メチオニンPET検査の有効性とは

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体にメスを入れずにがんを種別する「メチオニンPET検査」の有効性

体の中に潜むがんを特殊なカメラで映し出す画像診断技術「PET検査」。

最新のがん治療の現場では、がんの性質も判別できる画像診断「メチオニンPET検査」が登場していることをご存じでしょうか?

最新の画像診断では、従来のFDG(ブドウ糖)を用いたPET検査(FDG PET)に加えて、メチオニン(必須アミノ酸)を用いたメチオニンPET検査を行うことで、2つの画像診断の違いから、がんの性質を判別できるようになったのです。

いままでは、がんの性質を判別するには、体からがん組織を採って顕微鏡で組織を調べるケースが少なからずありました。ですが最新の画像診断であれば、体にメスを入れることなく画像で診断を下せるようになります。

このことは、診断にかかる時間と、患者様の体にかかる負担を軽減して、すぐに早期にがん治療を始められることを意味します。

そこでこの記事では、国内で唯一、全身のメチオニンPET検査を提供している宇都宮セントラルクリニックの佐藤先生に、がん治療におけるメチオニンPET検査の有効性について、実際の診断事例を基にお話を伺いました。

佐藤俊彦先生

佐藤俊彦
医療法人 DIC
宇都宮セントラルクリニック 理事

——本日は、よろしくお願いいたします。

佐藤俊彦先生(以下、佐藤) はい。よろしくお願いします。

今回は国内で唯一、宇都宮セントラルクリニックだけが提供している全身の画像診断「メチオニンPET検査」についてお話したいと思います。

メチオニンPET検査をご説明する前に、まずは皆さんがよく耳にされる従来のPET検査(FDG PET検査)について解説する必要があります。

FDG PET検査は、がんが増殖のためにブドウ糖を大量に代謝・集積する性質を利用した画像診断です。

がんは正常な細胞よりも増殖速度が速く、増殖のために必要なエネルギー源となるブドウ糖を体内から大量に集めて蓄えます。そこでブドウ糖に似たFDGという物質に微量のアイソトープを加えた薬剤を体内に注射します。

その後、アイソトープを感知する特殊なカメラで全身を撮影すると、FDGが集まっている場所が映し出されて、がんの位置、形が特定できるという仕組みです。

■メチオニンPET検査とは

メチオニンPET検査では、「メチオニン」という物質をFDGの代わりに用いたPET検査です。

1971年にがん研究の第一人者、ロバート・M・ホフマン博士(※)が、がん細胞の増殖において、必須アミノ酸の一つ「メチオニン」が代謝されることを発見しました。

がん細胞は増殖する際に、ほかの正常の細胞に比べて大量にメチオニンを代謝するので必然的にがん細胞にメチオニンが集積されます。このがん細胞のメチオニンを代謝・集積する性質を利用して位置や形を特定する画像診断がメチオニンPET検査です。

メチオニンの代謝の仕組み】

メチオニンの機序

これまでメチオニンPET検査は、FDG PET検査の苦手とする脳腫瘍の画像診断に用いられてきました。

脳細胞はもともと糖代謝が活発なので、正常な組織であってもブドウ糖を高度に代謝・集積するので、脳腫瘍と正常な組織の判別が困難でした。一方のメチオニンはアミノ酸なので糖の代謝に関係なく細胞分裂が活発な組織に集積されるため、脳腫瘍のPET検診の薬剤として使われてきました。

(※1)ロバート・M・ホフマン博士(Dr. Robert M. Hoffman):AntiCancer社の創立者兼CEO。世界的に有名ながん研究の第一人者。1971年にハーバード大学にて生物学の博士号を取得。現、カリフォルニア大学サンディエゴ校の外科部門教授。

■メチオニンPET検査とFDG PET検査を組み合わせることで、腫瘍の種類が判断できる

メチオニン(アミノ酸)とFDG(ブドウ糖)は、ともにがん細胞の増殖に寄与する成分ですが、がん細胞の種類によって代謝される条件が異なります。2つの成分を薬剤としてPET検査を行うことで、腫瘍が代謝するために集積した分布の違いから腫瘍の種類が特定できます。

それをまとめたものが下図となります。

【メチオニンPET検診とFDG PET検診の比較による画像診断の解釈】

 FDGが集積した場合(+)FDGが集積しない場合(−)
メチオニンが集積した場合(+)高悪性度のがんの可能性がある低悪性度のがんの可能性がある
メチオニンが集積しない場合(−)  炎症性の組織反応が疑われる低悪性度の腫瘍あるいは瘢痕の可能性がある

ご覧のよるに、それぞれの成分の集積具合の違いから、がんの悪性度、腫瘍か炎症、あるいは瘢痕なのかという診断もPET検査の画像からできるようになりました。

■メチオニンPET検査における画像診断の症例

それではここからは、宇都宮セントラルクリニックのメチオニンPET検査による画像診断の症例をご覧いただきましょう。

メチオニンPET検査結果の例① 直腸がんの患者様(72歳 女性)

メチオニンPET検査結果の例① 直腸がんの患者様(72歳 女性)

72歳の女性で直腸がんを発症した患者さんです。手術後にメチオニンPET検査をした画像(左)です。FDG PET検査の画像(右)ではFDGが集積した箇所があり、がんの転移を疑われましたが、あらためてメチオニンPET検査をしたところ蓄積が見られませんでした。2つの画像の比較から、がんは否定され炎症性のリンパ節腫脹(※2)であるという診断ができました。

※2 リンパ節腫脹:1つまたは複数のリンパ節が肥大する疾患

■メチオニンPET検査結果の例② 膀胱がん肺転移の患者様(69歳 男性)

