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オプジーボとキイトルーダの違いとは

自己免疫細胞を活性化させてがんを治療する免疫療法は、新たな可能性を秘めた治療法として高い注目を集めています。
オプジーボとキイトルーダはどちらも免疫療法で用いる薬剤ですが、メカニズムは同じであるものの異なる特徴を持っています。

この記事では、オプジーボとキイトルーダの費用や適用疾患、保険適用となる範囲の違いなどについてご紹介すると共に、免疫療法とは一体どのような治療法であるのか、概要やメカニズムについてもご紹介します。

免疫療法とは

免疫とは

薬剤の違いを解説する前に、まずはオプジーボとキイトルーダを使用するがん治療である「免疫療法」について解説します。

免疫とは

私たちの生活空間には、あらゆる細菌やウイルスが存在しています。そのような環境下でも健康を保つことができているのは、体内で免疫という防御システムが働いているからです。
免疫とは、人体にとって異物や有害となる物質を敵とみなし排除するシステムのことであり、主に2種類の免疫があります。

1. 自然免疫:生まれつき備わっている免疫システムです。病原体が持っているパターンを認識し、即座に攻撃、排除します。

2. 獲得免疫:後天的に獲得した免疫システムです。体内に侵入した病原体の情報が記憶されることで、再度同じ病原体が侵入してきたとき、より強力かつ早急に排除できるようになります。
一度かかると、かかりにくくなる病気がある理由は、このような仕組みがあるためです。

この2種類の免疫システムが相互に作用することによって、日常的に感染症にかかることなく健康を維持することができるのです。

免疫療法の特徴

免疫療法とは、有害物質を排除する働きを持つ免疫システムを応用し、がん細胞を攻撃する治療法のことをいいます。

標準治療といわれている手術や放射線、薬剤による治療では、がん細胞に対して直接的にアプローチします。これに対し、免疫療法は自己の免疫細胞を活性化させることで間接的にがんを攻撃する治療法であり、アプローチが異なります。
以前までは標準治療を3本柱としてがんの治療方針を決める形が主流でしたが、現在では研究が進み、免疫療法が4本目の柱として確立されました。

免疫療法には、細胞の活性化に伴い全身性の効果が期待できること、副作用が少なく身体的負担も非常に少ないといったメリットがあります。
しかしながら、細胞の状態によって効果の発現に差が出るというデメリットがあり、非常に高い効果を得られる人もいれば、効果が少ない人がいるなど、個人差の大きい治療法です。
また、効果の発現にも時間がかかるため、長期的な治療方法であるといえます。

免疫療法の種類

免疫療法は、患者自身の免疫細胞を活用する能動免疫療法と、がん細胞を攻撃する免疫細胞を体外でつくり投与する受動免疫療法の2つに大別されます。
それぞれの詳細は以下のとおりです。

1. 能動免疫療法
・免疫チェックポイント阻害薬
がん細胞は、免疫に対して「攻撃するな」という命令を出すことで、攻撃されるのを回避する性質があります。これを免疫チェックポイントと呼びます。
免疫チェックポイント阻害薬では、免疫細胞に作用する抗体(異物を排除しようとする物質)を薬剤投与することで、免疫チェックポイントを阻害し、がん細胞を攻撃します。

・がんワクチン療法
がん抗原(免疫が異物を認識するための目印)を投与することで、抗体などを介さずに免疫細胞そのものが直接攻撃できるようになる反応「細胞性免疫反応」を起こし、がん細胞への攻撃を促します。

2. 受動免疫療法
・細胞移入療法(CAR-T療法)
自分の免疫細胞であるT細胞を取り出し、がん細胞を攻撃するCAR-T細胞という細胞に変換したうえで再度体内に戻すことにより、強力な免疫細胞でがん細胞を攻撃します。

このように、どの物質を体内に投与するか、どんな薬剤を使用するかによって、さまざまなアプローチでがん細胞を排除する治療法となっています。

がんと免疫の関係について

がんと免疫の関係について

人間の体内では、1日に数千個のがん細胞が発生しているといわれています。発生したがん細胞は、免疫システムの働きによって排除され続けることにより、健康な身体を維持することができています。

