肺がんの末期・ステージ4における治療の選択肢について

「末期の肺がんだと診断された」
「治療を続けているが思うような効果が現れない」このような状況で、治療方針や今後について大きな不安を抱えている方もいることでしょう。
しかし、肺がんは末期・ステージ4でも薬物療法を中心とした複数の治療選択肢が存在し、がんの進行を抑えながら生活の質を保つことが可能になっています。また、がん治療に伴う痛みや息苦しさをやわらげる緩和ケアも重要な役割を果たします。
この記事では、肺がん末期の症状と治療の選択肢から、緩和ケアやセカンドオピニオンの活用まで詳しく解説します。
目次
肺がん末期の症状と余命の目安

肺がん末期の生存率や、余命の時期によってみられる主な症状について解説します。
肺がん末期の5年生存率
肺がんの末期は、がんが肺から離れた臓器(脳・骨・肝臓など)や、最初にがんが発生した場所と反対側の肺・胸膜・心膜に転移している状態です。肺がん末期では、手術が難しいとされており、主に薬物療法などでがんの進行を抑えることが治療の中心となります。
肺がんが末期まで進行すると、ほかのがん種と比較しても5年生存率は低く、治療が難しいとされています。5年生存率の統計は以下のとおりです。
| 種類 | 5年生存率 |
|---|---|
| 肺がん全体 | 8.0% |
| 小細胞肺がん | 2.2% |
| 非小細胞肺がん | 9.0% |
出典:
国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」肺がん(肺癌)
国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」小細胞肺がん(小細胞肺癌)
国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」非小細胞肺がん(非小細胞肺癌)
余命3ヶ月で現れる症状
肺がん末期で余命3ヶ月と判断された場合、がんの進行に伴い、咳・息切れ・痛みといった症状が頻繁にみられるようになります。ほかにも倦怠感・食欲不振・体重減少・悪心・嘔吐・むくみなどの身体的症状に加え、闘病への心配ごとによる不安・抑うつといった精神的症状が現れる場合もあるでしょう。
ただし、個人の病状の進行スピードや転移した臓器によって症状は異なります。
余命1ヶ月でみられる症状
肺がん末期で余命1ヶ月程度と診断されると、食欲不振・倦怠感・呼吸困難が日を追うごとに悪化する傾向があります。身体のだるさが増し、少し動くだけでも息が上がるようになり、痛みや息切れの症状も強くなるのです。
ほかにも浮腫みや皮膚の色素沈着、不眠・不安・落ち込みなどの精神的症状も強く出ることが多くなってきます。
転移部位別にみられる症状
肺がんは、脳・骨・肝臓・副腎などに転移しやすい特徴があります。転移した臓器により、以下のような特有の症状が現れます。
| 転移部位 | 症状 |
|---|---|
| 脳転移 | 頭痛、吐き気、麻痺、けいれん、意識障害、ふらつき |
| 骨転移 | 激しい痛み、骨折、脊髄圧迫による麻痺やしびれ |
| 胸膜転移 (がん性胸膜炎) | 胸水の貯留による息苦しさ、咳、胸や背中の痛み |
肺がん末期で最期が近づいた時のサイン

