直腸がんの症状とは?原因・生存率など解説

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直腸がんの症状とは?原因・生存率など解説

直腸がんの症状とは?原因・生存率など解説

直腸がんは日本人に多いがんで、結腸がん、直腸がんなどを含めた大腸がんは、日本人において罹患率1位のがんです。日本人の生活スタイルが変わり、患者数は大きく増えています。この記事では、直腸がんの症状やかかりやすい人の特徴、原因、生存率、予防方法などを解説します。

直腸がんとは

直腸がんとは

直腸がんは、大腸の一部である「直腸というところにできるがんです。結腸がんと直腸がんをあわせて大腸がんと呼ばれます。

大腸は結腸と直腸からなっており、盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸が結腸、直腸S状部・腹膜反転部・上部直腸・下部直腸が直腸です。直腸は大腸から肛門へつながる最後の部分。消化吸収と老廃物の排出をする役目がある器官です。

日本人はS字結腸と直腸にがんができやすいといわれており、大腸がんは罹患者数が第1位、死亡率は第2位(女性に限ると第1位)と非常に多いがんです。

大腸がんは腺腫というポリープ(膨らんだイボのようなもの)ががん化するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。進行していくと大腸の壁に入り込み、やがて外まで広がって腹腔内にがん細胞が散らばる腹膜播種が起こるのです。そして、大腸の壁を流れるリンパ液や血液の流れに乗り、肺や肝臓などに遠隔転移します。

大腸がんは比較的進行が遅いと考えられており、数年から10年程度かけてポリープが「がん化」していきます。

直腸がんの原因

直腸がんの原因

直腸がんを含む大腸がんの原因は、生活習慣との関わりや遺伝的な要素が指摘されています。特に食生活の欧米化は大腸がんの増加に影響していると考えられ、大腸がんによる死亡数はこの20年で1.5倍になりました。

直腸がん(大腸がん)のリスクが上がる要因

直腸がんになるリスクが上がるといわれる要因は、以下の通りです。

  • 飲酒
  • 喫煙
  • 肥満
  • 加工肉や赤身肉の過剰摂取
  • 野菜や果物の摂取不足
  • 近親者の病歴(家族性大腸腺腫症・リンチ症候群)
  • 長期の潰瘍性大腸炎

直腸がんの疑いがある症状

直腸がんの疑いがある症状

直腸がんを疑う主な症状は、便に鮮血に近い血液が付着する、便が小さく細くなることなどです。がんがあることが原因で便後に残便感を感じることもあります。便秘や下痢、腹痛、腹部膨満感なども代表的な症状です。

直腸がんの検査方法

直腸がんの検査方法

直腸がん(大腸がん)の検査方法は、以下の通りです。

  • 直腸指診
  • 大腸内視鏡検査
  • 便潜血反応検査
  • 注腸検査
  • 病理検査
  • 腫瘍マーカー検査
  • CT検査
  • CTC検査
  • MRI検査
  • PET‐CT検査

直腸指診

医師が肛門から指を入れて直腸を触り、しこりや異常がないか調べる検査です。

大腸内視鏡検査

内視鏡を肛門から挿入し、直腸から盲腸まで大腸全体を調べる検査です。病変が発見された場合は組織を採取し(生検)、病理診断が行われます。

検査の前に検査食や下剤を服用して腸管内をきれいな状態にします。

便潜血反応検査

便潜血反応検査は2日間に分けて採取した便を調べ、出血を検出します。便潜血反応検査は1回だけではがんが見つからないことも多いため、毎年検査を受けることが大切です。

注腸造影検査

注腸造影検査では空気とバリウムを肛門から入れてX線撮影します。がんの正確な位置、大きさ、形などが分かる検査です。注腸造影検査を正確に行うために、検査食や下剤を使って腸管内をきれいにします。

病理検査

手術などで切除した部位を薄切りにし、プレパラートに乗せて顕微鏡で調べます。切り取った大腸やリンパ節を調べ、リンパ節への転移やがんの深さなどを判断。この検査で確定診断となります。

腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカー検査はがんの診断の補助や経過を見るために行われます。腫瘍マーカーとはがんの種類によって作られる特徴的なタンパク質などの物質です。腫瘍マーカー値の変化だけでがんの確定はできず、他の検査とあわせて判断します。

腫瘍マーカー検査は血液や尿を分析して値を測定します。採血・採尿で検査できるため、体への負担はほぼありません。

CT検査

CT(Computed Tomography、コンピュータ断層撮影)検査はX線で全身の断面を撮影する検査です。造影剤を静脈注射することでより精度が上がります。大腸がんは腫瘍が大きくないと通常のCT検査では診断が難しいことがあるため、より詳しく検査するCTC検査を受ける場合もあります。

