がん治療の負担を減らすトモセラピーのヘリカル回転照射とは?
トモセラピーには、二種類の照射モードが備わっています。
一つは「ヘリカル回転照射モード」、もう一つは「固定他門照射モード」です。
今回は二回に分けて、この二つの照射モードについてお話します。
ここでは「ヘリカル回転照射モード」を取り上げます。
ヘリカル回転照射モード
ヘリカル回転モードの「ヘリカル」、英語のスペルは「helical」で、日本語に訳すと「らせん状」です。
ヘリカル回転モードでは、患者さんが仰向けになったカウチは水平移動し、ガントリー(トモセラピーのドーム部分)はこの周りを回転します。
このらせん状の動きが名前の由来になりました。
ヘリカル回転モードは「CT」と「放射線照射」に作業が分けられます。
まずは、一般的なCTとヘリカルCTの違いを見てみましょう。
境目のがんを見逃さないヘリカルCT
一般によく知られるCTでは、人体を輪切りにしたような撮影を行います。
何枚も撮影するためには、それぞれの断面を撮影するたびに、患者さんが乗る撮影代を少し動かしては止め、また動かしては止め、という作業を繰り返す必要があります。
このように撮影された輪切りの画像では、どうしても境目ができますね。
実は、稀にではありますが、この境目にがんが隠れ、見逃されてしまうことがあるのです。
一方、ヘリカルCTは、撮影代を水平に移動させながら撮影装置を回転させて連続撮影を行います。
この撮影法では、境目はできず、一続きのらせん状の断面になります。境目ができないということは、境目にがんが隠れてしまう不安がないということです。
トモセラピーを用いた治療では、治療計画時と治療直前にCTを撮影します。
二つの画像を照合して放射線を照射するトモセラピー――。
ヘリカルCTで得られる境目のない画像を使えば、境目のない放射線照射ができることになります。
境目にがんを見落とさないことと、境目のない画像情報。この二点はヘリカルCTの大きなメリットです。
次は、ヘリカル回転を用いた放射線照射について見てみましょう。
一回の治療で複数のがんに照射できる
トモセラピーとサイバーナイフそれぞれの特徴についての記事で、トモセラピーが進行がんや多発がんを得意としていることについてお話しています。
このようにトモセラピーが多発がんに向いていると言われるのは、ヘリカル回転照射で放射線を照射することができることによります。
なぜヘリカル回転照射ができると、多発がんや転移がんに強くなるのでしょうか?
それは、一回の治療で治療できる部位の数の違いに秘密があります。
実は従来の放射線治療装置では、一回の治療で一か所にしか放射線照射ができませんでした。
照射位置を変えるためには、治療装置をセットしなおさなければならなかったからです。
必然的に治療回数や来院回数も増え、患者さんへの負担(金銭的にも時間的にも)は大きくなっていました。
では、トモセラピーならどうなのか?
トモセラピーのヘリカル回転照射では、患者さんの身体の周囲を回転するガントリーから放射線が照射されます。
これは、患者さんの乗るカウチとガントリーの位置を調整するだけで、照射部位を変えられるということです。
このことにより、一回の治療で多くの部位に放射線を照射することができるようになりました。患者さんの金銭的、肉体的、時間的な負担はぐっと軽くなっています。
ヘリカル回転照射の最大のメリットです。
まとめ
トモセラピーのヘリカル回転モードにより、治療困難とされていた転移がんや多発がんの患者さんが、多く治療を受けられるようになりました。
高齢のがん患者が増えている時代、より負担の少ない装置やシステムが増えていくことが必要とされています。