肺がん末期において最期にみられる症状について解説します。さらに、病状が急変する場合の原因や症状についても確認しましょう。
亡くなる数週間前から現れる症状
肺がん末期で亡くなる数週間前からはさまざまな症状が現れやすくなります。
がんの進行により、以前よりも呼吸困難・息切れ・痛みが増加します。極度の疲労感や倦怠感、体力の低下が見られ、食欲不振やそれに伴う体重減少が進行するのです。飲み込む力が弱まる嚥下障害もみられ、徐々に食事や水分摂取が困難になります。
亡くなる約2週間前になると、身体機能の低下や薬物が原因となり、せん妄が現れることもあるのです。
最期の数日〜数時間前の変化
肺がん末期で亡くなる数日~数時間前には、ウトウトと眠っている時間が増え、意識の低下が見られます。起きていたとしても、反応が鈍くなるでしょう。
さらに、気道に痰や唾液が溜まり「喘鳴(ぜんめい)」と呼ばれるゴロゴロとした呼吸音が生じます。呼吸が不規則になったり、胸郭の動きが小さくなり下顎呼吸が見られたりするのです。
肺がん末期で急変時の症状
肺がん末期では、突然の呼吸不全や全身状態の急激な悪化により、突然死に至る可能性があります。
主な急変時の症状として、腫瘍が気道や気管支を圧迫・閉塞することによる呼吸困難、がんが血管に浸潤することによる大量出血が挙げられます。
また、心膜にがんが転移し液体が溜まって心臓が圧迫される心タンポナーデ、血管内の血栓が肺に詰まる肺血栓塞栓症、がん細胞が骨を破壊し高カルシウム血症を発症すると、心臓の機能が低下し急死することもあるのです。
肺がん末期の診断でおこなわれる検査

肺がん末期(ステージ4)の診断において、病状を正確に把握し、適切な治療方針を立てるために複数の検査をおこないます。診断の各段階でおこなわれる検査について解説しましょう。
肺がんの疑いを調べる検査
肺がんの疑いがある場合、まず胸部X線検査をおこない、肺に異常な影がないかを確認します。また、喀痰(かくたん)細胞診で痰にがん細胞が含まれていないかを調べることで、胸部X線検査では確認しにくい肺門部のがんの発見が可能です。
上記の検査で異常が見つかり、肺がんが疑われる場合は、胸部CT検査で、がんの大きさや広がり・リンパ節転移の有無などを確認します。
確定診断のためにおこなう検査
肺がんの診断を確定するには、がんが疑われる部分から組織を採取し、顕微鏡でがん細胞を確認する生検が必要です。
主な方法には、口や鼻から細い内視鏡を入れる「気管支鏡検査」があり、体への負担が比較的少ないとされています。気管支鏡検査ができない場合は、胸部を小さく切開し、肋骨の間から内視鏡を入れて組織を採取する「胸腔鏡検査」をおこないます。
胸水が溜まっている場合は、胸水を採取してがん細胞の有無を調べることもあります。
ステージ決定のためにおこなう検査
肺がんの治療方針を決めるうえでは、病期(ステージ)を明確にすることが重要です。特に、がんの広がり具合や転移の状況を詳しく確認する必要があります。
ステージ決定のためにおこなう主な検査には、脳や骨への転移を調べるMRI検査、骨転移を確認する骨シンチグラフィ、全身のがんの活動状況や遠隔転移を総合的に評価するPET検査などがあります。
ステージ確定後におこなう検査
ステージが確定した後、適切な治療薬を選ぶため、がん細胞の詳しい性質を調べます。
非小細胞肺がんでは、がん細胞の増殖にかかわる遺伝子変異(EGFR遺伝子・ALK融合遺伝子など)の有無を特定するがん遺伝子検査がおこなわれます。がん遺伝子検査により、特定の分子標的薬が効果的かどうか判断可能です。
また、免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測するために、がん細胞の表面にあるPD-L1タンパクの発現量を調べる検査もおこなう場合があります。がん細胞の検査結果に基づいて、個々に合った薬物療法が検討されるのです。
肺がん末期における治療の選択肢