CTC検査

CTC(CT Colonography)検査はCTコノグラフィー、大腸CT、バーチャル大腸内視鏡検査などとも呼ばれる検査方法です。大腸内にガスを注入し膨らませた状態でCT検査を行い、撮影画像を再構成することで大腸の仮想3D画像を作成・解析します。

MRI検査

MRI(Magnetic Resonance Imaging、磁気共鳴画像)検査は強い磁気と電磁波を使って体の断面図を描写する検査です。円筒状の装置の中に仰向けの状態で入り20~30分かけて撮影します。

PET-CT検査

PET(positron emission tomography、陽電子放出断層撮影)‐CT検査は微量の放射能を含む薬剤を体内に注射し、特殊なカメラで画像化します。PET-CT検査では全身を調べることができます。ブドウ糖代謝機能などから異常を見つける検査です。がんの病巣や炎症、腫瘍の場所や大きさの特定、良性か悪性かの判断、転移の状況などを診断します。

直腸がんのステージ分類

直腸がんのステージ分類

直腸がん(大腸がん)のステージは進行度によって分類されます。0期からⅣ期までの5段階に分けられ、Ⅳ期が最もがんが進んだ状態です。病期はがんの深達度(大腸の壁のどの深さまで広がっているか)、遠隔転移やリンパ節転移の有無で決められています。

ステージ0がんが粘膜内にとどまっている状態
ステージⅠがんが固有筋層までにとどまっている状態
ステージⅡがんが固有筋層を越えて浸潤している状態
ステージⅢがんの深さに関わらず、リンパ節への転移がある状態
ステージⅣがんの深さやリンパ節転移に関わらず、他臓器へ転移している状態

がんの深達度、リンパ節への転移、他臓器への転移はそれぞれに評価基準があります。

直腸がん(大腸がん)の深達度

直腸がんの深達度はTX、T0 、Tis、T1、T2、T3、T4a、T4bの6段階に分類。TisとT1は早期がん、T2以降は進行がんと呼ばれます。

大腸の壁は内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層または外膜、漿膜となっています。

TX評価ができない
T0癌を認めない
Tisがんが粘膜内にとどまる
T1がんが粘膜下層にとどまる
T2がんが固有筋層にとどまる
T3がんが固有筋層を越えているが漿膜下層または外膜までにとどまる
T4aがんが漿膜を越えた深さに達する
T4bがんが大腸周囲の多臓器にまで達する

リンパ節への転移

大腸の血管に沿うようにリンパ節があり、腸管に近い部分から腸管傍リンパ節、中間リンパ節、主リンパ節となっています。

リンパ節転移はN因子と呼ばれ、リンパ節転移の有無と転移の数によって分類され、NXからN3で表されます。N2とN3は転移の個数でさらにN2aとN2b、N3aとN3bへ細かく分けられます。

リンパ節転移の有無は切除したリンパ節を病理検査に出して確定診断します。

NXリンパ節転移の程度が不明
N0リンパ節転移を認めない
N1腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が3個以下
N1a転移個数が1個
N1b転移個数が3個
N2腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が4個以上
N2a転移個数が4~6
N2b転移個数が7以上
N3主リンパ節に転移を認める

他臓器への転移

遠隔転移をM因子と呼びます。がんは発生したところで大きくなる性質がありますが、血流やリンパの流れに乗り他の臓器へ転移する性質もあります。大腸がんは壁の外まで到達すると隣接臓器に浸潤(周囲の組織に滲むように広がること)したり、腹腔内へ腹膜播種したりすることがあります。

転移の状況はM0~M1c2の7段階で表されます。

M0遠隔転移を認めない
M1遠隔転移を認める
M1a1臓器に遠隔転移(腹膜転移除く)
M1b2臓器に遠隔転移(腹膜転移除く)
M1c腹膜転移を認める
M1c1腹膜転移のみを認める
M1c2腹膜転移及びその他の遠隔転移

