卵巣がんとは?生存率・症状や治療法について解説

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卵巣がんとは?生存率・症状や治療法について解説

卵巣がんとは?生存率・症状や治療法について解説

卵巣がんは40〜60代の女性の約1%が発症する病気であり、進行前に治療すれば生存率の高いがんです。定期的に検査を行い、早期発見・早期治療をすることが重要だと考えられています。

そのため、まずは卵巣がんがどのような病気であるのかを知り、病気がどのように進行するのかを学びましょう。検査や治療の方法についても解説しますので参考にしてみてください。

卵巣がんとは?

卵巣がんとは?

卵巣がんとは、子宮の両側にある親指大の器官「卵巣」にできる悪性腫瘍のことです。卵巣は卵子の保存・成熟といった妊娠や出産に関わる働きだけでなく、女性ホルモンを分泌することで身体の状態をコントロールしています。

卵巣に保存されている卵子は卵管采→卵管→子宮へと周期的に送られ、このタイミングで子宮内膜が厚くなります。そして受精しなければ生理が来ますが、このリズムをコントロールしているのも卵巣なのです。

そのため、卵巣がんには妊娠・出産の有無と女性ホルモンのバランスが深く影響していると考えられています。では卵巣がんになりやすいのはどのような人なのでしょう?

卵巣がんになりやすい人は?

卵巣がんになりやすいのは妊娠・出産経験のない人であるといわれています。その理由としては、妊娠・出産をしていない人のほうが排卵の回数が多いためと考えられています。

妊娠〜産後の生理開始までは個人差がありますが2〜3年程度、排卵がストップすることになります。その間、卵巣はホルモンバランスのコントロールを続けますが、排卵がストップしているのでかかる負担が少なくなります。なので妊娠・出産をしていない人ほど卵巣に負担がかかりやすいと考えられます。

また子宮内膜症など女性特有の病気がある場合や遺伝的に卵巣がんになりやすい方もいます。これらの要因に年齡や排卵状況などの要素が組み合わさり、卵巣がんが発症すると考えられています。

卵巣がんになる確率は?

1年間に100,000人あたり約13〜15人程度が卵巣がんに罹患するといわれていますので、確率としては0.013〜0.015%程度と推定されます。女性の生涯を通して考えると約1〜2%程度の確率になります。

100年間で考えると1.3〜1.5%です。このうち40〜60代で80%程度が罹患すると仮定すると、好発年齢である40〜60代の女性の約1%程度が卵巣がんになると想定されます。

卵巣がんになりやすい年齢は?

40代よりも50代そして60代のほうが卵巣がんになりやすいといわれています。これは排卵回数が増えるほど卵巣がんになる可能性が高まると考えられているためです。

また閉経後に卵巣がんになる女性が多いことも50〜60代で発症しやすいことと関連しています。閉経によるホルモンバランスの変化、卵巣の役割の変化が発症に関連していると考えられています。

卵巣がんの症状は?

卵巣がんの症状は?

卵巣がんは自覚症状が表れにくく、多少進行しても卵巣がんが膀胱を圧迫することで、頻尿や腹部の圧迫感・食欲減退が出る程度です。更に進行すると腹部や腰、骨盤などに痛みが出ることもあります。これは卵巣と近いだけでなく、骨盤・腹部のリンパ節が卵巣がんが転移しやすい部位であることとも合致しています。

卵巣がんになるとトイレが近くなる?

卵巣がんにより腹部や膀胱が圧迫されることで、頻尿・便秘などの症状が出ると考えられています。ただ、妊娠と比較した場合その影響はそれほどではありません。

妊娠と卵巣がんは全く異なりますが、腹部や膀胱への圧迫という観点から考えると、どれほど卵巣がんが進行しても妊娠に比べれば圧迫は大したことはないと想像できると思います。

卵巣がんになると体重は増える?減る?

