大腸がんのステージ4における生存率とは

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大腸がんのステージ4における生存率とは

大腸がんのステージ4における生存率とは

大腸がんは日本人の発症するがんの中でも男女問わず発症率が非常に高い身近な病気です。発症割合も年々増加傾向となっています。お腹の不調は一般的にもよく起こることから症状の変化に気付きににくく、発覚したときにはすでに重症度が高い状態であることが多いのも特徴の一つです。

この記事では大腸がんとはどのような病気であるのか解説すると共に、最も重症度の高い「ステージ4」にフォーカスした内容をご紹介します。誰もが起こりうる病気であることを理解し、早期発見のための知識の一つとしてぜひ参考にしてみてください。

大腸がんとは

大腸がんとは

大腸はどのような役割を担っているのか、そして大腸がんが発生することによってどのような症状が起こるのかについて解説します。

大腸のはたらき

大腸は全長約1.5mの細長い管のような形をした臓器です。盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸の6つの部位に分類されています。

大腸は、食事をして摂取された内容物から水分やミネラルを吸収する働きと、不要物を便へと変化させ体外へ排出させる働きを持っています。食事をして約24〜48時間の間に各臓器を巡り消化活動がおこなわれます。

そして最終的に腸へと到着し、届いた内容物から必要な養分が吸収されます。その際、液状と化した内容物が徐々に水分を失い、固形化されます。

その後、身体にとって不要となった成分は便という形で体外へ排泄するという一連の流れとなっています。大腸は食物の吸収と老廃物の排出において非常に重要な役割を担っている器官です。

発症時の経過

大腸がんの症状は初期の段階では無症状であることが多く、健康診断を受けたときに異常所見を指摘されて精密検査に進んだところ、大腸がんが発覚したというケースが多くなっています。また、自覚症状があったとしてもお腹の痛みや下痢、便秘といった日常的によく起こる症状である場合が多いことから、一時的な不調であると判断され、見過ごされやすい病気でもあります。

主な経過としては、初期の段階では無症状であったがん細胞は、腸内で増殖を重ねて増大することで、次第に腹痛や下痢などの苦痛や違和感を引き起こします。最初は一過性のものであることが多く、経過が長くなるに連れて腹部の症状も持続的または頻発するようになります。

この経過を経て最終的に重症度の高いがんへと化すと、出血を伴う便が出ることが多くなり貧血症状など全身状態の不調が起こり始めます。出血を伴うことで異常に気付き、医療機関を受診した結果、大腸がんの末期であったというケースも少なくありません。

大腸がんは発覚に至るまでに時間を要すことがあるため、自らが体調の変化に注意し、お腹の不調や違和感が持続する場合は早めに医療機関を受診することを意識しておきましょう。

大腸がんの症状

大腸がんの症状

大腸がんは腸内の各部位でミネラルや水分の吸収と不要物質を固形化し便を作るという一連の働きがあることから、発生場所によって出現する症状が異なるという特徴を持っています。症状の違いは主に大腸の右側と左側、どちら側にがん細胞が発生しているかによって異なります。

右側

部位(横行結腸、上行結腸、盲腸)にがん細胞が発生している場合
症状:腹部腫瘤(しこり)の発生、貧血(下血が持続した場合)

左側

部位(下降結腸、S状結腸、直腸)
症状:腹痛、腹部膨満感(お腹の張り)、便秘、下痢、血便

がん細胞が発生した場合、注意しておきたい合併症の一つにイレウス(腸閉塞)があります。イレウスとは腸内が炎症や異物、腫瘍が発生することにより腸管が塞がれた状態のことをいいます。大腸がんの場合はがん細胞が増殖して巨大化することによって、腸管が徐々に狭くなり、最終的に腸が閉塞してしまうという経過を辿ります。

腸が塞がれることによって、腸内に便が貯留し続け、腹痛や嘔吐が起こります。また、摂取した内容物の吸収が阻害されることにより、脱水や電解質異常、低栄養といった重篤な状態を引き起こすことがあります。緊急性の高い病気であると共に、大腸がんによって最も起こりやすい病気の一つでもあるため、イレウスのリスクについても理解しておきましょう。

大腸がんの検査方法

大腸がんの検査方法

大腸がんが疑われた場合は、実際にがん細胞が発生しているのか、より詳しい状態を確認するために精査を行います。

大腸内視鏡検査

確定検査をするために最初に実施する検査が大腸内視鏡検査になります。内視鏡を肛門から挿入し、大腸全体を詳しく調べることができます。

病変の有無、良性・悪性の鑑別、がんの深さを評価するのに有用な検査です。検査を行うと同時に検体を一部採取することも可能なので一度の検査で多くの情報を得ることができます。

