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【最新がん治療】血液によるがん遺伝子検査「リキッドバイオプシー」

最新がん治療 リキッドバイオプシー

がんの遺伝子検査は、がんの抗がん剤や治療法を決めるのに必要です。いままで針やメスでがん細胞を直接採取する「生検」に頼るほかありませんでした。しかし生検は「脳などの生検ができない部位がある」「転移がんすべてに生検はできない」「患者さんの身体への負担が大きい」などのデメリットがありました。

それらを払拭したのが今回ご紹介する最新のがん遺伝子検査「リキッドバイオプシー」です。リキッドバイオプシーは、血液中のがん遺伝子を網羅的に調べて効果的な抗がん剤や治療法を導き出すことができます。

今回は、非常にシンプルかつ安全で、検査入院の必要がなく、身体に大きな負担もかからない最新のがん遺伝子検査「リキッドバイオプシー」についてご説明します。

なぜがん遺伝子検査「リキッドバイオプシー」が必要なのか?

一般的な抗がん剤治療は治療効果があいまいなうえ、日常生活に支障を来す副作用のリスクがあります。治療効果があいまいな理由のひとつは、抗がん剤は臓器によって使用できる薬剤が決まっているからです。

例えば、大腸がんの患者さんには大腸がんに保険適用可能な抗がん剤が使われます。しかし、その抗がん剤が効かないと、また別の大腸がんに適用できる抗がん剤を試し、それも効かなければ、さらにと繰り返します。

そうこうしているうちに、がんがどんどん大きくなったり、転移してしまったりする危険性が増すのです。しかも、その間も抗がん剤によるさまざまな副作用のダメージを受け続けるので、患者さんの心身の負担が増し、結果的に抗がん剤治療を断念せざるを得なくなる場合もあります。

さらに、進行がんで身体のあちこちに多発転移がある場合は、転移したがんの遺伝子が、原発巣の遺伝子から変異しているケースが多々あります。そうした場合は、がんの臓器別に選択した抗がん剤ではまったく効果がありません。

つまり、多発転移がある患者さんに対して、効果がないうえに副作用のある抗がん剤を臓器別に選ぶという一般的な抗がん剤治療は、百害あって一利なしなのです。

がんが多発転移している場合は生検をしてがん細胞を調べないと、そのがんに効果的と思われる抗がん剤を投与することが難しくなります。ただ、吸引や切除ができない脳などに転移がある場合は、生検ができません。また、転移したがんの病巣が身体のあちこちに何十個もある患者さんの場合も、すべての病巣から組織を採取することは困難です。

さらに、生検ができたとしても、がんの病巣が必ずしもうまく採れるとは限りません。進行性の肺がん患者さんの約半数は、生検の結果が無効であるというデータもあります。

ちなみに、アメリカでは気道から組織を採取する肺がんの生検で20人に1人は副作用を引き起こしています。日本ではまれですが、治療以前の検査段階でも、そうしたリスクがあるのです。

生検のこうした問題をクリアできるのが、「リキッドバイオプシー」による遺伝子検査です。採血して、血液中のがん遺伝子を解析する手法なので、生検に伴うリスクや負担を軽減できます。さらに、有効な治療選択肢のより早い提案も可能になります。

血液中のがん遺伝子を解析することで有効な治療選択肢が判明

通常、抗がん剤治療を行う際に使用する薬剤は、臓器別に選択するのが一般的です。肺がんなら肺がんに効果があるとされる抗がん剤、乳がんなら乳がんに効果があるとされる抗がん剤を使うといった具合です。

けれど、近年はDNAの遺伝子情報をもとにした「がんゲノム医療」の研究開発が急速に進んでおり、抗がん剤治療の効果を高める方法が開発されています。

がんゲノム医療とはがん組織の遺伝子を網羅的に調べ、個々の患者さんの体質や病状に合わせて行う治療のひとつです。このがんゲノム医療に欠かせないのが遺伝子検査です。

がんの遺伝子検査によって、遺伝子異常に基づいた豊富な情報を得ることができ、患者さんのがんに有効な分子標的薬(※)や効果的な治療選択肢の有無を判定できます。

※分子標的薬:分子標的薬とは、病気の原因となる特定の分子にのみ作用するように作られた治療薬です。

がんにかかわる遺伝子は500以上あるといわれていますが、多数のがん転移がある患者さんに対して生検でそれをひとつひとつ解析することは困難です。

しかしリキッドバイオプシーなら、患者さんの血液から遺伝子情報を網羅的に解析できるので、個々の患者さんのがんの遺伝子に合う分子標的薬などの選択が、生検することなく可能になります。

例えば、Aという型の遺伝子を持っている肺がん患者さんに対しては「遺伝子Aに対応する治療薬」、Bという型の遺伝子を持っている肺がん患者さんに対しては「遺伝子Bに対応する治療薬」、というように同じ肺がんでも患者さん個々の遺伝子情報を解析して、それに合う治療をするのが分子標的薬の治療の基本的な考え方です。

