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少数転移がんの治療に有効!トモセラピーとサイバーナイフのコンビネーション放射線治療について

ほかの臓器に少数個だけ転移するがん治療に、「トモセラピー」と「サイバーナイフ」を組み合わせた放射線治療が有効であり、場合によっては完治も期待できるほど効果的なことがわかってきました。

そこで今回は、トモセラピーとサイバーナイフを組み合わせたコンビネーション放射線治療を日本で唯一実践している宇都宮セントラルクリニックの佐藤先生にお話を伺います。

最新の放射線治療装置であるトモセラピーとサイバーナイフの詳しい解説をはじめ、コンビネーション放射線治療で完治された実際の症例もご覧いただけます。

最後までお読みいただき、ご自身のがん治療の選択肢の一つとして参考になさってください。

佐藤俊彦先生

佐藤俊彦
医療法人 DIC
宇都宮セントラルクリニック 理事

−−本日は、佐藤先生に少数転移のがんに効果があるトモセラピーとサイバーナイフのコンビネーション放射線治療についてお話します。

佐藤俊彦先生(以下、佐藤) はい、よろしくお願いいたします。今回は、日本国内で唯一当クリニックだけが行っている「コンビネーション放射線治療」が少数転移のがんに有効なことがわかってきたのでご紹介します。

コンビネーション放射線治療とは、放射線治療装置のトモセラピーとサイバーナイフそれぞれの特徴を組み合わせることで、従来よりも飛躍的に短期間の放射線治療を実現した治療です。

まずは、トモセラピーとサイバーナイフそれぞれの放射線治療装置について説明しましょう。

広範囲のがんを1回で治療する「トモセラピー」

広範囲のがんを1回で治療する「トモセラピー」

佐藤 トモセラピーは、CTの技術を応用した放射線治療装置です。CTによる画像撮影で腫瘍の位置を確認しながら放射線を照射します。まずは、トモセラピーの仕組みからご説明しましょう。

トモセラピーでは、患者さんに可動する治療台に横になっていただきます。治療台がドーナッツ状の装置の中へゆっくり移動していき、装置の中で放射線機器が360度回転して放射線を照射します。

これにより患者さんに対してらせん状で連続的に照射されることで「広範囲に広がったがん」や、「全身に転移したがん」に対して少ない回数による放射線治療を可能にしました。

・トモセラピーの仕組み

トモセラピーの仕組み

画像提供日立メディコ

佐藤 またトモセラピーではCTスキャナーによる断層撮影を、治療計画のときと治療直前の両方で行います。そこで事前に撮影した断層画像と比較して、腫瘍や健常臓器の位置に差異がある場合は治療台を調節して照射位置を合わせます。

そしてトモセラピーの最大の特徴は、放射線の強さを変えながら照射する「強度変調放射線治療(IMRT)」を採用している点です。

強度変調放射線治療とは、放射線の照射ビームの中で放射線量の強弱を変えて、患部にだけ集中的に照射する治療です。

従来の放射線装置は、照射ビームが均一の強さでした。これでは患部に照射した場合、隣接する健常な臓器にも照射してしまい副作用が懸念されます。

そのため、健常な臓器に影響が出ないように照射量を弱めた結果、照射回数を増やすることになり、患者さんへの経済的な負担、時間的な制約が増える結果となっていました。

しかし、強度変調放射線治療の機能を持つトモセラピーなら照射するビームの強弱を変化させて患部のみに強い放射線を照射できます。

これによって隣接する健常臓器を避けて、患部に強い放射線を照射できることになり、短期間での放射線治療が可能になったのです。

・従来機とIMRT搭載機による照射ビームの違い

従来機とIMRT搭載機による照射ビームの違い

画像提供H22・23年度JASTRO研究課題班

佐藤 均一な照射ビームとIMRTの照射ビームの違いです。赤い線で囲んだ三日月形の部分が患部とお考えください。通常のビームでは照射が重なった部分(放射線量が高くなる部分)が円形なのに対して、IMRTでは三日月形になっています。

