膵臓がんの原因とは?生存率・痛みなど解説

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膵臓がんの原因とは?生存率・痛みなど解説

膵臓がんの原因とは?生存率・痛みなど解説

膵臓がんは臓器別がんのなかでも予後が非常に厳しく、治療が困難ながんの一つとして知られています。

「膵臓がんになりやすい原因にはどんなものがあるのか?」

「膵臓がんの症状や生存率を知りたい」などのお悩みを抱えている人もいらっしゃることでしょう。

今回は膵臓がんの原因や症状、5年生存率などについて詳しく解説しますので、ぜひ最後までチェックしてください。

膵臓がんとは

膵臓がんとは

膵臓がんについて、基本情報や進行スピードが早い理由についてみていきましょう。

膵臓がんの基本情報

2019年に新たに膵臓がんと診断されたのは43,865人と報告されています。膵臓がんの罹患者数は、40歳代後半から年齢を重ねるごとに増加していきます。性別で比べると、男性の発症する人数が女性よりやや多いです。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)

2020年に膵臓がんで亡くなった人は37,677人で、臓器別がん死亡者数で膵臓がんは男性で4位、女性では3位です。罹患者数と死亡者数に大きな差がないことから、膵臓がんはほかのがんと比べて治療経過があまり良くないとされています。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(人口動態統計)

膵臓がんの種類

膵臓がんは発生する場所によっていくつかの種類に分けられます。

  • 膵管がん
    膵液の流れる管にできるがん
    膵臓にできるがんの約90%を占める
  • 膵神経内分泌腫瘍
    膵臓にあるランゲルハンス島に発生するがん
    膵臓がんのうち2~3%に当てはまる
  • 腺房細胞がん
    消化酵素を作る腺房細胞から発生するがん
    膵臓がんのなかでは比較的まれ

膵臓がんの進行スピード

がんが1~2cmの大きさになるまでの時間は、膵臓がんでは約5~6年かかり、進行の緩やかな大腸がんでは約10年かかるといわれています。

がんの成長する早さを示すダブリングタイムにおいて、悪性度の高い膵臓がんは月単位で成長し、大腸がんでは半年単位で成長するため、膵臓がんは進行スピードが早いとされています。

また膵臓がんは早期から転移しやすいがんといわれています。膵臓のすぐ近くに腹腔動脈や上腸間膜動脈などの主要な血管が通っていて、がん細胞が血液の流れに入りやすいためです。膵臓の周りには胃・十二指腸・肝臓・胆のうなどの臓器が集まっている点でも転移しやすいと考えられています。

膵臓がんの原因

膵臓がんの原因

膵臓がんの原因ははっきり解明されていませんが、リスク要因として知られるものはいくつかあります。リスク要因は生活習慣によるものと家族歴によるものに大別され、生活習慣によるものには糖尿病・肥満・多量の飲酒・喫煙が挙げられます。

糖尿病

糖尿病における膵臓がんの発症リスクは、罹患から1年未満では5.4倍、それ以降は1.5~1.6倍と研究報告されています。

糖尿病が発症してから2年以内に膵臓がんが見つかることが多いです。それ以降でも、コントロールできていた糖尿病の急激な悪化がみられたときに、膵臓がんが発見されることがあります。

肥満

BMI30以上の肥満における膵臓がんの発症リスクは1.3~1.4倍といわれています。

日本でおこなわれた大規模な研究において、20歳代の男性でBMI値30以上の肥満の場合は、膵臓がんの発症リスクが3.5倍まで上昇します。諸外国の研究では、BMI値が5上昇するとリスクが1.12倍上昇すると報告されています。

多量の飲酒

アルコールに換算して、1日あたり37.5g以上のアルコールを摂ると膵臓がんの発症リスクが約1.2倍になるという研究報告があります。

多量に飲酒をすると、膵臓がんの引き金となる慢性膵炎を発症しやすくなるので注意が必要です。

タバコ

喫煙による膵臓がんの発症リスクは1.7~1.8倍で、タバコの本数と喫煙年数に比例します。

喫煙本数が1日あたり40本以上の男性では、膵臓がんによる死亡が約3.3倍に上昇することが報告されています。

家族歴

両親・兄弟姉妹・子に2人以上の膵臓がん患者がいる「家族性膵臓がん家系」の場合、発症リスクは6.4~32倍になります。

家族性膵臓がん家系の条件は満たさなくても、近親者にいる「散発性膵臓がん家系」の場合、発症リスクは1.7~2.4倍です。

膵臓がんの症状

膵臓がんの症状

膵臓がんは、早期の段階ではほぼ無症状で、自覚する症状が現れたころには進行がんになっていることが多くみられます。膵臓がんになると生じる自覚症状についてみていきましょう。