体重はどちらかといえば減ることが多いです。これは卵巣がんの症状のひとつである食欲減退とも関連していると考えられますが、がんは全般的に痩せることが多い病気です。

がんにより炎症が広がると、栄養の利用効率が悪化します。それに加えて、タンパク質を分解する酵素の働きを促進させることで、全身の筋肉量が減少し、痩せることが多いと考えられています。

ただし、卵巣がんが転移して起こる腹膜播種(=腹膜に広がるがん)と腹水が増えることにより、徐々に腹部が膨らみ体重は減っているにも関わらず太って見えることもあります。

卵巣がんのステージと生存率

卵巣がんのステージと生存率

卵巣がんのステージ分類

卵巣がんのステージ分類は、がんが広がっている範囲や場所によってⅠ期〜Ⅳ期の4段階に分類されます。

  • ステージ1:がんが卵巣・卵管のみで転移していない
  • ステージ2:がんが卵巣・卵管にあり、骨盤内の臓器または腹膜へ広がっている
  • ステージ3:がんが卵巣・卵管にあり、骨盤外の臓器または後腹膜リンパ節へ広がっている
  • ステージ4:がんが遠隔転移している(腹膜播種は除く)

卵巣がんの生存率は?

卵巣がんの生存率は、ステージつまり進行の度合いによって異なりますが、ステージ1で約90%、ステージ2で約70%、ステージ3で約45%、ステージ4で約30%と考えられています。卵巣がんは他のがんと比較しても転移前の生存率が高いがんですが、骨盤外の臓器へ転移するステージ3以降になると生存率はかなり低くなってしまいます。

実際、卵巣がん全体で見た場合では5年の生存率が50〜60%、10年の生存率が約40%であることからステージ1〜2での発見率が悪いことが分かります。

卵巣がんは初期症状がほとんどなく早期発見が難しいため、生存率が非常に悪いがんとなっています。卵巣がんになる女性は毎年約8,000人以上おり、死亡者数は年間約4,500人程度であると報告されています。

こうして見ると生存率は50%以下なので、ステージ3以降での発見が多いことが分かります。生存率を高めるには、定期的に検査をして早期に治療を行うことが重要です。

良性の卵巣腫瘍もある

卵巣にできる腫瘍の約90%は良性で、約10%が悪性つまり卵巣がんとされています。そのため画像診断のみでは良性か悪性かの区別が困難であり、診断には細胞診が必要とされています。

卵巣は閉経後であれば切除しても身体への影響は比較的少ないと考えられていますので、腫瘍が見つかった場合は良性・悪性に関わらず切除するケースが多く、必要であれば手術中に細胞診をして方針を決めることもあります。

卵巣がんの検査

卵巣がんの検査

卵巣がんの疑いがある場合は、内診や触診のほか以下の検査をおこないます。

血液検査

卵巣がんの血液検査では、CA125という腫瘍マーカーを用いて判定を行います。腫瘍マーカーは、がんができることによって特徴的に増加するタンパク質などのことであり、がんの種類によって異なります。

しかし、腫瘍マーカーが増えたからといっても必ず卵巣がんであるわけではなく、良性の腫瘍ということもあるので、卵巣がんの確定診断はあくまでも細胞診によって行われます。

エコー検査

卵巣がんの状態を把握するため、エコー検査を用いることもあります。妊娠中と同じように腹部からエコー検査をすることもありますが、精度の高さから経膣エコー検査を行うこともあります。

これは卵巣の位置が子宮の両側にあるからであり、腹部エコーと比較すると経膣エコーのほうが位置的に障害物が少ないためです。一方、腹膜播種の状態をみるためには腹部エコーが向いています。

CT、MRI

CTやMRIなどの画像診断によっても卵巣がんの検査は行われます。卵巣がんの特徴を熟知している専門医が見ることにより、卵巣がんの可能性が高いか手術の必要性があるかを検討します。

手術前に体内の状態を把握できる手段であり、身体への負担も少ないため、卵巣がんの診断材料としてだけではなく、術前の身体状況確認としてもCTやMRIなどの画像診断は実施されます。

卵巣がんを早期発見するには?

