケロイドのような症状があれば、皮膚科や乳腺外科などを受診してみてください。

ワキの下の腫れ、腕のむくみ

乳がんがワキのリンパ節へ転移すると、腫れを感じたり、片腕だけがむくんだりします。進行すると神経を巻き込んで痺れが出たりすることがあります。

左右のワキで差があるかどうか、ご自身でも確認してみてください。乳房とワキの間にしこりや腫れ・違和感などがあれば、早めに乳腺外科などを受診しましょう。

乳がんセルフチェック方法とは

日本乳癌学会でも、「ご自身の乳房について関心を持って生活していただくこと」を推奨しています。その一環として、乳がん検診のほかに、定期的なセルフチェックをおこないませんか?

乳がんのセルフチェックは、乳がん検診の代わりにできる・100%の確率で発見できるというようなものではありませんが、ちょっとした変化に早く気がついて早期発見につながることもあります。乳がん検診の対象にならない40歳未満の方も、セルフチェックをおこなってみましょう。

【見た目のチェック】

入浴前など、鏡の前でおこないます。

  • 両腕を下げた状態と、上げた状態とで乳房の状態を観察します。でこぼこや引きつり、左右差などはないでしょうか。
  • 乳頭を軽くつまみ、血液の混じったような分泌液が出てこないか確認します。

【触れてチェック】

石けんなどをつけて滑りをよくするとわかりやすいので、入浴中がおすすめです。指を3〜4本そろえておこないます。

  • 腕を少し上げて、乳房の表面に小さな円を描くようにしながら、しこりがないか確認します。乳がんが多いのは、乳房の外側の上(ワキに近い部分)なので、そのあたりを重点的にチェックしましょう。
  • ワキの下の部分に、しこりがないか確認します。
乳がんセルフチェック方法とは

【横になってチェック】

横になった状態で、肩甲骨のあたりにタオルや枕を入れて少し背中が反るような姿勢をとると確認しやすいです。

  • 腕を上げて、乳房の内側部分を指の腹で軽く押しながら、しこりがないか確認します。
  • 腕を下げて、乳房の外側部分を指の腹で軽く押しながら、しこりがないか確認します。

まとめ

今回は、乳がん検診の必要性や流れについてご紹介するとともに、かかる費用や乳がんの症状・チェック方法を解説しました。

乳がん検診には「痛い」「恥ずかしい」といったイメージをお持ちの方が多く、なかなか気が進まないかもしれません。ですが、早くに発見して治療をおこなうほど、治療成績がよくなります。

乳がん検診の費用は、自治体や会社の助成で数千円までの負担でおさまることがほとんどです。40歳を超えたら2年ごとの乳がん検診を受けましょう。また、日頃から乳がんのセルフチェックをおこない、変化がないかみる習慣をつけるようにしてください。

がん治療一覧へ