注腸造影検査

注腸造影検査は腫瘍の有無や術前の部位の確認をするためによく利用される検査です。肛門からチューブを挿入し、造影剤と空気を入れて大腸内のレントゲン撮影をおこないます。進行性の大腸がんの場合、腫瘍によって腸内に狭窄が起こることからapple core signというリンゴの芯に似た所見が見つかることがあります。

画像診断(CT・MRI)

がんが確定的となった場合、CTやMRIの画像診断で全身状態をチェックします。治療を開始するにあたり、がん細胞が他の臓器へ広がっていないか転移の有無を調べます。

PET検査

ブドウ糖を含む薬剤を注射し画像検査を受けます。がんの広がりや転移の有無、治療の効果や再発の有無の評価に有用です。

CTやMRIと同じ画像診断の枠組みですが、PETの大きな違いはブドウ糖を消費して活発化するがん細胞の状態を調べることができます。ブドウ糖を利用することから、糖尿病を患っている人は血糖値に影響を及ぼすため、体質や基礎疾患の状態によっては適応外となることがあります。

腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカーは、がんの種類によって異なる特有のタンパク質の有無を採血によって調べる検査です。がんの早期発見の手がかりとなるだけでなく、がん治療における効果の実際などを評価するためにも効果を発揮します。大腸がんの場合は、手術後の再発の有無や薬物療法の効果の判定をおこなうために、血液中のCEA、CA19-9というマーカー検査を実施します。

大腸がんのステージ分類

大腸がんのステージ分類

大腸がんの治療方針を確定する上で大事な指標となるのがステージ分類になります。この項目では大腸がんにおけるステージとは何か、ステージの見方について解説します。

ステージとは

がんは進行性の病気であることから現段階で、がんの状態はどれくらいの深刻性があるのか、がんの進行度を表すためにステージ(病期)という形で指標化されています。そしてステージは治療方針を決定づける上で重要な判断指標となっています。大腸がんにおけるステージは主に5段階で表されます。

ステージ0粘膜の中に留まっている状態(最も浅い状態)
ステージⅠ筋肉の層までに留まっている状態
ステージⅡ筋肉の層を超えて周囲へ広がりがある状態
ステージⅢがん細胞の深さに関係なくリンパ節に転移している状態
ステージⅣ肺や肝臓、腹膜など他の臓器に転移している状態

このようにステージが0からⅣへと上昇するにつれて、重症度は高いということになります。

ステージの判定方法

大腸がんのステージを決定するためには、主に3つの観点から判断します。

大腸の壁にどれくらい深くがん細胞が入り込んでいるか(深達度)

大腸がんは腸内の内側の壁の粘膜から最初に発生します。進行していくに連れてがん細胞は増殖し表面から次第に奥へと入り込んでいきます。がん細胞がどれくらい深く入り込んでいるかを評価することで、がんの進行度を判断することができます。

リンパ節への転移の有無

リンパ管とは体内から排泄された物質を運ぶ液体(リンパ液)が通る管のことをいます。リンパ管を繋ぐものがリンパ節です。大腸の近くには多くのリンパ節が存在しています。そのためがんが増殖することによってリンパ節に転移することがあります。

リンパ節にできたがん細胞は、リンパ液を通し身体のあらゆるところに運ばれていきます。その過程を得て、大腸とは離れた別の臓器に転移するという事象が発生することがあります。

他の臓器への転移の有無

大腸がんで最も多い転移の場所は肝臓です。これは大腸の血流が門脈(肝臓に流れ込む静脈のこと)を介して肝臓へと流入することが理由となっています。肝臓の他にも、周辺臓器である腹膜や肺にも転移することがあります。

これらの観点から状態を確認することによって、総合的に現在のがんの状態はどれくらいの重症度に値するかを評価しています。

大腸がんのステージ4とは

大腸がんのステージ4とは

大腸がんのなかでも最も重症度が高いステージⅣ。ステージレベルが高いほど、がんの重症度は増していきますが、実際の生存率や治療を受けた後の経過は決して悪くなる一方というわけではありません。この項目では、がんの領域でよく使用されている生存率について解説します。

生存率

大腸がんのステージ別、生存率は以下の通りです。
(2014〜2015年の集計を基にがんのみが死因となる状況を割り出した統計)(ネットサバイバルの5年生存率)

ステージ192.3%
ステージⅡ85.5%
ステージⅢ75.5%
ステージⅣ18.3%

出典:実測生存率 国立がん研究センターがん情報サービス(大腸がん)

生存率とは、病気の診断を受けてから、ある一定期間まで生存している人の割合のことをいいます。生存率は一般的に2つに分類されます。

実測生存率

死因に関係なく全ての死亡を含めた生存率のことです。例えば大腸がんの実測生存率を読み取る場合、そのデータ結果は大腸がんを患っている人を対象としているものの、死因は大腸がん以外も含んだ結果となっています。がん以外の死亡要因が含まれているため、必ずしもがん疾患によって死亡したわけではない事例が含まれており、実際の生存率に差が生じることがあります。

