「がんを焼く」は誤解! 放射線治療が人体に安全な理由とは?

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「がんを焼く」は誤解! 放射線治療が人体に安全な理由とは?

超高齢化社会に突入し、がんの患者数は増えています。そしてそれと同時に、手術や抗がん剤治療を受けられない患者さんの数も増えています。

そんな時代だからこそ、がんの放射線治療がさらに重要な意義を持つようになりました。

しかし、残念なことに、放射線治療には多くの誤解がまかり通っています。ここで放射線治療についての誤解をお話し、放射線治療を正しく理解していただきたいと思います。

がん治療

放射線でがんを焼いているという誤解

放射線治療は、放射線でがんを「焼く」治療法。そう思っている方は少なくないようです。
レーザービームでジューっと焼く、そんなイメージでしょうか。同時に「熱い」「痛い」「怖い」のイメージも付きまといます。

放射線そのものに対して恐怖心を持つ方も多いですね。

放射線治療はがんを「焼く」というのは誤解です。もちろん、照射中に熱いということもありません。
実際、放射線治療は高温ではありません。
ちょっと専門的な話になりますが、具体的に見てみましょう。

治療2回分の線量が持つエネルギーはたった千分の1℃に過ぎない

放射線を測定する単位として良く知られているのが「シーベルト」ですが、放射線治療で使われる単位は「グレイ」です。X線や、γ(ガンマ)線ではシーベルト=グレイとなります。

シーベルト

「実効線量」のこと。受ける影響の度合いを示す単位で、人体への影響を加味して計算するときに使われます。

グレイ

「吸収線量」のこと。人体が受ける放射線のエネルギーを示す単位で、放射線の線量を物理的に測るときに使われます。

がんの進行具合や治療する部位、その他色々な事情により異なりますが、がんの治療には50Gy(グレイ)程度の放射線を照射します。例えば、乳がんの再発予防などでしたら、1回2Gy×25回=50Gyという具合で照射します。
ちょっと怖い話ですが、「全身」に4Gyの放射線を浴びると、人間は1ヶ月以内に50%死亡します。
放射線はとても強力です。

放射線量

そうなると、「50Gyも使って平気なのか?」という疑問が湧きます。
もちろん平気です。
放射線治療ではピンポイントにがん細胞だけを狙って放射線を照射するからです。正常な細胞への影響を極力抑える技術があるため、命の危険なく放射線を治療に使えるのです。

ちなみに4Gyの線量は、1gの水の温度を千分の1℃上昇させる程度のエネルギーしか持っていません。
当然、千分の1℃温度が上昇しただけでは、がん細胞は死にません。
では、なぜ放射線でがん細胞は死ぬのでしょうか?

なぜ放射線でがん細胞が死ぬの?

この疑問はもっともな疑問で、放射性治療のコアにかかわってきます。
放射線のがんへのアプローチには「直接作用」と「間接作用」の二つがあります。それぞれ説明していきましょう。

正常な細胞、がん細胞にかかわらず、細胞に強い放射線を照射すると、細胞の中にある分子に当たり、その分子から電子が弾き飛ばされます。これを電離と言います。この作用が直接DNAに影響すれば「直接作用」となります。
放射線治療であれば、がん細胞のDNAがダメージを受け、細胞分裂をできない状態になります。分裂できなくなったがん細胞は、最終的にアポトーシスと呼ばれる自殺状態になるのです。

がん細胞

そして、もう一つ「間接作用」の場合、大切になってくるのが「活性酸素」です。
細胞内の水分子に放射線が当たって電離が起きると、その水分子は活性酸素へと変化します。
活性酸素にも、DNAを破壊する効果があるのです。

美容やアンチエイジングの大敵として広く知られるようになった活性酸素ですが、がんの放射線治療においては心強い味方になってくれているということですね。

放射線の直接作用と間接作用……。
この二つの作用から、放射線治療はがんに効果を発揮するのです。
がん細胞を「焼いている」わけではないんですね。

放射線治療における線量制限について

がんを退治するのに役立ってくれている放射線ですが、正常な細胞に当て続ければ、それらも破壊したり、傷つけたりしてしまいます。
そこで、人体への影響を最小限にするために、体の部位ごとに放射線を照射する量の制限が設けられています。

部位等によって異なりますが、一つの部位で一生に使える線量は50~60Gy程度です。これは一つの部位当たりなので、部位が異なれば、放射線治療を再度行うことが可能ということです。
放射線治療は、安全であるように、人体への影響が少ないように長年研究を重ねて、今に至っています。

安全

まとめ

いかがでしたか?
放射線治療が決して、がんを「焼いている」わけではないということが分かっていただけたと思います。

このような誤解が生まれた背景に、放射線に対する恐怖があるかもしれません。

がんの放射線治療を検討している方は、ぜひ主治医の先生とよく話し合い、必要であればセカンド・オピニオンを仰ぎ、納得いくまで質問をしましょう。

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