リンパ節転移のステージ・治療法とは?わかりやすく解説

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リンパ節転移のステージ・治療法とは?わかりやすく解説

リンパ節転移のステージ・治療法とは?わかりやすく解説

リンパ節転移とは、がんが最初に発生した場所から広がっている状態です。リンパ節転移していると医師から告げられた人は、「余命はどのくらいあるのだろうか」「リンパ節転移しても治療できるのだろうか」と不安が大きくなっていらっしゃることでしょう。

今回はがんのリンパ節転移について、ステージや5年生存率、治療方法をわかりやすく解説します。ぜひ最後までチェックしてください。

リンパ節転移とは?

リンパ節転移とは?

リンパ節転移とは、がん細胞が最初に発生した場所から離れてリンパ管の中に入り、リンパ液の流れに乗ってほかのリンパ節にたどり着き増殖することです。リンパ行性転移とも呼ばれています。

リンパ節転移は、最初にがんが発生した場所からもっとも近いリンパ節で始まります。がん細胞が近くのリンパ節で増殖すると、さらにリンパ液の流れに乗って、だんだん遠くのリンパ節へ飛び火していくのです。ステージが進むと全身にがん細胞が散らばっていくため、リンパ節転移は医学的な見通しの目安になっています。

がんがリンパ節転移した際のステージ

がんがリンパ節転移した際のステージ

リンパ節転移が認められた際のステージは、がんの種類によって違います。代表的ながんについて、リンパ節転移のステージを解説します。

乳がん

乳がんでリンパ節転移が認められると、ステージⅡ以上と診断されます。ステージⅡにおけるリンパ節転移の範囲は、乳房から近くの腋窩リンパ節の転移までです。

内胸リンパ節へ転移がおよぶと、ステージⅢAもしくはⅢBと診断されます。鎖骨上のリンパ節まで転移すると、ステージⅢCと診断されます。

大腸がん

大腸がんでは、がんの大腸壁へどのくらい入り込んでいるかにかかわらず、リンパ節転移がみられるとステージⅢ以上と診断されます。リンパ節のみならず、大腸から遠くの臓器に転移が見つかればステージⅣです。

子宮頸がん

子宮頸がんでは、がん細胞のサイズや浸潤の程度にかかわらず、リンパ節転移が認められるとステージⅢC以上と診断されます。ステージⅢCは、どのリンパ節まで広がったかにより、さらに2段階に分類されます。

骨盤リンパ節のみ転移が認められる場合はステージⅢC1です。傍大動脈リンパ節に転移がみられた場合はステージⅢC2と診断されます。

甲状腺がん

甲状腺がんは、年齢とがんの組織型によって、リンパ節転移が認められた際のステージが違います。55歳未満の乳頭がん・濾胞がん・低分化がんでは、リンパ節転移の有無は関係なく、遠隔転移の有無で分類され、ステージⅠもしくはⅡと診断されます。55歳以上の乳頭がん・濾胞がん・低分化がんでリンパ節転移が認められた際は、ステージⅡ以上です。

髄様がんは、年齢に関係なく、がんのサイズ・拡散・転移の有無によって分類され、リンパ節転移が確認された場合はステージⅢ以上と診断されます。未分化がんは進行が早く予後不良であり、発見された時点でステージⅣです。