・従来機とIMRT搭載機の違い「上喉頭がんの症例」

従来機とIMRT搭載機の違い「上喉頭がんの症例」

画像提供H22・23年度JASTRO研究課題班

佐藤 こちらは、トモセラピーによる上咽頭がん治療の症例です。色の付いた枠内が放射線を照射する範囲です。

従来機では唾液腺(左右の縦に白い部分)と脊髄(画面下部黒く丸い部分)に照射範囲がかかっていることがわかります。

それに比べて、IMRT搭載機をご覧いただければ一目瞭然ですね。唾液腺、脊髄を避けつつ、患部には従来機と変わらない線量を照射できています。

・トモセラピー治療症例①「肺がん」

トモセラピー治療症例①「肺がん」

佐藤 トモセラピーの実際の治療症例ということで、こちらの肺がんの患者さんの症例をご覧いただきます。

右肺に腫瘍ができてしまった症例です。右肺の気管支が腫瘍によって狭くなり無気肺状態になって呼吸がとても苦しい状態でした。

トモセラピーで放射線12Gy(グレイ)を1回照射だけですが、腫瘍が綺麗に消えているのがご覧いただけると思います。

このようにトモセラピーによる強度変調放射線治療は、大きな腫瘍や複雑な形状の腫瘍の治療に対して大きな効果が期待できるのです。

参照:宇都宮セントラルクリニックYouTubeチャンネル「トモセラピー」解説動画

 

患部のみ狙って照射する「サイバーナイフ」

患部のみ狙って照射する「サイバーナイフ」

 

佐藤 サイバーナイフは、放射線発生装置を備えたロボットアームを動かすことで、多方向から放射線を照射する放射線治療装置です。細い照射ビームを多方向から腫瘍に照射できるので、隣接する健常な臓器を避けながら腫瘍のみを狙いうつように治療することができます。

また特筆すべきなのが、患者さんの呼吸によって動いてしまう腫瘍の位置を追尾しながら照射する「追尾照射」機能が備わっている点です。

この追尾照射機能は、巡航ミサイルのナビゲーション技術を応用した「X線透視位置認識撮影システム」によって実現したものです。

治療中に2方向からX線透視撮影が行われており常に腫瘍の位置を確認します。映し出された腫瘍の位置画像をリアルタイムで画像解析をして、1mm以下の単位で腫瘍を認識、補正して照射するというものです。

そして画像解析した腫瘍の位置に数千方向以上から細い放射線で照射していくことで、複雑な形状の腫瘍であっても、周囲の健常な臓器を避けながら腫瘍全体に放射線を照射できるのです。

・サイバーナイフの照射図

サイバーナイフの照射図

画像提供日本アキュレイ

佐藤 サイバーナイフの高精度な照射能力は、健常な臓器への影響が少ないことから、1回の治療に8Gy、12Gyといった高い放射線量を用いることができます。

高い放射線量を照射することは、それだけ少ない回数の照射で治療を終えることができます。放射線治療では、この短期間で治療を終えることが大切なのです。

なぜなら、放射線治療が長くなると、治療の後半でがん細胞の増殖速度が加速されるからです。がんの加速再増殖を防ぐために1日に複数回に分けて放射線を照射する、または1日1回照射で週6〜7回照射するといった方法が用いられます。これを「加速分割照射」といい、免疫放射線治療にも効果的とされています。

 

サイバーナイフの治療症例①「転移性脳腫瘍(原発巣は肺がん)」

 

サイバーナイフの治療症例①「転移性脳腫瘍(原発巣は肺がん)」

佐藤 サイバーナイフによる治療の症例として、肺がんからの転移性脳腫瘍の患者さんの症例をご覧いただきます。こちらの患者さんには、脳腫瘍、肺がんともにサイバーナイフによる治療を行いました。

脳腫瘍は放射線30Gyをたった3回分割照射しただけで、7か月後には綺麗に腫瘍が消えているのがご覧いただけると思います。

また肺がんは、放射線60Gyを4回分割照射で行いました。こちらは5か月後に腫瘍が小さくなっているのがおわかりいただけると思います。ちなみに従来の放射線治療装置で60Gyを照射するには周辺の健常な臓器への影響を懸念して、30回も分割照射しなければなりませでしたが、サイバーナイフならたった4回の照射で治療が済むわけです。

・サイバーナイフの治療症例②「頸部腫瘍」

サイバーナイフの治療症例②「頸部腫瘍」

 

佐藤 こちらはサイバーナイフによる広範囲で複雑な形状の腫瘍に対しての治療症例となります。

これだけ大きな腫瘍となると手術は困難ということで、手の施しようがないと外科の先生に断られて当クリニックにお見えになった患者さんです。

当クリニックでサイバーナイフによる放射線40Gyを8回分割照射して、3か月後には綺麗に腫瘍を取り除くことができました。

腫瘍の複雑な形状にあわせて、さらに反対側の唾液腺に当たらないように放射線が照射できているのがご覧いただけると思います。3か月という短い治療期間で治すことができた好例といえると思います。