直腸がんの治療法

直腸がんの治療法

直腸がん(大腸がん)の治療方法は、以下の通りです。

  • 内視鏡治療
  • 薬物療法
  • 手術(外科治療)
  • 放射線治療
  • 免疫療法
  • 対処療法

内視鏡治療

内視鏡治療は早期のがんに適用される治療方法です。

薬物療法

内視鏡治療や外科治療のあとに再発リスクが高い場合、またはステージⅣのがんなどで病変部の切除が難しい場合に症状を緩和させるためなどに行います。

薬物療法を受けるにはいくつか条件があり、自力歩行ができるか、他に重い病気がないかなどを鑑みた上で行われます。

大腸がんの薬物療法には次のような薬が使われます。

  • 細胞障害性抗がん薬
  • 分子標的薬
  • 免疫チェックポイント阻害薬

細胞障害性抗がん薬

一般的に抗がん剤といわれる薬です。細胞が増殖する過程を邪魔して、がん細胞の増殖を抑えます。

細胞障害性抗がん薬は健康な細胞にも影響を与えますので、副作用が起こります。主な副作用は吐き気、嘔吐、だるさ、食欲不振、下痢、便秘、口内炎、手や足が腫れることなどです。貧血や白血球の減少など検査で分かる副作用もあります。

副作用を予防する薬も開発され、以前に比べて症状は抑えられるようになりました。

分子標的薬

分子標的薬はがん細胞の増殖に関わる特定のタンパク質に作用します。抗RGFR抗体薬、血管新生阻害薬、キナーゼ阻害薬などです。

免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬は患者さんの持っている免疫力を利用して、がん細胞への攻撃を強める治療方法です。免疫にブレーキをかける部分(免疫チェックポイント)に結合する働きがあります。免疫療法とも呼ばれます。

手術(外科治療)

手術には、お腹を切って行う開腹手術と、お腹に小さな穴をいくつか開けてそこから器具を入れて行う腹腔鏡手術があります。内視鏡治療ができない場合や、原発巣・転移先のがんを切除する場合などに行われる治療方法です。

放射線治療

直腸がんの放射線治療には2種類あります。

  • 補助放射線治療
  • 緩和的放射線治療

補助放射線治療

切除できる直腸がんが対象で、骨盤内の再発を抑えるために行います。手術前に行われ、薬物療法とあわせて行われることが多いです。

緩和的放射線治療

骨盤内の腫瘍による出血、痛み、便通障害、骨への転移による痛み、骨折の予防、脳への転移による吐き気やめまいなどを改善するための治療です。腹部や頭部に放射線を照射します。

放射線の副作用は照射期間中に起こるものと、治療終了後に起こるものがあります。治療期間中の副作用は、吐き気やだるさ、食欲低下、皮膚炎、白血球減少などです。治療後の副作用には、膀胱や腸管からの出血、膀胱炎、腸炎、頻尿、隣接する臓器とつながる穴ができることなどが挙げられます。

直腸がんの生存率

直腸がんの生存率

直腸がん(大腸がん)の5年相対生存率は71.4%です。5年相対生存率とは、がんと診断された人の中で5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどの程度かを表しています。100%に近いほど、治療によって生命を救えるがんということになります。詳細は下記の表を参照してください。

5年相対生存率(2009~2011)71.4%(男性72.4%、女性70.1%)
5年相対生存率(限局)97.3%
5年相対生存率(領域)75.3%
5年相対生存率(遠隔)17.3%

限局・領域・遠隔はそれぞれがんの進展度を表す言葉です。限局はがんが発生した臓器のみに認められるもの、領域はリンパ節への転移はあるが他臓器への浸潤がないもの、隣接臓器に浸潤しているが遠隔転移のないもの、遠隔は遠隔臓器やリンパ節への転移があるものを指しています。

早期に発見できれば高い5年相対生存率を誇りますが、進行してからの大腸がんは治療で救うことが難しいがんだということが分かります。

直腸がん(大腸がん)の罹患率

直腸がん(大腸がん)の2019年の診断数は155,625例、10万人あたりの罹患率は123.3例となっています。他のがんと比べると、直腸がんは男性32,997例、女性67,753例で、男性の場合直腸がんとあわせて大腸がんとしてみると罹患数1位のがんです。女性も大腸がんとしては2位であり、日本人に多いがんだといえるでしょう。

直腸がん(大腸がん)の死亡率

直腸がんの2020年の死亡率は人口10万人あたり42.0人で、男性46.2例、女性38.0例です。死亡数としては男性9,753人、女性5,831人となっています。罹患率に比べると低い数字であり、早期から適切な治療ができれば救える例も多いのです。

まとめ

直腸がんは結腸がんとあわせて日本人に多いがんですが、早期に発見し治療すれば生存率は高いがんです。初期症状があまりないがんですので、定期的な検診が重要だといえるでしょう。健康診断や人間ドックで行われる便潜血反応検査だと、1回だけではがんが見つからないこともあるので、気になる症状が無い場合も毎年欠かさず受けることをおすすめします。また、食生活や生活スタイルの見直しも大切です。がんのリスクを上げる飲食は避け、健康的な生活習慣を心掛けてください。

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