膵臓がんステージ4・末期の生存率は?適切な治療方法の選び方も解説

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膵臓がんステージ4・末期の生存率は?適切な治療方法の選び方も解説

膵臓がんステージ4・末期の生存率は?適切な治療方法の選び方も解説

膵臓がんは、毎年の罹患者数と死亡者数の差が、すべてのがんでもっとも少なく、治療が困難ながんといわれています。膵臓が体の深い場所にあるため、発見が難しく、自覚症状が現れるころにはステージ4まで進行していることも多いのです。

今回は、膵臓がんステージ4について、生存率や適切な治療方法の選び方などを解説します。膵臓がんの治療方針について迷っている方やそのご家族の方は、ぜひ参考にしてださい。

膵臓がんステージ4の生存率や症状

膵臓がんステージ4の生存率や症状

膵臓がんがステージ4まで進行しているときの、5年生存率や主な症状について確認しましょう。

膵臓がんステージ4の生存率

膵臓がんは、治療が非常に難しいがんの1つに数えられており、2014年~2015年に診断された人の5年生存率は、全ステージで12.7%と厳しい値になっています。もっとも進行したステージ4の5年生存率は1.6%です。

膵臓がんは、発見しにくく転移しやすい特徴があるため、早期がんと呼ばれるステージ1においても、5年生存率は53.4%と、ほかのがんと比べて低い値になっています。進行がんになると、ステージ2でも22.5%と50%を大きく下回ってしまうのです。

膵臓がんの生存率に影響を与える要因

膵臓がんの生存率には、患者さんの年齢・体力・既往歴など、一般的な健康状態が影響しています。そのほか、生存率を左右するものは以下のものが挙げられます。

  • 喫煙
  • 大量の飲酒
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 慢性膵炎
  • 遺伝的要因

これらの生活習慣や遺伝要因は、がんの進行の速さや、抗がん剤の治療効果にかかわっているのです。

膵臓がんステージ4でみられる症状

膵臓がんには特徴的な症状が少なく、気付いたときにはステージ4だったということも少なくありません。ステージ4まで進行すると、大幅な体重減少・食欲低下・糖尿病の急激な悪化・背中の痛み・黄疸などの症状が現れます。

またステージ4では、膵臓から離れた臓器に転移しているため、転移した場所の臓器が機能低下を起こすことがあります。たとえば、肝臓に転移すれば、肝機能低下や黄疸が進行するでしょう。骨に転移すると、強い痛みが現れたり、骨折のリスクが上昇したりするのです。

膵臓がんでおこなわれる検査・診断

膵臓がんでおこなわれる検査・診断

膵臓がんを早期発見して、適切な治療をするには、さまざまな検査が必要となります。膵臓に異常がないか「ふるい」にかけるスクリーニング検査、がんが疑われたときの確定診断、がんが見つかったときの病期診断でおこなう検査について、それぞれ確認しましょう。

スクリーニング検査

膵臓にがんなどの異常がないか確認する「スクリーニング検査」には、血液検査・腹部MRI・超音波検査があります。血液検査では、血液中に含まれる膵酵素のアミラーゼやエラスターゼ1、腫瘍マーカーの値を調べます。膵酵素や腫瘍マーカーは、がんや炎症があると高値になるのです。

腹部MRIや超音波検査は、膵臓の形に異常はないか、腫瘤は見つからないかを、画像で確認します。正常な部分と、がんなどの異常がある部分では、描出が異なるため区別することが可能です。

確定診断でおこなう検査

スクリーニング検査で異常が見つかった場合に、確定診断でおこなわれるのは、超音波内視鏡検査(EUS)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)による、組織診・細胞診です。超音波内視鏡検査(EUS)は、超音波装置をつけた内視鏡を、胃や十二指腸まで進めることで、膵臓にほど近い場所から様子を確認します。超音波で確認しながら、内視鏡の先に搭載した針を膵臓に刺して、組織を採取することも可能です。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)は、内視鏡を十二指腸の乳頭部まで進めて、細い管を介して胆管や膵管に造影剤を注入し、様子をレントゲン撮影して確認します。検査と同時に、膵液や膵管の細胞を採取することもできます。

病期診断でおこなう検査

確定診断でがんと判明した後、ステージを決定するために、造影CT検査・造影MRI検査・PET検査・審査腹腔鏡が必要に応じておこなわれます。一般的には、造影CT検査を中心におこなわれます。