・サイバーナイフの治療症例③「肺がん腫瘍」

サイバーナイフの治療症例③「肺がん腫瘍」

佐藤 こちらは転移性の肺がんの患者さんにサイバーナイフで治療した症例となります。放射線55Gyを4回分割照射したところ、治療後に腫瘍が縮小していき1年後には完全に消し去ることができました。

ご覧いただきましたとおり、サイバーナイフは外科手術のような正確さを持って放射線治療を行うことができる高精度の放射線治療装置となっています。

参照:宇都宮セントラルクリニック YouTubeチェンネル「サイバーナイフ」の解説動画

少数転移のがんに効果的なコンビネーション放射線治療とは

佐藤 これまでご覧いただいたトモセラピーとサイバーナイフのふたつの特徴を活かしたコンビネーション放射線治療の効果が期待できるのが、少数転移のがん治療です。

少数転移のがんとは、原発巣から少数個(1〜3個)の遠隔転移がんが認められる症状です。コンビネーション放射線治療では、この少数転移した個々のがんの場所や形状にあわせて、高線量を照射して短期間で治療することを目指し、最適な放射線治療装置(トモセラピーかサイバーナイフ)を選択して治療します。

当クリニックではトモセラピーとサイバーナイフを2台同時導入して以来、いままでにコンビネーション放射線治療で数々の治療実績を重ねています。

ここでは、そんな治療実績の中から2例ご紹介します。

・コンビネーション放射線治療症例①「肺がん・縦隔リンパ節転移がん」

コンビネーション放射線治療症例①「肺がん・縦隔リンパ節転移がん」 コンビネーション放射線治療症例①「肺がん・縦隔リンパ節転移がん」

佐藤 1例目は、原発巣は右肺のがんで、右肺の縦隔リンパ節に少数転移した症例になります。原発巣の右肺がんにはサイバーナイフで60Gyを3回分割照射して、リンパ節の転移がんにはトモセラピーで50Gyを25回分割照射しました。

局所的な右肺がんにはサイバーナイフで集中照射を行い、リンパ節に広がったがんはトモセラピーで広範囲を照射するという治療方法を用いました。それぞれの放射線治療装置の特徴を活かすことで、高い放射線量を分割照射しながら1か月程度で治療を終えることができました。

放射線治療後の1年間は、免疫チェックポイント阻害剤「イミフィンジ」を使用することで肺とリンパ節の腫瘍が綺麗になくなっています。

・コンビネーション放射線治療症例②「左肺がん術後再発、肝転移」

コンビネーション放射線治療症例②「左肺がん術後再発、肝転移」 コンビネーション放射線治療症例②「左肺がん術後再発、肝転移」

佐藤 2例目は肺がんで左肺全摘出したのちに気管支に再発し、肝臓に転移された患者さんです。

治療では気管支の腫瘍にトモセラピーで30Gyを10回分割照射、肝臓がんにサイバーナイフで54Gyを3回分割照射しました。照射後3か月で気管支、肝臓ともに腫瘍は消えています。

この患者さんの場合、肺がんにサイバーナイフを使うことも検討しましたが、腫瘍の位置を合わせるための金属マーカーを肺に留置するのが難しいため、トモセラピーで治療することになりました。トモセラピーならCTで画像撮影しながら腫瘍の位置を確認して正確に狙うことができますからね。これは患者さんの病状によって、最適な放射線装置が選択された症例となります。

−−コンビネーション放射線治療が自分にも適応になるのか、気になった患者様はどうすればいいでしょうか?

佐藤 まずは私共のセカンド・オピニオンにご相談ください。宇都宮セントラルクリニックでは2018年2月にトモセラピーとサイバーナイフを2台同時に導入した国内屈指の施設となります。いままでに2,000件以上の治療実績があります。

トモセラピーとサイバーナイフを兼ね備えている当クリニックだからこそ、短期間の集中した放射線治療が可能です。ぜひご自身の治療法の選択肢の一つとしてご検討ください。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

聞き手

 

吉田 剛:1971年、東京生まれ。短大卒業後、大手IT系出版社に就職。編集長を経験したのち、大手ゲーム会社に転職。その後、WEBメディアの編集長、フリーライターを経て、2021年からGIコンサルティングパートナーズのデザイン戦略部にてライターを務める。

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