血液検査による腫瘍マーカー判定、腹部・経膣エコー、CT・MRIなどの画像診断を組み合わせることで卵巣がんを早期発見することができると考えられています。

そのため定期的に健康診断や人間ドックを受けることは重要です。卵巣がんだけでなく多くの病気を治療する最も効率の良い方法は早期発見・早期治療であることは間違いありません。

特に卵巣がんは初期症状がほとんどないために生存率が低いがんなので、逆に言えば早期発見することさえできれば非常に治療しやすいがんであるといえます。

卵巣がんの治療

卵巣がんの治療

卵巣がんの治療は基本的に手術であることが多いです。ただし、手術でがんを全て取りきれない場合には他の治療法を併用します。

ステージ1の場合

ステージ1では卵巣がんが卵巣または卵管に限局されているため、子宮・卵巣・卵管の摘出に加え大網切除・リンパ節郭清をおこないます。検査では分からない転移を調べ、再発しやすい臓器をあらかじめ切除します。

ステージ2の場合

ステージ2では卵巣がんが卵巣・卵管にあり骨盤内の臓器または腹膜へ広がっているので、ステージ1の治療に加え骨盤腹膜切除・転移している場合は直腸切除などをおこないます。

ステージ3の場合

ステージ3では卵巣がんが卵巣・卵管にあり骨盤外の臓器・後腹膜リンパ節へ広がっているので、手術+薬物治療が必要になります。がんの状態により先に薬物治療を行うケースもあります。

ステージ4の場合

ステージ4では卵巣がんが遠隔転移しているので、薬物治療が中心となります。転移の状態や転移先の臓器でのがんの進行度合いにもよりますが、疼痛緩和治療も積極的に行っていく段階です。

卵巣がんの手術と費用

卵巣がんの手術は主に卵巣・卵管・子宮などの切除術になります。ステージによって切除する臓器は異なりますが、進行すればするほど切除する臓器が増えていくイメージです。

卵巣は元より2つある臓器なので、片方の卵巣を切除したとしてもそれほど問題はないため切除を前提として手術プランが組まれることが多いです。

閉経後であれば両方切除しても、ホルモンバランスが崩れることもほとんどないため、病態によっては左右どちらも切除することもあります。これは本人の意志と病態によります。

ステージや病態により費用は異なりますが手術費用は20〜60万円程度です。高額療養費制度を使用することになると思いますので、実際の負担金額は20〜30万円程度と推定されます。

卵巣がんの薬物治療

卵巣がんの薬物治療に用いられるのはアバスチン(ベバシズマブ)やリムパーザ(オラパリブ)などの分子標的薬です。抗がん剤なので副作用のケアも合わせておこなうことになります。

アバスチンは血管内皮細胞に対するモノクローナル抗体であり、抗がん剤として使用されるだけではなく糖尿病性網膜症や加齢黄斑変性の治療への適応が期待されています。

リムパーザはDNA修復の主要酵素であるポリメラーゼを阻害することで塩素除去修復機構による再生が阻害されます。これによりがん細胞は増殖せず、正常細胞は別の経路で増殖するというメカニズムです。

これらの分子標的薬は比較的新しい薬であり、これらに加えて従来より使用されている微小管阻害薬パクリタキセルやプラチナ製剤のカルボプラチンを使ったTC療法があります。

あわせて疼痛緩和治療で痛みのケアをすることも非常に重要であると近年は考えられており、比較的早い段階から鎮痛薬が用いられるようになりました。痛みを我慢したからがんが治るという訳ではないのです。

疼痛緩和療法は治療中のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高め、患者さんだけでなく家族の負担を減らすために積極的に取り組むべきと近年は考えられています。卵巣がんが完治するのはもちろん大切ですが、治療中の時間を少しでも穏やかな時間にするために薬物の力を借りるのは間違いではありません。

無理して我慢するのではなく、痛いときや苦しいときは医師・看護士に素直に伝えて、医療従事者と協力して治療にあたるのが、これからのがん治療と考えられています。

まとめ

巣がんは初期症状がないため早期発見しにくい疾患のひとつ

卵巣がんは初期症状がないため早期発見しにくい疾患のひとつです。だからこそ、日頃の健康診断や人間ドックを定期的に行うことが大切です。人生100年時代を健康で幸せで生きていくためにも正しい医療知識を持って頂いて、健康リスクに備えていただければ幸いです。

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