乳がんの診断やリ・ステージングに特化した3つの画像診断機器

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乳がんの診断やリ・ステージングに特化した3つの画像診断機器

がんの画像診断機器の中には、特定の部位のがんに特化したものがあります。今回取り上げるのは、乳がんの診断やリ・ステージングに特化した3つの画像診断機器です。
3つの診断機器とは「トモシンセシス」「PEM」、そして「ABVS」です。
どれもあまり一般に知られていない名前ですが、いずれも乳がんの確実な診断やリ・ステージングに欠かせない機器です。どういう仕組みで、どういう風に役立つのか、いっしょに見ていきましょう。

画像診断

トモシンセシスはマンモグラフィの3D版

乳がんと言えばマンモグラフィ、そう言っても過言でないくらい、ここ数年でマンモグラフィはすっかり有名になりました。
マンモグラフィは、乳房を透明な板で挟んで撮影するX線撮影装置、つまりはレントゲン装置です。乳房をつぶすように挟むので「痛い」と言われる方も少なくありません。
レントゲンですので、当然診断に用いる画像は平面のものです。

一方で、立体的に検査部位をとらえることができる「3Dのマンモグラフィ」として注目されているのが、トモシンセシスです。

トモシンセシス

トモシンセシス(Tomosynthesis)はトモグラフィー(Tomography・断層)とシンセシス(Synthesis・合成)を合わせた名前がつけられた、新しい画像診断技術です。
現場では「トモシン」と呼ばれることもあります。CTと同じような断層写真を組み合わせるタイプの画像診断ですが、CTに比べて被ばくやコストが抑えられる仕組みになっています。

従来の二次元のマンモグラフィで特に問題になっていたのが、乳腺の発達した方の診断やリ・ステージングでした。
実はマンモグラフィでは乳腺も腫瘍も同じように白く映ります。そのため、従来のマンモグラフィでは、乳腺濃度の濃い方の腫瘍は発見しづらかったのです。
角度を変えて断層的に撮影ができるトモシンセシスによる画像診断では、このようなケースでも、より正確な画像診断ができるようになっています。

PEMは乳がん専用のPET

がん検査の一つにPET(ペット・Positron Emission Tomography・ポジトロン断層法)というものがあります。
がん細胞の「正常細胞より多くのブドウ糖を必要とする」という特徴を利用して、がん細胞に目印をつける検査方法です。従来の検査に比べて、明確にがんが可視化される検査方法で、今後の活用が期待されています。

pem

そのPETを乳がんに特化させたのがPEM(ペム)です。
実は、通常のPETでも乳がんの検査自体は可能です。ただし、乳がんの発見率には問題がありました。
PEMは、乳がんの発見率を上げることを目的に、乳がん専用に作られた機器です。
乳がんが生じる乳房の部位に合わせて、PETのものよりも高感度のセンサー、そして精度の高いカメラを搭載しています。

これらの高感度の設備により、PEMでは、今までのPETでは発見できなかった、小さながんも発見できるようになりました。
がん細胞そのものに目印をつけるので、マンモグラフィに不向きな、乳腺が発達した方の診断にも活躍します。

もう一つ、PEMが活躍するのが、乳房再建や豊胸手術を受けた方の乳がん検査においてです。
乳房再建、豊胸手術のどちらも、マンモグラフィやMRIでの乳がん検査では病変を発見するのは難しいとされています。乳房の中身が自家組織であれ、シリコンパックであれ、画像の制度が著しく落ちるためです。
またシリコンパックは、破裂を招く可能性があることも、マンモグラフィを受けられない理由の一つです。

がんを可視化するPETやPEMは、医師による誤診やがんの見逃しも減らすことができるとされる、期待の画像診断です。

ABVSは超音波診断

abvs

最後に紹介するのが、ABVS(Automated Breast Volume Scanner・超音波自動ブレストボリュームスキャナー)です。ABVSは乳房専用の超音波検査機です。

患部にゼリーをつけて、ローラーのような機械(プローブと言います)をコロコロと滑らせる、そのような超音波検査を受けたことがある方はいませんか?
別名エコー検査とも呼ばれる、これが従来の超音波検査です。
妊娠中に赤ちゃんの様子を見たり、泌尿器科で腎臓や膀胱の状態を確認したり、もちろん各科でがんの診断にも使われてきた、おなじみの検査です。

従来の超音波検査では、医師が肉眼で見て検査をしながら、必要に応じて何枚か写真を撮る、というのが一般的でした。残念ながら、この方法では、医師の腕次第では小さながんが見逃される可能性もゼロではありません。

一方ABVSでは、自動で動くプローブが1分間に約300枚の画像を取得します。医師の腕に依存しないので、より多くの方が、高品質の検査を受けられるようになります。
また、パソコン上でこれらの画像を組み合わせて、縦からも横からも診断できるので、より小さながんもより正確に診断できるようになりました。

まとめ

がん画像診断

今回は、トモシンセシス、PEM、そしてABVSという、3つの画像診断装置を紹介しました。いずれも、乳がん治療の未来を支えると期待される画像診断です。
では、この三つさえあれば、従来のマンモグラフィやMRI、CTは不要なのか?と言えば、その答えはNOです。
がんの診断で大切なのは、一つの方法に頼り過ぎないということです。がん診断に間違えがあってはいけません。そのために、複数の検査を組み合わせて、より正確な診断を行う必要があります。

現在の診断に不安のある方や、家族歴などから乳がんの心配があるという方は、ぜひ画像診断に力を入れているクリニックの門をたたいてみて下さい。

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