最新装置サイバーナイフに搭載されたロボットアームの利点とは?

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最新装置サイバーナイフに搭載されたロボットアームの利点とは?

従来の放射線治療装置はCTやMRIと同じようなドーム型でした。しかし、サイバーナイフにはドームはなく、代わりに大きなロボットアームが搭載されています。
今まで、限定した方向や部位にしか照射できなかった放射線が、自由自在に様々な角度から照射できるようになる――。このロボットアームの搭載は、衝撃的なものでした。

今回はサイバーナイフのロボットアームを使った治療についてのお話です。

ベンツを組み立てているものと同じロボットアーム

サイバーナイフに搭載されているロボットアームは、ベンツなどの自動車工場で精密な組み立て作業に用いられているものと同じです。
0.1mmの精度で前後左右上下に反復運動可能な6軸の関節が付いています。
患者さんが静止していれば、1㎜未満の精度で位置決めが行えます。

工場で使われているロボットアーム

患者さんを中心に360度自由に動かすことができ、今までは放射線を当てることができなかった部位や角度での照射も可能になっています。
従来の放射線治療装置では、ドーム内で一点を中心とした回転運動しかできなかったため、がんの形状に合わせてベッドを動かすという効率の悪い治療を強いられていました。

ロボットアームから照射されるビームは、鉛筆の芯に例えられる細いX線です。事前に準備した治療計画に基づき、この細いX戦を多方向から照射します。
この時、照射ノズルには「コリメーター」と呼ばれる絞り装置がつけられます。
コリメーターは、ビームの太さを変えるための装置で、大きさ別に5~60mmまで12種類が用意されています。

コリメーターは、がんの大きさに合わせて交換しながら使い分けます。
さらにサイバーナイフのロボットアームは、必要なコリメーターを自動的に自らピックアップして付け替えるのだから驚きです。
人為的なミスを減らせ、確認の手間も省け、治療時間の短縮にもつながる素晴らしい技術だと思います。

正常な細胞へのダメージを最小限に抑えるサイバーナイフ

がん細胞に、100本のX線を当てる場合を例に考えると、サイバーナイフがいかに正常細胞へのダメージが少ないかがよく分かります。
一つの方向からあるがん細胞に100本のX線を照射した場合、その手前にある正常細胞にも当然同じレベルのX線が当たりますね。

一方、サイバーナイフを使って、100の異なる方向から照射した場合はどうなるでしょうか?

サイバーナイフは放射線治療にとって理想的

がん細胞に100本のX線が届く間、通り道となる正常細胞は100に分散されます。
そのため、一つの方向からの照射の1/100しか放射線にさらされないということになりますね。

正常細胞へのダメージは最小限に、がん細胞へのダメージを最大限に。これは、放射線治療の理想です。
ロボットアームのおかげで、サイバーナイフは、この理想通りの働きができる放射線治療装置となりました。

サイバーナイフの自動位置計測機能と動体追尾システム

実際の治療では、患者さんはカウチ(サイバーナイフのベッドの部分)に仰向けに横たわります。
ロボットアームはコリメーターをつけて、患者さんの周囲の空間を自由自在に動き回りながら放射線を照射します。

これがサイバーナイフのハード面の動きです。

ところが、サイバーナイフのピンポイント照射を支えているのは、ロボットアームとコリメーターだけではありません。要となるのが「自動位置計測機能」と「動体追尾システム」の二つです。

サイバーナイフの自動位置計測機能

がんに放射線を正確にピンポイント照射するには、ターゲットとなるがんの位置をきちんと確認する必要があります。
がんのある場所を正確に測定するために、サイバーナイフが独自に作用しているシステムが「自動位置計測機能」です。

サイバーナイフは巡航ミサイルがもつ自動位置計測機能を備えている

自動位置計測機能は、巡航ミサイル(翼とジェットエンジンが付いたミサイル)で使われる自動位置計測装置(TLS)の技術が応用されています。

自動位置計測を行うのは、天井の左右2ヵ所に設置されたX線の撮影装置と、床に設置された画像検出器の組み合わせです。
2台のX線撮影装置は「目」として、二方向から継続的にターゲットの位置を測定します。
このデータは床に設置された画像検出器を通じ、位置データとしてコンピュータに認識されます。

この位置データは、治療前に策定した治療計画の画像(CTやMRI)と照合され、照射角度の修正に用いられます。

サイバーナイフの動体追尾システムで肺がんにも対応

サイバーナイフは、前身ともいえるガンマナイフから進化し、頭部以外のがんにも放射線を照射できるようになりました。

普段、意識することはありませんが、脳は「動かない」臓器です。そのため、患者さん側を固定さえすれば、放射線照射の位置がずれることはありません。
ですが、体幹部にある臓器は、どれも少なからず、呼吸に合わせて動くものです。

よく動く臓器の代表は、肺と肝臓です。
この二つの臓器、部位によっては呼吸のたびに1~2cmも動きます。前立腺も、30秒間に3~5mm以上動きます。

放射線治療の間じゅう、患者さんに息を止めてもらうわけにはいきませんね。
以前の放射線治療では、この動く範囲をカバーするために、がんの上下2cmずつ広く照射する、なんてこともありました。
この方法では、当然、正常細胞にも放射線が余分に当たることになるため、副作用のリスクは大きくなります。

サイバーナイフの動体追尾システムが肺がんの問題を解決する

こんな悩ましい問題を解決したのが、サイバーナイフの「動体追尾システム」です。
動体追尾システムを使った動体追尾照射では、患者さんの身体の表面にLEDを設置して、呼吸波形を検知します。
得られた情報をコンピュータで計算しながら、サイバーナイフは呼吸の動きにリアルタイムに対応するのです。
その誤差はなんと1㎜以内。動体追尾照射では、正常細胞への余分な照射が抑えられるので、副作用のリスクは大幅に低減しています。

まとめ

サイバーナイフは自動位置計測機能と動体追尾システムの精密な計測・計算と、ロボットアームの限りなく正確な動きによって、過去に類のないピンポイント照射を可能にしました。

従来の放射線装置に比べて、患者さんへの負担はより軽くなり、適応範囲も広がりました。
ロボットアームを搭載したサイバーナイフを目にした日のように、次の新しい技術に驚かされる日を楽しみにしています。

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