造影CT検査は、体の外からエックス線を当てて、体の断面を画像にしたものです。造影剤を用いるため、通常のCT検査よりも、がんの様子や血管の状態を詳しくみることができます。

膵臓がんステージ4の標準治療

膵臓がんステージ4の標準治療

膵臓がんのステージ4でおこなわれる標準治療についてみていきましょう。

薬物療法

ステージ4まで進行すると、手術や放射線治療によって、がんを取り除いたり消滅させたりすることができないため、薬物療法が適用されます。膵臓がんで主に使用するのは、細胞障害性抗がん剤です。

細胞障害性抗がん剤は、がん細胞が分裂したり増殖したりする過程を遮ることで効果を発揮します。治療効果がなかなか得られない場合は、がん遺伝子検査をおこない、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を使用することがあります。

放射線治療

ステージ4における放射線治療では、がんを消滅させることではなく、症状緩和を目的としています。膵臓がんによる背中の痛み・黄疸が強いときや、骨転移で痛みがあるときなど、がんによって引き起こされる症状を抑えます。

緩和ケア・支持療法

緩和ケア・支持療法は、がんの進行によって生じる悪液質や薬物療法による副作用など、がん治療に伴うつらい症状を軽くします。がんによる痛みは、放射線照射のみならず、オピオイド系鎮痛剤を使用しすることで、十分にコントロールできるのです。

緩和ケア・支持療法はステージにかかわらず、がんの治療を開始した時点から選択できます。身体的な症状のみならず、がんに罹患したことによる精神的な苦痛や生活上の不安も和らげる目的があるのです。

膵臓がんステージ4で適切な治療を選ぶには

膵臓がんステージ4で適切な治療を選ぶには

膵臓がんステージ4で適切な治療を選ぶためには、どのような検査を受けるかが肝心です。検査によっては、受診できる医療機関が限られるため、病院の選択も重要なポイントとなります。適切な治療を受けるために、注意する点を3つ確認しましょう。

超音波内視鏡で確定診断する

がんの確定診断には「超音波内視鏡検査(EUS)」をおすすめします。超音波内視鏡検査では、画像診断と一緒に膵臓の組織を採取できるため、がんの性質や特徴を詳しく調べられます。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)と異なり、急性膵炎など検査による偶発症が少なく、比較的安全におこなえます。ただし、超音波内視鏡を使用した組織採取を実施できる医療機関は限られるため、確定診断を受ける病院選びは慎重におこないましょう。

ステージ決定にPET検査をおこなう

膵臓がんは、進行が早く転移しやすい性質があります。ステージを決定する際は、全身にがん転移があるかどうか調べられる「PET検査」をおこなうと良いでしょう。転移がんを見落としてしまうと、正確なステージを把握できず、治療の選択を誤ってしまうケースがあります。

とくに、PETとCTの機能を組み合わせたPET/CT検査では、1cm程度の微小ながんでも発見でき、転移した場所やがんの形状を詳しく知ることが可能です。抗がん剤治療をおこなった後の、治療効果を確認する際にも、PET検査を利用すると良いでしょう。

遺伝子パネル検査をおこなう

抗がん剤治療を一度おこない、効果がみられない場合は「遺伝子パネル検査」をおこなうと良いでしょう。ステージ4の膵臓がんでは、標準治療で使用できる抗がん剤が限られていて、薬剤の効果がなかなか得られないタイプのがんもあります。

遺伝子パネル検査をおこなう場合、ステージ4では手術を受けていないケースがあり、検査に用いる組織片がないことが多いです。血液のみで実施できる「ガーダント360」をおすすめします。ガーダント360は、739種類のがん遺伝子について調べられて、検査結果が早く届くことが特長です。

ガーダント360について詳しく知りたい場合は、以下の記事もご覧ください。

>>がん遺伝子パネル検査「ガーダント360」について

膵臓がんステージ4で治療効果が期待できる治療の進め方

膵臓がんステージ4で治療効果が期待できる治療の進め方

膵臓がんステージ4で治療効果を期待するには、治療のタイミングや進め方も大切です。3つのステップで確認しましょう。

抗がん剤治療

ステージ4と診断されたら、まず初めに、細胞障害性抗がん剤による標準治療で効果を確認します。ステージ4で使用する抗がん剤治療は、以下の方法があります。

FOLFIRINOX療法・5-FU・イリノテカン・オキサリプラチン・レボホリナートカルシウムの4種類を組み合わせた治療

・点滴薬で、1コース2週間

ゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用療法・ゲムシタビンとナブパクリタキセルの2種類を使用