初期症状

膵臓がんの早期は自覚症状がほとんどなく、ある程度進行してくると以下の症状が現れてきます。

  • 腹痛
  • 背中の痛み
  • 食欲不振
  • 腹部膨満感
  • 黄疸

進行がんの症状

膵臓がんがさらに進行してくると、初期症状に加えて次の症状も加わります。

  • 下痢
  • 悪心
  • 嘔吐
  • 体重減少
  • 糖尿病の急な発症や悪化

ほかの臓器に転移するほど進行すると生じてくる症状は以下の通りです。

  • 腹水
  • 全身倦怠感
  • 肝機能の低下

膵臓がんの5年生存率

膵臓がんの5年生存率

膵臓がんのステージ分類と、ステージごとの5年生存率についてみていきましょう。

膵臓がんのステージ分類

膵臓がんのステージは、がんの広がり具合(T因子)・リンパ節転移の有無(N因子)・遠隔転移の有無(M因子)を表したTNM分類を用いて、下表の通りに判定します。

リンパ節転移なしリンパ節転移あり遠隔転移あり
がんが膵臓内におさまり、最大径20mm以下ステージ1aステージ2bステージ4
がんが膵臓内におさまっているが、最大径20mm以上ステージ1bステージ2bステージ4
がんが膵臓の外へ広がっているが、主要動脈には及んでいないステージ2aステージ2bステージ4
膵臓から広がったがんが主要動脈まで浸潤しているステージ3ステージ3ステージ4

ステージ別の5年生存率

膵臓がん全体の5年生存率は12.7%と、臓器別がんのなかでは最も厳しいものになっています。ステージ別の5年生存率は下表の通りです。

ステージ153.4%
ステージ222.5%
ステージ36.2%
ステージ41.6%

膵臓がんの検査方法

膵臓がんの検査方法

膵臓がんを見つけるための検査には、血液検査や腹部超音波(エコー)があります。近親者に膵臓がんにかかった人がいる場合は、定期的な検診を考えてみましょう。

膵臓がんが疑われたり自覚症状があったりするときには、画像診断や病理検査を追加して確定診断をします。

それぞれの検査方法について次からわかりやすく解説します。

血液検査

膵臓がんの血液検査では、主に消化酵素や腫瘍マーカーの値を調べます。

膵臓がんで調べる消化酵素は「血清アミラーゼ」や「エラスターゼ1」です。がんの成長により、膵臓の細胞が破壊されると血清アミラーゼやエラスターゼ1の値が上昇します。ただし膵炎でも上昇するため、確定にはほかの検査も必要です。

腫瘍マーカーとはがんが作り出す特殊な物質で、膵臓がんではCA19-9・CEA・DUPAN-2・SPan-1などの値を調べます。高値であれば膵臓がんが疑われますが、がんがあっても早期のうちは腫瘍マーカーの数値が上がらないこともあります。

腹部超音波(エコー)検査

腹部超音波検査は、腹部に超音波を発するプローブという機械をあてて、反射した信号を画像化した検査方法です。膵臓の状態・病変している部分の形や位置をチェックできます。

超音波検査は手軽におこなえるため、健康診断などで実施しやすいのですが、超音波機器の性能や患者さんの体格によっては膵臓の病変が描出しにくいことがあるため注意が必要です。

CT検査

CT検査は、X線を用いて体の断面図を撮影する方法で、膵臓のみならず広範囲の臓器についてチェックできます。がんの大きさや位置、リンパ節や他臓器への広がり具合を確かめるために、ヨード造影剤を使うのが一般的です。

MRI検査と比べて短時間で済み、多くの情報が得られるメリットがあります。

MRI検査

MRI検査は、強力な磁気を利用して体の断面を撮影し、がんと正常な組織を区別して映し出す検査です。CT検査と異なり、被ばくの心配はありませんが、検査時間がかかってしまいます。

MRI用の造影剤を用いて、がんの転移・胆管や膵管の狭窄があるか否かを確かめることができます。

EUS(超音波内視鏡検査)

EUS(超音波内視鏡検査)は、内視鏡の先に超音波装置がついている検査機器です。

内視鏡を口から挿入し、お腹のなかから超音波検査をする方法で、必要に応じて組織を直接採取できる機能もあります。

ほかの検査と比べて、細かい点まで膵臓を調べられる特徴があります。EUSは、ほかの検査で見つけられなかった小さな膵臓がんの発見に対して特に有用です。

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)は、専用の内視鏡を口から挿入して、膵管に造影剤を注入し、X線を用いて胆管や膵管を直接観察する方法です。胆管や膵管を細かいところまで調べることができて、必要に応じて胆液や膵液を採取することができます。

