がん細胞が免疫にブレーキをかける? 「免疫チェックポイント」とは

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がん細胞が免疫にブレーキをかける? 「免疫チェックポイント」とは

がんの治療と言えば放射線治療や手術、抗がん剤治療などが思い浮かぶと思います。
では、放射線で消滅させたり、手術で切り取ったりすれば完璧! かというと、そんなことはありません。

がんを抑えるために欠かせない要素の一つが、患者さん本人の免疫です。

免疫は体内にあるがん細胞を攻撃して消すことができます。
免疫力が高ければ、より多くのがん細胞を攻撃でき、免疫力が低ければ、攻撃の能力は低下します。

そこで重要になるのが、「免疫チェックポイント」です。
免疫チェックポイントは、人間の体がもつ、いわば「免疫のブレーキ」。
そのブレーキを「がん」が作動させることができるとしたら……、その仕組みをご説明します。

がんの免疫療法における「免疫チェックポイント」とは?

免疫チェックポイントとは?

免疫は本来、私たちの身体を守るための仕組みです。
細かい仕組みは専門店で複雑な話になってしまいますが、今回にかかわる部分だけを簡単に並べてみましょう。今回ここで言う「異物」は、「がん細胞」を指します。

  • 体内の異物と樹状細胞が出会う
  • 樹状細胞が異物の情報を手に入れる(=貪食)
  • 樹状細胞が異物の情報をT細胞に提示する(=抗原提示)
  • T細胞が異物を攻撃する

この仕組みが正しいバランスを保って働いている間は、免疫によって異物が攻撃され、身体は健康へ近づきます。

免疫細胞・T細胞は活性化しすぎることがある?

ところが、稀に攻撃役の免疫細胞、T細胞が活性化しすぎることがあります。
活性化しすぎたT細胞は、なんと健康な細胞や組織まで攻撃してしまいます。

このような状態は「自己免疫性の病気」と呼ばれます。
膠原病や関節リウマチはよく知られた「自己免疫性の病気」です。

とはいえ、免疫はとてもよくできた仕組みです。
そう簡単にT細胞の過剰な活性化を許しません。

自己免疫性の病気を防ぐために、T細胞には、免疫反応にブレーキをかける仕組みが備わっています。
そして、そのブレーキ役が今回テーマにしている「免疫チェックポイント」なのです。

がん細胞に利用される2つの免疫チェックポイント

がんができると、患者さんの免疫力が下がることが分かっています。
がん細胞が、免疫チェックポイントを利用して免疫反応にブレーキをかけることが原因です。

患者さんの免疫にブレーキをかけ、自らが攻撃されるリスクを減らしているのです。

がん細胞が免疫にかけるブレーキには、次の2種類があります。

  • 「PD-1」に働きかけるタイプ
  • 「CTLA-4」に働きかけるタイプ

PD-1に働きかけるタイプ

PD-1は、T細胞の表面にあるいわば「カギ穴」です。
T細胞は、このPD-1で、出会った相手が攻撃すべき相手かどうかを見分けます。
相手と結びつくことができれば攻撃をかけず、結びつくことができなければ攻撃します。

自分を攻撃するT細胞を見つけると、がん細胞は自らの表面に「PD-L1」という物質を作ります。
T細胞の表面の「PD-1」がカギ穴なら、がんの表面の「PD-L1」はカギです。

PD-1はカギとカギ穴の関係と同じです

T細胞は自分と結びつくもの、つまり自分のカギ穴に合うカギを持つものを攻撃しないようにできています。

がん細胞は自らが作り出したカギを使ってT細胞と結びつき、T細胞に「これは攻撃対象ではない」という信号を送ります。
これでそのT細胞にがんが攻撃されることはありません。

そればかりか、この出来事はT細胞の増殖を抑えたり、T細胞をアポトーシス(自殺のようなもの)に陥りやすくさせたりもします。

CTLA-4に働きかけるタイプ

CTLA-4は、免疫機能を抑えることに特化した、特別なT細胞「Treg(抑制系T細胞)」の表面に備わっている仕組みで「受取口」のような働きをします。

ところが、がん細胞は直接この受取口に働きかけるわけではありません。
がん細胞がだますのは「樹状細胞」です。

樹状細胞は、がん細胞などの異物を取り込み、その情報(=抗原)を攻撃担当のT細胞に伝える働き(=抗原提示)をする免疫細胞。

免疫にブレーキをかけるために、がん細胞が行うのは、樹状細胞に「攻撃を中止しなさい」という指令を出すことです。

免疫細胞療法は、がん患者さんを救う可能性をもっている

この指令を受け取った樹状細胞は、Tregに「免疫を抑えなさい」という情報を「B7」という物質を送ることで伝えます。
B7を受け取る受取口、それがCTLA-4なのです。

B7を受け取ったTregは、それががん細胞からの指示だと知る由もなく、樹状細胞から下った命令に従います。

まとめ

がんが積極的に動いて、患者さんの免疫を下げている。
まるでがんが一つの生物のようですね。

免疫力を上げる免疫細胞療法や、今回のようながんが引き起こす免疫力低下を防ぐ免疫チェックポイント阻害薬など、免疫力を高めてがんと闘う医療の研究は日々進んでいます。

より多くの患者さんが救われることでしょう。

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