未分化がんのステージⅣは、がんのサイズ・転移の有無によって3段階に分類されます。リンパ節転移が認められるケースでは、ステージⅣB以上と診断されます。

肺がん

肺がんでリンパ節転移が認められるステージⅡB以上と診断されます。がんのサイズやリンパ節転移の範囲で次のように分類します。

リンパ節転移が最初にがんの発生した場所と同じ肺で、がんのサイズが5cm以下であればステージⅡBです。

リンパ節転移が最初にがんの発生した場所と同じ肺であってもがんのサイズが5cmを超えていたり、リンパ節転移が気管分岐部まで広がるとステージⅢAになります。

リンパ節転移が最初にがんが発生した場所と反対側の肺までおよぶとステージⅢB以上です。

胃がん

胃がんはリンパ節転移がみられるとステージⅡ以上と診断されます。がんの深さ次第でステージは以下の通りに分類されます。

がんが胃壁の固有筋層にとどまっていればステージⅡA、

がんが胃壁の漿膜下層より深く浸潤していれば、ステージⅢ以上です。

食道がん

食道がんはリンパ節転移が認められるとステージⅡ以上と診断され、がんの広がり具合やリンパ節転移した数によって、以下のように分類されます。

がんが粘膜下層にとどまり、近くのリンパ節への転移が1~2個であればステージⅡです。

がんが食道外膜にとどまり、隣接臓器へ浸潤がなく、近くのリンパ節転移が6個以内であればステージⅢAになります。

がんが食道外膜を超えて、隣接臓器へ浸潤している可能性があれば、リンパ節転移の数にかかわらずステージⅢBです。

がんがリンパ節転移した際の5年生存率

がんがリンパ節転移した際の5年生存率

がんのリンパ節転移が認められたとき、余命が気になる人もいることでしょう。がんの余命は、人によってがんの性質・ステージ・合う治療が異なるため、予測が非常に難しいのです。

がんの余命に代わるものとして5年生存率があります。5年生存率とは、がんと診断・治療を受けてから5年後に生存している割合を示したものです。

5年生存率の値によって、該当するがんの治療成績がよいかどうかの指標になります。数値が100%に近いほど治療成績がよく、低くなるほど治療が困難ながんと言えます。

5年生存率は、がんの種類によって違います。リンパ節転移後の5年生存率について、代表的ながんでみていきましょう。

乳がん

ステージⅡ94.6%
ステージⅢ80.6%
ステージⅣ39.8%

大腸がん

ステージⅢ75.5%
ステージⅣ18.3%

子宮頸がん

ステージⅢ64.0%
ステージⅣ25.9%

甲状腺がん

甲状腺がんは、がんの組織型でリンパ節転移がみられた際の5年生存率が違います。

乳頭がん・濾胞がん

ステージⅠからⅢまでは98%以上で、もっとも病状が進んだステージⅣでも89.5%です。

髄様がん

症例数が非常に少ないため、ステージⅢはデータがなく、ステージⅣのみ公開されています。
ステージⅣ:85.1%

未分化がん

ステージⅣ:6.1%

肺がん

肺がんでリンパ節転移がみられた場合、がんの組織型によって5年生存率が違います。

非小細胞がん

ステージⅡ52.6%
ステージⅢ30.4%
ステージⅣ9.0%

小細胞がん

ステージⅡ28.5%
ステージⅢ17.5%
ステージⅣ2.2%

胃がん

ステージⅡ67.2%
ステージⅢ41.3%
ステージⅣ6.3%

食道がん

ステージⅡ48.9%
ステージⅢ27.4%
ステージⅣ8.7%

がんはリンパ節転移しても治るのか?

がんはリンパ節転移しても治るのか?

がんがリンパ節に転移しても、以下のケースでは治る確率が高くなります。

  • がんが発生した場所から近くのリンパ節のみ転移している。
  • リンパ節転移した数が少ない。
  • リンパ節転移した部分を手術で完全に切除できる。

上記であげた条件に当てはまらなくても、放射線治療や薬物療法など治療方法が日々進歩しています。リンパ節転移しても完治すると断言はできませんが、治療をおこなってリンパ節転移したがんを死滅させたり、減少したりすることは可能です。

がんがリンパ節転移した際の治療方法

がんがリンパ節転移した際の治療方法

代表的ながんにおいて、リンパ節転移が認められた際の治療方法をみていきましょう。

乳がん

乳がんでリンパ節転移がみられた際の標準治療は以下のとおりです。

ステージⅡからステージⅢAまで

術前薬物療法をおこなったのち、乳房部分切除術もしくは乳房全切除術と、リンパ節郭清をおこないます。必要に応じて術後薬物療法や術後放射線治療が追加されます。

ステージⅢBからステージⅣ

薬物治療を中心におこない、治療効果によって手術もしくは放射線治療が追加されます。薬物療法は、乳がんのタイプ次第で、ホルモン療法・分子標的薬・抗がん剤から選択します。

大腸がん

大腸がんでリンパ節転移が認められた際の標準治療は次のとおりです。

ステージⅢ

開腹手術もしくは腹腔鏡下手術とリンパ節郭清がおこなわれ、術後に補助化学療法が推奨されています。補助化学療法に使われるのは、プラチナ製剤・代謝拮抗薬が中心です。

ステージⅣ

がんが遠くに転移した場所(遠隔転移巣)の切除ができるかどうかで治療が違います。遠隔転移巣・がんが最初に発生した場所(原発巣)ともに切除できる場合は手術の選択が可能です。

遠隔転移巣・原発巣ともに切除できないときは、薬物療法もしくは放射線治療がおこなわれます。遠隔転移巣の切除は不可だが原発巣は切除できる場合は、手術が勧められることもあります。