■メチオニンPET検査結果の例② 膀胱がん肺転移の患者様(69歳 男性)

膀胱がんの転移から肺がんを患われた患者さんです。FDG PET検査(右)では肺の先部分に2つの集積が認められます。あわせてメチオニンPET検査(左)を行ったところ、左肺のみ集積しているのが認められました。

メチオニンPET検査とFDG PET検査の画像診断の結果から、右肺は炎症性の病変、左肺は転移性のがんということが診断できました。

メチオニンPET検査を行わずFDG PET検査だけでは、腫瘍が悪性のものか炎症性の病変なのか判断が難しく、さらに検査などを重ねることで治療開始が遅くなっていたかもしれません。

早期のがん診断、早期の治療を目指す上で、メチオニンPET検査とFDG PET検査を組み合わせが有効なことをお分かりいただける症例です。

■メチオニンPET検査結果の例③ 乳がん再発の患者様(56歳 女性)

メチオニンPET検査結果の例③ 乳がん再発の患者様(56歳 女性)

乳がん再発後、肺への転移を認められた患者さんです。治療後にCT検査(左)を行うと、肺に多数の転移と思われる影が認められました。そこでFDG PET検査(中央)とメチオニンPET検査(右)を行ったところ、ともに集積は認められませんでした。

このことから、CTで映っていた影は、ゼローダ(※3)やイプランス(※4)、フェソロデックス(※5)を投薬した効果でがんが抑制されたあとの「瘢痕」であることがわかりました。

メチオニンPET検査とFDG PET検査の組み合わせは、術後の経過観察にも有効なことがお分かりいただけると思います。

※3 ゼローダ:乳がんに効果的ながんの増殖を抑制する薬
※4 イプランス:細胞周期の進行を停止させてがんの増殖を抑制する薬
※5 フェソロデックス:エストロゲンステロイド性のホルモン治療薬。再発乳がん、進行乳がんの治療薬として用いられる。

■肺がんの疑いのある患者様(74歳 女性)

肺がんの疑いのある患者様(74歳 女性)

こちらは毎年、当院でCT検査をされる患者さんの画像です。CT画像には月日を追うごとに影が大きくなっている腫瘍が認められます。悪性のがんの可能性を疑い、FDG PET検査を行ったところ集積は認められませんでした。改めてメチオニンPET検査をしたところ、肺に極小の集積が認められました。このことから、腫瘍性の増殖と診断できたのです。

このような小さい病変の場合は生検(※6)をすることが非常に難しく、診断が遅くなってしまいます。メチオニンPET検査とFDG PET検査の画像を比較して早期に診断を下せたことで、すぐに手術で病変を取り除くという素早いアプローチが可能になったのです。

※6 生検:病変の一部を採って顕微鏡で組織を詳しく調べる検査。

■国内唯一の全身のメチオニンPET検査を提供

宇都宮セントラルクリニックでは、最先端の画像診断技術の導入により、国内で唯一の全身のメチオニンPET検査を提供しています。

先にも述べましたが、もともとメチオニンPET検査は脳腫瘍を調べる画像診断としてのみ運用されていました。これは、メチオニンの薬剤の有効時間である半減期が20分と短いためです。全身を撮影するには時間がかかるため、時間の制約の点から困難でした(FDGの半減期は110分)。

宇都宮セントラルクリニックではデジタル化された最新の画像診断機器を導入し、短時間で正確に画像撮影が実現したことで、全身のメチオニンPET検査を実現しました。これにより、従来のPET検査では難しかった体の部位である脳、膀胱、子宮をはじめとする全身を高精度な画像で診断することが可能になったのです。

私は常々、画像診断はがん治療において大切な検査のひとつだと思っています。

がんの早期発見はもちろんのこと、がんの性質や転移の状態を知ることで、発症後の治療方針を正確に計画することができます。

1960年代では、「がんは代謝異常である」あるいは「遺伝子異常である」という論争があり、遺伝子異常であるという仮説を有利に研究が進められてきました。

近年において、遺伝子異常を見つける「全ゲノム解析」や「がんゲノム解析」の技術が進んでも、がんは撲滅されるには至っていません。

そこで代謝異常説がまた取り上げられ、ワールブルク効果に対するケトン食やホフマン効果に対するメチオニナーゼなどが有効である例が報告されるようになりました。

しかしこれら診療報酬にない治療が本物であっても評価されることはないだろうと考えます。はたしてどちらが正解か? 今後も診療を通じて確認していきたいと思います。

宇都宮セントラルクリニックでは、全身のPET検査として従来のFDG PET検査に加えて、メチオニンPET検査を導入したことで、より正確な画像診断を行うことができます。

ご自身のお体の状態のより詳しい画像診断をご希望される方は、セカンドオピニオンまでご相談ください。

——本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

■宇都宮セントラルクリニック メチオニンPET検査

[検査料金]

  • メチオニンPET検査 200,000(税込)

[メチオニンPET検査でよくあるご質問]

  • 検査前の食事について
    検査前日の夕食は普段通りお召し上がりください。
  • 検査前の飲水について
    水やお茶などはご自由にお取りください。
  • 妊娠、授乳中の場合
    妊娠の可能性がある場合は検査が出来ません。
    母乳をあげている方もご相談ください。
  • お薬について
    心臓病や高血圧などの内服薬は通常通り内服してください。

聞き手

吉田 剛

吉田 剛:1971年、東京生まれ。短大卒業後、大手IT系出版社に就職。編集長を経験したのち、大手ゲーム会社に転職。その後、WEBメディアの編集長、フリーライターを経て、2021年からGIコンサルティングパートナーズのデザイン戦略部にてライターを務める。

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