肺がんが末期・ステージ4と診断された場合は、手術による根治は一般的に困難となるため、がんの進行を抑え、患者さんの生活の質(QOL)を保つことを主な目的とした薬物療法や放射線治療が中心となります。それぞれの治療方法について解説しましょう。
抗がん剤治療
抗がん剤治療では、がん細胞の増殖を阻害することでがんを消滅させます。ただし、がん細胞だけではなく正常な細胞にも影響が及ぶため、吐き気・脱毛・白血球減少などの副作用を伴うことがあります。
主に使用される薬剤は、プラチナ製剤・イリノテカン・エトポシド・ドセタキセル・ペメトレキセド・パクリタキセルです。
非小細胞肺がんでは、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせた併用療法が中心です。
小細胞肺がんは、抗がん剤が治療の中心となり、近年では全身状態が良好な場合に限り、免疫チェックポイント阻害薬との併用も認められています。
分子標的薬
分子標的薬は、がん細胞が持つ特定の遺伝子変異やタンパク質を標的にして、がんの増殖を阻害する薬です。従来の抗がん剤に比べて、正常な細胞への影響が少ないという特徴があります。
非小細胞肺がんにおいて使用する分子標的薬には、以下のような薬剤が挙げられます。
| EGFR遺伝子変異 | ゲフィチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ |
| KRAS遺伝子G12C変異 | ソトラシブ |
| ALK融合遺伝子 | アレクチニブ、ロルラチニブ、ブリグチニブ |
| ROS1融合遺伝子 | クリゾチニブ、エヌトレクチニブ、レポトレクチニブ |
| RET融合遺伝子 | セルぺルカチニブ |
なお、小細胞肺がんは抗がん剤のほうが治療反応が良い傾向にあるため、分子標的薬は使用されません。
免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みに働きかけて、免疫力を復活させてがんを攻撃する薬です。
非小細胞肺がん・小細胞肺がんで使用する免疫チェックポイント阻害薬は、それぞれ以下のとおりです。
| 非小細胞肺がん | PD-1阻害薬 | ペムブロリズマブ、ニボルマブ |
| PD-L1阻害薬 | デュルバルマブ、アテゾリズマブ | |
| CTLA-4阻害薬 | イピリムマブ、トレメリムマブ | |
| 小細胞肺がん | PD-L1阻害薬 | デュルバルマブ、アテゾリズマブ |
免疫チェックポイント阻害薬についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
放射線治療
放射線治療では、高エネルギーの放射線をがん病巣に照射することで、がん細胞の増殖を抑えます。肺がん末期においては、がんを根治させる目的よりも、がんによって生じる痛み・咳・出血・呼吸困難といった症状を和らげる目的で実施されます。骨転移による痛みや、脳転移による頭痛・麻痺・けいれんなどの症状軽減に対しても有効です。
放射線治療についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
>>がん放射線治療について種類やメリット・デメリット、期間や回数、費用などを解説
肺がん末期における緩和ケア

肺がん末期の場合、がんの進行を抑える治療とともに、身体的・精神的な苦痛を和らげ、生活の質(QOL)を保つための緩和ケアも重要です。緩和ケアにおける主な対応について解説します。
疼痛コントロール
肺がん末期では、がんそのものや転移・治療に伴う痛みなど、さまざまな原因による痛みが頻繁に起こります。
痛みのコントロールには、医療用麻薬・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)・アセトアミノフェン・鎮痛補助薬などの薬剤が用いられ、痛みの種類や程度に応じて選択します。
医療用麻薬は、定期服用する薬と頓服薬を組み合わせて使用することで、効果的に痛みを和らげます。骨や脳への転移による痛みに対しては、薬剤のほかに放射線治療も有効です。
咳・呼吸困難への対処
肺がん末期では、がんの増大による気道狭窄や胸水貯留などにより、咳や呼吸困難が生じます。原則として、息苦しさの原因を取りのぞく治療がおこなわれ、必要な酸素が足りない場合は酸素療法も併用します。
症状をやわらげる薬物療法として、モルヒネやオキシコドンなどの医療用麻薬が息苦しさや痰のない咳を抑えるために使用されることもあります。がん性リンパ管症による呼吸困難や息切れにはステロイドが有効です。
胸水への対処
がんが胸膜まで広がると「がん性胸膜炎」により、胸水が溜まることがあります。胸水が増えると肺や心臓を圧迫し、息苦しさや心不全の原因となるため、胸部X線検査やCT検査をおこない確認が必要です。
治療は、胸水の量と症状に応じて実施されます。大量の胸水や強い症状がある場合は、胸腔に管を入れて胸水を排出する胸腔ドレナージをおこないます。また、胸腔ドレナージの実施と同時に、胸水が再び溜まるのを防ぐために、胸膜を薬剤で癒着させる胸膜癒着術をおこなうこともあるのです。
精神的苦痛への対応
肺がん末期では、病状の進行に伴う身体的苦痛や将来への不安などから、不安・抑うつ・不眠といった精神症状が生じやすくなります。一人で抱え込まず、家族や医療スタッフに相談することが大切です。
心の変調が食事や睡眠など日常生活に支障をきたす場合、心療内科医・心理士・がん看護専門看護師などによる専門的なケアが必要となります。薬物療法には睡眠導入薬・抗不安薬・抗うつ薬が用いられます。カウンセリングやリラクセーションも有効です。
がん末期に多く見られる“せん妄”に対しても、原因への対処と適切なケアで改善が期待できます。
緩和ケアについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
肺がん末期におけるセカンドオピニオンの活用ポイント