子宮頸がん

子宮頸がんでリンパ節転移がみられるステージⅢ以上では、根治をめざして同時化学放射線治療がおこなわれます。手術はおこないません。同時化学放射線治療とは、放射線治療と化学療法を同時におこなうものです。

化学療法は放射線治療の効果を高めたり、全身に広がっている小さながん細胞を減らしたりする目的で併用します。子宮頸がんの化学療法で用いる薬は、プラチナ製剤が一般的です。

甲状腺がん

甲状腺がんでリンパ節転移が認められた際の治療方法は、がんの組織型によって違います。乳頭がんは、甲状腺の全摘とリンパ節郭清をおこない、術後に放射性ヨウ素内用療法もしくはTSH抑制療法をおこないます。

濾胞がんでは、遠隔転移が確認されなければ片葉切除をおこない、病理検査のあと、がんのサイズや体の状態を考慮して、残った甲状腺の摘出手術が追加されます。遠隔転移している場合におこなうのは、甲状腺全摘手術です。甲状腺を全摘したときは、補助療法で術後に放射性ヨウ素内用療法がおこなわれます。

低分化がんは、甲状腺全摘手術と術後に放射性ヨウ素内用療法をおこないます。髄様がんでおこなう治療は、甲状腺の片葉もしくは全摘手術とリンパ節郭清です。

未分化がんは予後因子によって治療方法が違います。予後不良因子が1つまでであれば、甲状腺全摘手術をおこなったのち、補助療法で放射線治療もしくは化学療法をおこないます。予後不良因子が2個以上でおこなう治療は、放射線治療・薬物治療を組み合わせた集学的治療です。

肺がん

肺がんでリンパ節転移が認められた際の治療方法は、がんの組織型で違います。

非小細胞がん

ステージⅡB・ⅢAは体の状態が良好であれば、手術をおこなったのち薬物療法をおこないます。手術が難しい場合は、放射線治療もしくは化学放射線療法から選択します。ステージⅢB以上は、放射線治療・化学放射線治療・薬物療法から選択可能です。

小細胞がん

小細胞がんはステージにかかわらず体の状態によって、化学放射線療法もしくは薬物療法を選択します。

胃がん

胃がんでリンパ節転移がみられる場合、胃切除とリンパ節郭清が基本的な治療です。胃がんでは、手術後の病理分類によって追加される治療方法が違います。

ステージⅡ・Ⅲと判定されたときは再発を防ぐための術後補助化学療法をおこないます。ステージⅣでおこなうのは、手術で取り切れなかったがんを抑える薬物療法です。

胃がんでは、手術前に推定したステージと病理分類後のステージが異なることがあります。また、大きな塊を作ったリンパ節が手術前に見つかった際は、術前化学療法をおこない、胃切除だけではなく、胃周辺の臓器の合併切除も検討します。

食道がん

食道がんでリンパ節転移がみられる状況では、ステージ次第で治療方法が違います。

ステージⅡ・Ⅲ

手術可能な体力があれば、術前化学療法をおこなったのち手術します。手術は不可だが放射線治療が可能ならば、根治的化学放射線療法をおこないます。手術も化学放射線療法も難しいケースは、放射線治療もしくは化学療法をおこないます。

ステージⅣ

ステージⅣAでは、全身状態が良好ならば化学放射線療法をおこないます。体力的に厳しいケースでは、単独の放射線治療です。ステージⅣBでは化学療法が標準治療となっています。

まとめ

セカンドオピニオン制度では、主治医と別の医療機関の医師から意見を聞くことができる

がんがリンパ節転移しても、できるだけ早いうちに発見・治療ができると5年生存率は比較的高く、余命に期待が持てます。リンパ節転移があまり広がらず数も少ないケースでは、がんを手術で取り除くことができます。手術で切除できなくても、放射線治療や薬物療法をおこない、リンパ節転移したがんを死滅させたり減らしたりすることが可能です。

がんの治療方針は、主治医と十分話し合うことが大切です。主治医の見解を聞いたうえで、さらに治療方針の理解を深めたかったり可能性を探したかったりする場合は、セカンドオピニオン制度を利用しましょう。

セカンドオピニオン制度では、主治医と別の医療機関の医師から意見を聞くことができます。がんのリンパ節転移がみられたケースでも、納得のいく治療を受けるために、今回の記事を参考にしていただければ幸いです。

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