がん遺伝子検査で判定される分子標的薬は、例えば肺がんなら肺がんに効く抗がん剤というわけではなく、本来は乳がんに効くとされている抗がん剤が肺がんに有効であると判定されることもあります。

進行性のすい臓がんを患った高齢男性が、遺伝子検査によって通常は乳がんに用いられる抗がん剤がその患者さんのがんに有効であることがわかりました。その薬を服用していただいた結果、大きな副作用もなく、すい臓がんが縮小する効果が見られました。

がんゲノム医療によるがん遺伝子検査の手順

ここで、当院でも採用しているガーダントヘルス社のリキッドバイオプシーによるがん遺伝子検査の流れをご説明しましょう。

① 採血した患者さんの血液をアメリカの検査機関に空輸

がん遺伝子検査に対応している国内の医療機関で患者さんの血液20mlを採血します。担当医はその血液を検査キットに入れ、アメリカの検査機関に空輸します。

② アメリカの検査機関で血中の遺伝子解析後、日本の医療機関に報告

アメリカの検査機関では、届いた血液の中からがんに関連する74もの遺伝子情報を速やかに解析し、それに基づいた治療選択肢の有無や、臨床試験の有無について報告します。

③ 日本の医療機関から患者さんに検査結果を報告

日本の担当医はその情報を患者さんに伝え、抗がん剤による治療方針を決めます。検査結果がわかるまでの期間は検査した医療機関によって異なります。

がん遺伝子検査の結果自体は医療機関に1週間ほどでフィードバックされるのですが、医療機関の体制によっては、その検査結果について内部で協議するため、さらに日数がかかる場合もあります。転移がある患者さんの場合は、がんの遺伝子が変異しやすいので、検査結果と治療方針をできるだけ早く伝えてくれるように医師に相談しましょう。

がん遺伝子検査が受けられる医療機関は全国にあります。厚生労働省が指定したがんゲノム医療中核拠点病院が12箇所、がんゲノム医療拠点病院が33箇所あり、全国に184箇所のがんゲノム医療連携病院があります(2022年1月1日現在)。

こうした医療機関で検査の適応となるかどうかは、中核拠点病院や連携病院の担当医により判断されます。検査適応となった場合、「がん遺伝子パネル検査」によって一度にたくさんの遺伝子を解析します。それによって特定の遺伝子に異常があることが判明した場合は、その解析結果が「エキスパートパネル」という複数の専門家メンバーによる委員会で検討されます。そこで検討された結果をもとに、担当医は治療効果が期待できる抗がん剤の有無を調べます。効果が期待できる抗がん剤がある場合は、保険適用の薬だけでなく、臨床試験中の薬も含めてその薬を患者さんに実際に使用してもよいかどうかを検討します。もし効果が期待できる抗がん剤がない場合は、別の治療方法を検討します。

こうした複数の手順を経て、検討にかかる期間は約8週間(約2カ月)といわれています。ただ、その間もがんが体内でどんどん増殖や転移をする危険性があるので、ステージ3以上の進行がんの患者さんにとって約8週間という期間は長すぎるといわざるを得ません。

当院のがん遺伝子検査として採用しているガーダントヘルス社のリキッドバイオプシーは保険適用外の自費診療ですが、高感度な遺伝子解析技術「Guardant360」を使用するため、約2週間で患者さんに結果をお知らせできます。その理由は、前述の複数の専門家による検討会エキスパートパネルの手順を、人に代わりAIによって行うことができるからです。約2カ月と約2週間。一刻を争う病状のがん患者さんにとって、この違いが大きく命運を分けるといっても過言ではありません。

がん遺伝子検査「リキッドバイオプシー」の費用

がん遺伝子検査にかかる自費診療の費用は医療機関によって異なりますが、おおよその目安は40万円前後です。検査だけでそんなにかかるのかと思われるかもしれませんが、がん遺伝子検査によって抗がん剤の治療効果が格段に高くなるので、その分、治療期間も短縮でき、トータルに考えると治療費全体を抑えられるのではないでしょうか。

まとめ

がんゲノム医療の趣旨は「がん患者さんはそれぞれの背景が違うので、ひとりひとりに合わせて個別に治療する」です。

リキッドバイオプシーはその趣旨を体現する、ご自身のがんにより合う抗がん剤治療や治療法を導き出せることが期待できる検査です。

もし、ご自身の抗がん剤治療や治療法に疑問やお悩みの方がいらっしゃいましたら、リキッドバイオプシーを行っている医療機関の受診をおすすめします。

【監修】
佐藤俊彦 医師
医療法人 DIC
宇都宮セントラルクリニック 理事

出典:佐藤俊彦『ステージ4でもあきらめない 最新がん治療』(幻冬舎、2022/2/24)

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