・点滴薬で、1コース4週間

ゲムシタビン単独療法・高齢者や体力が落ちているなどの理由で、複数の抗がん剤を併用する治療がおこなえない人に使用

・点滴薬で、1コース4週間

S-1単独療法・高齢者や体力が落ちているなどの理由で、複数の抗がん剤を併用する治療がおこなえない人に使用

・内服薬で、1コース6週間

分子標的薬

標準治療の細胞障害性抗がん剤を一通りおこない、がんの進行が抑えられない場合は、遺伝子パネル検査で個々のがんの特徴に合った分子標的薬を探しましょう。遺伝子パネル検査の結果で、乳がん治療薬のベージニオが効くタイプと判明した症例があります。

分子標的薬は、がん細胞の表面に現れるタンパク質や、がん細胞の遺伝子をターゲットにして、効率的にがんへ攻撃をおこなう薬です。細胞障害性抗がん剤と異なり、健康な細胞へのダメージが少ない特徴があります。

免疫放射線治療

ステージ4では遠隔転移があるため、アブスコパル効果を期待した治療を考慮し、最終的に、放射線治療と免疫療法を組み合わせた「免疫放射線治療」をおこなうと良いでしょう。アブスコパル効果とは、一部のがん組織に放射線を照射すると、照射していない離れた場所にあるがん組織も小さくなる現象のことです。

免疫放射線治療のメカニズムは次のとおりになります。がん組織に放射線を当てると、組織が壊れるときに、そのがん特有のタンパク質(抗原)が放出されます。がん抗原に対する免疫応答がおこなわれますが、アブスコパル効果を発現しやすくするために、免疫療法で免疫細胞の働きを活性化させるのです。

免疫放射線療法について詳しく知りたい場合は、以下の記事もご覧ください。

>>免疫放射線療法とは?最新がん治療について

膵臓がんをステージ4になる前に発見するには

膵臓がんをステージ4になる前に発見するには

膵臓がんの5年生存率は、ほかのがんと比べて非常に低く、ステージ4では1%台まで低下します。できるだけ早く膵臓がんを発見して治療を受けるための方法について確認しましょう。

健診や人間ドックを受ける

定期健診や人間ドックは、1年に1回受けましょう。受診するときに、腫瘍マーカーや血清アミラーゼ値などの膵機能を調べる血液検査や、腹部超音波検査をオプション追加することをおすすめします。

膵機能を調べる血液検査では、膵臓がんリスク因子となる膵炎があるかどうかも確認可能です。これらの検査で、異常が見つかった場合は精密検査がおこなわれます。

リスク因子があれば定期的に検査を受ける

膵臓がんのリスク因子があり、健康診断で軽度の異常を指摘された場合は、定期的に検査をうけることをおすすめします。リスク因子には以下のものが挙げられます。

  • 家族に膵がん罹患者がいる
  • 多量に飲酒する習慣がある
  • BMIが25以上ある
  • 慢性膵炎にかかっている
  • 糖尿病にかかっている

リスク因子がある場合は、血液検査に加えて、腹部MRIや超音波検査などの画像診断もおこなうと良いでしょう。地域によっては「膵がん早期発見プロジェクト」の取り組みがあるため、膵臓がんの診断に重要な超音波内視鏡検査(EUS)を受けられる医療機関を紹介してもらえることがあります。

まとめ

膵臓がんステージ4でセカンドオピニオン制度を利用することも検討

膵臓がんステージ4の5年生存率は、1.6%と極めて低い値です。膵臓がんは、発見が難しく転移が起こりやすいため、自覚症状が現れたときには進行しているケースが多くみられます。

適切な治療を受けるためには、検査方法の選び方が重要です。精度が高く、がんの詳しい情報が得られる検査を受けるようにしましょう。

膵臓がんステージ4は、治療の進め方にも配慮します。一次治療で効果がみられなければ、遺伝子パネル検査をおこない、がんの性質に合った薬を探しましょう。

遠隔転移があるため、最終的にはアブスコパル効果を期待した治療を検討すると良いです。膵臓がんステージ4と診断され、主治医から提案された治療方法で良いか判断に悩んだときは、納得のいく治療を受けるためにセカンドオピニオン制度を利用することも検討しましょう。

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