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【最新がん治療】身体にメスを入れずにがん治療を実現する「サイバーナイフ」による最新の放射線治療

皆さんは「サイバーナイフ」をご存じでしょうか?

サイバーナイフは、がんの腫瘍だけを狙って高線量の放射線を照射する最新の放射線治療機器です。コンピューターで制御された高い照準性能で周囲の正常な細胞をさけて腫瘍のみを消滅するピンポイント照射を実現しています。

今回は放射線治療を飛躍的に向上させたサイバーナイフについてご紹介します。

最新がん治療 サイバーナイフ

サイバーナイフとは?

サイバーナイフとは、米国アキュレイ社が開発した「ロボット誘導型定位放射線治療機器」のことです。

360度可動するロボットアームの先に放射線治療装置(リニアック、別名:直線加速器)を搭載することで、高線量の放射線をあらゆる角度から照射することを可能にしました。

このあらゆる角度から腫瘍に向けて放射線を照射する治療のことを「定位放射線治療法」と言います。

従来の放射線治療装置は一方向にのみ放射線を照射していました。このため照射線上には、腫瘍以外の正常な細胞がどうしても含まれてしまいます。そこで、正常な細胞への影響を抑えるために線量を弱める必要がありました。その結果的、がん細胞を消滅するために十分な線量を照射するのに複数回の治療を行う必要があったのです。おのずと治療期間は長期化しました。

しかし現代の放射線治療では、サイバーナイフの登場により”短期間で少ない回数の治療”に進化しました。それは、サイバーナイフの精密な照射精度による定位放射線治療法によって実現したのです。

サイバーナイフはコンピューターで腫瘍の位置を画像解析することで、サブミリメートル(=1ミリ以下)の照準精度を誇ります。これにより正常な臓器をさけて腫瘍にだけ照射することや、複雑な形状の腫瘍全体に照射することが可能になりました。

腫瘍自体が3センチ以下の小さなものなら、1週間の治療(4〜5回の照射)で治療を終えることができます。適応するがんの種類も幅広く、脳腫瘍を始め、肝臓がん、乳がん、骨転移、前立腺がん、リンパ節転移、膵臓がんなど幅広く治療できます。

さらに、高い照射精度は治療中も発揮します。患者さんの呼吸によって動いてしまう腫瘍もリアルタイムで画像解析を行うことで自動追尾しながら照射します。患者さんは治療中に普通に呼吸をしていただいて大丈夫です。

手術ができない早期肺がんに効果的

米国ではサイバーナイフによる数々の治療実績が報告されています。2008年のASTRO(米国放射線腫瘍学会)にて、ジョナサン・ハース博士の報告による「手術ができない早期肺がんの患者さんに対して行ったサイバーナイフによる治療の実績」は素晴らしいものでした。

早期がんを患っている患者さんの中には、体力の著しい低下や合併症を持っていることが理由で手術ができない方がいらっしゃいます。

そのような患者さんを対象にサイバーナイフによる治療をした結果、14カ月という治療後の期間中で、無増悪生存率(がんの進行を止められた率)が90%、そして全生存率は100%という素晴らしい結果だったのです。

現在、ASCO(米国臨床腫瘍学会)では、手術ができない早期肺がんの標準治療にサイバーナイフを採用しています。「標準治療」とは、科学的根拠と一定の基準に基づく観点から、現在利用できる最良の治療であることが認められた治療のことを指します。

海外では手術に匹敵する治療効果が望めることから、サイバーナイフを用いた治療を「ラジオ・サージェリー(放射線による外科手術)」とまで呼ばれているのです。

サイバーナイフのメリット・デメリット

放射線治療を飛躍的に進歩させたサイバーナイフの定位放射線治療法について、ここで改めてメリットとデメリットを解説します。

サイバーナイフのメリット

・低侵襲な治療で患者さんの身体への負担が少ない

治療中は寝台で横になっていただくだけです。患者さんは身体を包み込む固定具に入って、ロボットアームに支えられた寝台に横になっていただくだけです。固定具は治療中に楽な姿勢を維持できるようにする器具で、患者さんの身体に合わせて作成します。治療中は照射された部位に痛みや熱さなどを感じることはありません。また、高精度の照射によって正常な細胞への照射が抑えられるので、副作用を極限まで軽減できます。

・治療期間が短くて済む

サイバーナイフの1回の治療にかかる時間は30〜60分です。がん細胞を消滅するのに十分な線量を一度に照射できるので短い治療期間(1回〜数回)で終了します。治療時間自体も短いので外来通院での治療が可能です。

・原発巣での再発に放射線治療ができる

かつては、原発巣にがんが再発したら、がん細胞以外の正常細胞へのダメージがあるので放射線治療は受けられないというのが、従来の放射線治療では常識でした。

しかし、サイバーナイフを使えば、正常細胞へのダメージを最小限に抑えてがん細胞に集中して照射することが可能なので、原発巣での再発にも放射線治療が可能になったのです。

サイバーナイフのデメリット

サイバーナイフを導入している病院が少ない

日本国内でサイバーナイフを導入しているのは限れた病院、医療機関となっています。世界におけるサイバーナイフによる定位放射線治療法の評価は年々高まっていますが、日本国内においては最新の医療技術のため、まだまだ一般的に普及しているとは断言できない現状です。サイバーナイフによる定位放射線治療法に興味がおありでしたら、ホームページなどでサイバーナイフを導入している病院、医療施設を探してみてください。

なお、当院では2018年2月に県内で初めてサイバーナイフを導入して、定位放射線治療法を実施しています。導入から3年4カ月(2021年6月)で、治療実績件数は1,000件を超えています。

サイバーナイフによるがん治療の流れ

1 放射線治療の担当医が診察を行い、サイバーナイフによる定位放射線治療法を適応するか診断します。

2 治療を行うことになったら、CT画像を撮影して照射する腫瘍の場所を確認します。同時に腫瘍のある部位の固定具を作成します。

3 CT画像を基にコンピューターによって画像解析を行い患部の位置を計算します。

4 治療当日は患者さんに固定具を装着していただき寝台に横になっていただきます。画像解析データとX線による自動追尾機能によって腫瘍にピンポイントで照射します。

まとめ

サイバーナイフによる放射線治療は体にメスを入れることなく、副作用もほとんどありません。数回の通院で治療ができ、仕事を続けながらもがん治療ができます。

また、多くの場合は保険適用で患者さんの費用負担も少なくすみます。その効果も含めて、患者さんにはメリットの多い放射線治療法と言えるのではないでしょうか。

【監修】
佐藤俊彦 医師
医療法人 DIC
宇都宮セントラルクリニック 理事

出典:佐藤俊彦『ステージ4でもあきらめない 最新がん治療』(幻冬舎、2022/2/24)

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