ERCPは、検査時に麻酔が必要なのと、合併症で急性膵炎をおこす可能性があるため、原則入院下でおこなわれます。

病理診断

病理診断は、EUSやERCPで採取した細胞や組織を、病理医が顕微鏡で観察する方法です。

膵臓がんの確定診断には画像診断に加え、病理診断が不可欠となります。

病理診断は、がん組織の種類や特徴を確かめて、化学療法で効果的な薬剤を選択するのにも利用されています。

膵臓がんの治療方法

膵臓がんの治療方法

膵臓がんの治療方法には、手術・化学療法・放射線治療・免疫療法があります。治療方法の選択は、患者さんのステージ・既往歴や全身状態・治療への希望を考慮して決定されます。

手術

膵臓がんが切除可能であると判断されたケースは、手術でがんを取り除くことが第一選択です。がんを切除できるか否かの境界線上にある「切除可能境界」と診断されたケースは、化学療法や化学放射線治療をおこなった後に、手術が実施できるか否かを判定します。

がんが発生した場所によって、手術は次の3通りがあります。

膵頭十二指腸切除術

がんが十二指腸近くの膵頭部にあるときに、膵頭部・十二指腸・胆のう・胆管を含めて手術で取り除く方法です。がんの広がり具合によっては、胃や血管の一部も取り除きます。

切除後は、小腸と残った膵臓・胆管・胃をつないで、膵液・胆液・食物の通り道を再建させます。

膵体尾部切除術

がんが脾臓に近い膵体尾部側にあるとき、膵頭部を残して膵体部・膵尾部と隣り合う脾臓を一緒に取り除く方法です。

小腸や胆管などの消化管は取り除かないため、再建手術はおこないません。

膵全摘術

がんが膵臓全体に広がっている場合は、膵臓を全摘します。

全摘すると膵臓の機能が失われるため、血糖コントロールのインスリン注射や、消化を助ける膵酵素補充が必要となります。

化学療法

化学療法は、膵臓がんが主要な血管まで浸潤していたり、ほかの臓器に転移したりして手術が適応とならないケースに選択されます。

膵臓がんの治療に対して、主に用いるのは細胞障害性抗がん剤で、がんが増殖する仕組みに作用して、がんを小さくしたり死滅させたりします。がん遺伝子検査の結果によっては分子標的薬が用いられ、がん細胞に特有のたんぱく質や遺伝子をターゲットにして、がんが増殖するのを抑えます。

化学療法は手術前後の補助療法に用いたり、後述する放射線治療と併用したりすることがあります。

放射線治療

放射線治療は、がんを減らす目的とがんによる痛みを和らげる目的に分けられます。

膵臓がんを減らす目的では、化学療法と組み合わせた化学放射線療法がおこなわれるのが一般的です。離れた臓器に転移はしていないものの、膵臓がんが主要な血管まで浸潤して手術ができないケースや、切除可能境界と診断されたケースに適用されます。

がんの痛みを和らげる目的では、放射線単独治療がおこなわれます。膵臓がんがかなり進行して手術ができないケースや離れた臓器に転移したケースに適用されます。

免疫療法

膵臓がんの免疫療法で保険適用されているものに、免疫チェックポイント阻害薬があります。

免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫細胞から攻撃されるのを回避するシステムに作用して、免疫機能を回復させるものです。

膵臓がんでは、がん遺伝子検査でマイクロサテライト不安定性が陽性(MSI-High)と判定され、標準治療で効果が得られなかったケースに適用されることがあります。

まとめ

膵臓がんは5年生存率が非常に厳しく、治療が困難ながん

膵臓がんは5年生存率が非常に厳しく、治療が困難ながんの一つです。進行が早く転移しやすいため、自覚症状が現れて検査したころには病状が進んでいるケースが多くみられます。少しでも早い段階で膵臓がんを発見するために、リスク要因を持つ人は定期的な検査を考えておきましょう。

膵臓がんの治療は着実に進歩していますが、納得のいく治療を受けるには正しい知識と適時の情報が必要です。病状や選択できる治療方法について、主治医と十分に相談してください。主治医との相談で、疑問が解消しなかったり判断に迷ったりしたときは、ほかの医療機関の医師から意見を聞くことができる「セカンドオピニオン制度」の利用を検討しましょう。

今回の記事を膵臓がんでお悩みの際に活用していただければ幸いです。

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