肺がん末期(ステージ4)と診断された場合でも、納得して治療を進めるために、セカンドオピニオンの活用は重要です。セカンドオピニオンを活用するポイントを3つ紹介しましょう。
セカンドオピニオンを検討するタイミング
セカンドオピニオンは、現在の主治医から治療方針の説明があった際に検討するのがもっとも適したタイミングです。また、病状が進行して治療方針を再検討する場面でも活用できます。治療開始後のセカンドオピニオンは、方針変更が難しい可能性があるため注意が必要です。
セカンドオピニオンを希望する場合は、納得できる治療を選択するための患者さんの権利として、担当医に遠慮なく相談しましょう。
受診するための体力と時間の制約を考慮
セカンドオピニオンの受診は、手間と時間がかかり、公的医療保険が適用されないため費用が全額自己負担となります。
肺がん末期の状態は、倦怠感の増強や息切れなど、身体症状が急速に悪化することがあるため、受診できる体力があるか・移動に伴う負担はどうかを慎重に検討することが重要です。また、病状の進行によっては、治療選択に時間的な制約がある場合も考えられます。
現在の主治医と、いつまでに治療方針を決定する必要があるか事前に確認し、体力的な負担を考慮しながら検討しましょう。
移動の負担が少なく済む、オンラインによるセカンドオピニオンも選択肢の一つです。
緩和ケアの視点も重視
セカンドオピニオンを検討する際には、がんの根治や延命治療だけではなく、緩和ケアの視点も考えると良いでしょう。
緩和ケアは、肺がん末期に多く現れる痛みや息苦しさなどの身体的苦痛、不安や抑うつといった精神的苦痛をやわらげ、患者さんの生活の質(QOL)を最大限に保つことを目的としています。
セカンドオピニオンで、緩和ケアに特化した専門医の意見を聞くことで、より効果的に苦痛をやわらげる方法や、利用可能なケア方法について新たな情報が得られる可能性があるのです。
まとめ

肺がん末期・ステージ4と診断されても、治療の選択肢は複数存在します。
従来の抗がん剤に加え、遺伝子変異に応じた分子標的薬や、免疫力を利用する免疫チェックポイント阻害薬など、個々の患者さんに適した薬物療法を選択できるようになりました。また、放射線治療や緩和ケアによるつらい症状の緩和も、生活の質を保つ上で重要な役割を果たします。
セカンドオピニオンを活用することで、より納得のいく治療を見つけることも可能です。一人で悩みを抱え込まず、主治医や家族と十分に話し合い、自分に合った治療計画を立てていきましょう。
【関連記事】
>>余命宣告されてもがんは治る?余命の判断基準や宣告のタイミングなど解説
>>セカンドオピニオンとは?費用や注意点など徹底解説