しかし、一部のがん細胞は体内の免疫システムを回避し、体内で増殖を繰り返します。その結果、悪性腫瘍が発生します。

免疫システムが正常に働いているにも関わらず、がん細胞はどうして体内で増殖し続けることができるのでしょうか。
その理由は、がん細胞が免疫システムをさまざまな手段で回避しているからだといわれています。

例えば、がん抗原の表出の低下。
がん細胞は、細胞の表面に「がん抗原」という特有のタンパク質を持っています。免疫システムはこの抗原に反応し、有害な物質であると判断した場合に排除していきます。

そのため、目印であるがん抗原が見えなくなれば、免疫細胞はがん細胞を見つけることができず、排除することができません。そうすることにより免疫システムを回避し体内に残存し、増殖を起こすのです。

もう一つは、免疫抑制物質の産生と誘導。
本来、人間には恒常性(ホメオスタシス)という身体におけるあらゆるバランスを常に一定に保とうとする調節機能があります。
免疫システムにおいては、免疫細胞が過剰に増えることで正常な細胞まで攻撃してしまうことを防ぐため、免疫細胞の働きを抑える「免疫抑制物質」という物質が働いています。
がん細胞は、免疫システムから回避するために免疫抑制物質を産生し、排除しようと働きかける免疫細胞を休息状態へ導くことで体内に残存します。

このように、がん細胞はあらゆる形で免疫システムを潜り抜け、体内に残ろうとしているのです。このようながん細胞の回避手段のことを「免疫逃避機構」といいます。

オプジーボとキイトルーダの違いとは

オプジーボとキイトルーダの違いとは

オプジーボとキイトルーダは、どちらも免疫チェックポイント阻害薬であり、同じ抗PD-1抗体として分類されています。メカニズムは同じであるものの、それぞれ異なる点がいくつかあります。
この項目では、オプジーボとキイトルーダの違いについてご紹介します。

適応疾患

<共通する適応疾患>
非小細胞肺がん、悪性黒色腫、腎細胞がん、大腸がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、食道がん

<オプジーボの適用疾患>
胃がんや悪性胸膜中皮腫

<キイトルーダの適用疾患>
乳がん、尿路上皮がん

免疫チェックポイント阻害薬の適応疾患が徐々に拡大し、様々ながんの種類に使用することができるようになってきました。

治療前検査の有無

免疫療法は自己の免疫細胞を活用してがん細胞にアプローチする方法であることから、治療効果には個人差があります。そのため、効果予測をするための事前検査としてバイオマーカーが用いられることがあります。