相対生存率

がんと診断された場合に治療を受けることによってどれくらい生命を救うことができるかを表す指標の一つです。がん以外の死因による死亡の影響を除外した生存率になります。がん疾患の相対生存率に関する統計のなかでも最も多く使用されるデータとして、5年生存率があります。

5年生存率とは、治療を開始してから5年後に生きている人の割合のことです。多くのがん疾患は治療後、5年間再発がなければその後の再発の可能性は低くなるといわれています。そのため、がん疾患において5年という区切りは予後を評価する上で非常に重要な指標期間となっています。

注意しておきたいのは、生存率はあくまでも生きている人の割合であり、がんが完治する割合ではないということを理解しておきましょう。

このように生存率には種類があり、それぞれ対象となる条件や計測範囲が異なります。生存率はあくまでも指標となる目安であり確実なデータとはいえないこと、ステージが高くなるにつれて生存率は低くなりますが、必ずしもステージが高いからといって記載されているデータと同じ経過を辿るわけではないということも知っておく必要があります。

ステージ4と診断された人が余命宣告をされていても、想定より長く闘病を続けている人もいれば、症状が改善傾向にある人もいたりして、個人の体質や年齢によってもさまざまです。データだけに捉われないよう注意しましょう。

大腸がんの治療方法の革新と生存率の関係について

大腸がんの治療方法の革新と生存率の関係について

大腸がんの主な治療方法は4種類あります。各ステージや患者の状態によって、治療ガイドラインを基に治療方法が選択されます。この項目では、大腸がんにおける治療方法の革新と生存率の関係について解説します。

手術療法

病巣部を除去することによって根治(完全にがんを治すこと)が期待できる治療方法です。

  • 開腹手術
    お腹にメスを入れて病巣を除去する治療方法です。
  • 腹腔鏡手術
    お腹の4箇所に小さな創をつくり、器具を挿入してがん細胞を除去します。開腹手術と比べて傷口が小さくて痛みが少ない、手術時間も開腹手術より短い時間で実施が可能となっています。総合的に見ても開腹手術よりも腹腔鏡手術の方が身体的な負担が少ない検査であり、術後の合併症などのリスクも非常に低いというメリットがあります。
  • ロボット支援手術
    開腹手術や腹腔鏡手術と比べると手術時間は長くなりますが、ロボット技術を用いて、より精密な手術を実施することが可能になっています。
  • 下部消化内視鏡
    肛門から内視鏡を挿入して腫瘍を切除します。

1990年代まで、大腸がんの手術の基本は腹部を切って病巣を取り除く開腹手術が主流でした。1993年に初めて日本で腹腔鏡科手術が実施されて以降、現在では開腹手術よりも腹腔鏡手術を主体として実施されることが増えてきています。最近ではロボット技術による手術も各医療機関で開始されるようになり、大腸がんの手術方法は数十年の間に大きな変化を遂げています。

化学療法

化学療法は転移のリスクが高いステージ4の場合に優先的に選択される治療方法です。抗がん剤は血管を介して薬剤が全身に行き渡るので、発生場所に関わらず治療が可能となっています。副作用が強いイメージがありますが、大腸がんの薬剤は種類が豊富であり、副作用の少ない薬剤も出てきています。

放射線療法

転移したがんの一部や直腸がんの一部に実施します。放射線を照射してがん細胞を攻撃します。痛みの緩和や腫瘍の縮小を目的としています。

免疫療法

がん細胞を攻撃するのではなく免疫細胞を活性化させて間接的に治療をおこなう方法です。大腸がんの場合、抗がん剤の効果が得られなくなった一部の人を対象に実施しています。

このように、がんの治療方法は時代の流れと共に医療的技術も進化しています。治療技術が発展することによって、がんと診断された人の生存率は少しずつ上昇傾向を示しています。

大腸がんのステージや状態によって適応となる治療や第一選択は異なりますが、必要となる時期に適切な治療を受けることが予後にも大きな変化をもたらします。がんは治らない病気と認識されていた時代から、現在では回復が見込める病気へと変化しているのです。

例えステージ4であったとしても、数十年前の治療方法と比べると個人差はあるものの、症状の改善が見込めるようになってきています。医療技術の発展は大きな希望をもたらしているのです。

まとめ

大腸がんは、がん疾患のなかでも男女問わず発生しやすい病気です。初期の段階では無症状であること、症状が出ていても病気の可能性に気付きにくい特徴があります。一過性の不調であると思われ、見落としやすい病気の一つでもあります。

早期発見ができれば、治療後の経過は比較的良好ですが、発覚したときにはすでに進行していたというケースが多い疾患でもあります。まずは積極的に検査に臨み早期発見に繋げること、不調がある場合はそのままにせず医療機関を早めに受診することを意識して、予防と早期発見に努めましょう。

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