キイトルーダの場合は、ファーストラインとして使用が可能な非小細胞肺がんなどでは必須の検査となっています。

オプジーボの場合は必須ではないですが、併用治療選択の際の指標や治療効果の有効性を確認するために使用することがあります。

投与量や期間

オプジーボとキイトルーダでは、適切な投与量や治療期間が異なります。

・オプジーボ
成人の場合、1回240mgを2週間間隔または、1回480mgを4週間間隔で点滴投与します。

・キイトルーダ
成人の場合、1回200mgを3週間間隔または、1回400mgを6週間間隔で30分かけて点滴投与します。

このように、オプジーボの方は1回量がやや多く期間もキイトルーダに比べて短い特徴があります。

副作用

オプジーボとキイトルーダは同じメカニズムであることから、副作用の違いはありません。
主な副作用は以下になります。

① 肺機能障害
主に間質性肺炎を起こします。息苦しさや息切れなど呼吸機能の不調が出現しやすくなります。

② 消化管障害
腸管が炎症を起こすことにより、下痢や腹痛などお腹の不調が起こります。

③ 内分泌・代謝障害
ホルモンバランスの低下によりインスリン分泌にも影響を及ぼし、1型糖尿病の発症リスクが高まります。

④ 血液障害
血液内の成分が減少することにより出血しやすくなることがあります。それと同時に循環障害が起こり、静脈血栓症といった症状も引き起こすことがあります。

⑤ 肝機能障害
肝臓に炎症が起こることで肝炎や肝不全の発症リスクがあります。

⑥ 甲状腺機能障害
甲状腺機能が低下することにより、倦怠感や体重の増減など身体の不調が起こるリスクがあります。

⑦ 神経障害
主に感覚麻痺や手足の痺れが出現することがあります。

⑧ 腎障害
腎臓に炎症が起こることで、尿量の減少に伴う浮腫やホルモン分泌低下による貧血、炎症による発熱、倦怠感の持続が起こることがあります。

免疫療法における副作用は、免疫機能を抑制させる分子を活性化させることにより、免疫システムが過剰に反応しやすい状況となることから起こります。
そのため、活性化した免疫細胞が誤って正常細胞を傷つけてしまうことがあります。それにより細胞が炎症をおこし、身体にさまざまな症状を引き起こすのです。

ファーストラインでの使用

ファーストラインとは、最初におこなう一次治療のことをいます。本来は他の治療法を実施し、セカンドラインとしてしか免疫療法は実施することができませんでしたが、キイトルーダに限り、非小細胞肺がんでの使用が認められています。

保険適用と費用相場

オプジーボとキイトルーダによる治療は、すべてが保険適用となるわけではありません。がんの種類によっては、保険適用外となる場合があります。そのため自由診療の場合は費用負担が大きくなるので注意しましょう。
保険適用となる疾患と費用相場は以下のとおりです。

<オプジーボ>
・保険適用部位
悪性黒色腫や非小細胞がん、頭頸部がん、胃がん(切除不能なもの)
・費用相場
100mgあたり15.5万円

<キイトルーダ>
・保険適用部位
一部の皮膚がんと肺がん
・費用相場
100mgあたり約24.4万円

このように、保険適用部位や費用相場を比較してみると、現段階ではオプジーボのほうが適用範囲が広く費用負担も少ないことがわかります。

併用治療における可能性について

併用治療における可能性について

免疫チェックポイント阻害薬は、個人の感受性によって効果の発現度合いが異なるため、治療効果は決して確実性の高いものではありません。
しかし近年、新たに免疫療法と光免疫療法を併用した治療が高い注目を集めています。

光免疫療法とは、がん発生部位に対して近赤外線を照射することで、がん細胞を破壊するという治療方法です。がん細胞にだけ付着する性質を持つ薬剤を投与することで、静脈を介してあらゆる部位へ行き渡らせます。その後、薬剤に反応する光をあてることで、がん細胞だけを攻撃できるのです。

この治療方法では、直接的にがん細胞を破壊するだけでなく、破壊されたがん細胞の破片を他の正常細胞が取り込むことで免疫細胞が活性化するといわれています。そのため、全身性の再発や転移の予防にも役立ちます。

このような仕組みを持つ光免疫療法を実施する前に、免疫チェックポイント阻害薬で免疫細胞を活性化・強化させることで、さらなる治療効果が期待できるといった仕組みになっています。
免疫チェック阻害薬単剤での治療効果は約22.2%ですが、光免疫療法と併用することにより60%まで上昇するといわれています。

このように、免疫療法の画期的な治療システムは単体だけでも効果を発揮しますが、光免疫療法と併用することで効果の増強にも役立つことが明らかになっています。

まとめ

免疫療法は従来の標準治療とは大きく異なり、自己の免疫細胞を活用し、がんと闘うことができる画期的な治療方法です。

身体的負担が少なく、痛みもない、全身に作用するといったメリットがあり、がん患者にとって希望となる治療方法の一つであるといえます。

しかし現在のところ、保険適用の範囲が限られていることから、場合によっては経済的負担が大きくなる可能性があります。また、免疫細胞は個人の感受性によって効果の発現率が異なるため、必ずしも期待した結果が出るとは限らないといった課題も多く残されています。

単独治療として実施されることも多いですが、他の治療法と併用することで治療効果が増大する可能性も見られていることから、研究が進むことにより免疫療法の位置付けが変わってくるかもしれません。
免疫療法は多くの可能性を秘めた治療方法であるといえるでしょう。

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