唾液腺がんの初期症状とは?ステージや余命など解説

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唾液腺がんの初期症状とは?ステージや余命など解説

唾液腺がんの初期症状とは?ステージや余命など解説

唾液腺がんは、罹患者数が非常に少ない希少がんに区分されています。しかし万が一、唾液腺がんの可能性があると診断されたら非常に不安になるはずです。「唾液腺がんになると、どのような症状が出るのか」「唾液腺がんの余命を知りたい」など、さまざまな疑問を持っている人もいることでしょう。

今回は唾液腺がんについて以下の内容をわかりやすく解説します。

  • 唾液腺がんの特徴や種類
  • 唾液腺がんでよくみられる初期症状
  • 唾液腺がんのステージ分類と5年生存率

ほかにも検査方法や治療方法についても解説しますので、最後までチェックしてください。

唾液腺がんについて

唾液腺がんについて

唾液腺がんについて、病気の概要・発生頻度・がんの特徴をみていきましょう。

唾液腺がんとは

唾液腺がんは、唾液をつくり出す臓器の唾液腺に発生する悪性腫瘍で、頭頸部がんのひとつに数えられます。唾液腺は大唾液腺と小唾液腺にわけられ、大唾液腺には、耳下腺・顎下腺・舌下腺の3つがあります。唾液腺がんの発生した場所による割合は、耳下腺と顎下腺で約90%を占め、舌下腺や小唾液腺に発生することは少なく非常にまれです。

唾液腺がんの発生頻度

唾液腺がんを含む頭頸部がんの発生頻度は、日本人が発症するすべてのがんの約3%です。唾液腺がんの発生頻度は、頭頸部がんのうち5%程度であり、発症する患者数が非常に少ないため、希少がんに区分されています。2019年に耳下腺がんを新たに発症したのは1,249人と報告されています。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)

唾液腺がんの特徴

がん細胞の形状や増え方で分類される組織型についてですが、頭頸部がんの大半は体の表面に発生する「扁平上皮がん」ですが、唾液腺がんのほとんどは分泌腺の表面に発生する「腺がん」です。腺がんは扁平上皮がんと比べて、化学療法や放射線療法の感受性が低いといわれています。

唾液腺がんの一番の特徴は、ほかの頭頸部がんと比べて組織型分類が非常に多いことです。2017年にWHOが分類した組織型は20種類以上あります。

唾液腺がんの種類

唾液腺がんの種類

唾液腺がんは、発生した場所によって次の4種類に分類されます。

  • 耳下腺がん
  • 顎下腺がん
  • 舌下腺がん
  • 小唾液腺がん

それぞれの特徴について詳しくみていきましょう。

耳下腺がん

耳下腺がんは、大唾液腺のひとつに含まれる耳下腺にできるがんで、唾液腺がんの60~70%を占めています。耳下腺は、耳の前から下にかけて縦方向に6cmの長さがある臓器で、左右にひとつずつあります。おたふく風邪にかかったときに腫れるところとして有名です。

耳下腺の中心には、顔の筋肉を動かす顔面神経が通っています。そのため、顔面神経麻痺があらわれて一般的な麻痺の治療をしても改善しない場合は、耳下腺がんである可能性があります。

顎下腺がん

顎下腺がんは、大唾液腺のひとつに含まれる顎下腺にできるがんで、唾液腺がんの20~30%を占めています。顎下腺は、大唾液腺のうち耳下腺に次いで大きい臓器で、あごの下に左右にひとつずつあり、親指の頭くらいの大きさです。顎下腺の近くに、顔面神経の一部・舌下神経・舌神経が通っているため、手術を受ける際は注意を払っておこなわれます。

そのほかの唾液腺がん

唾液腺がんはほかにも、大唾液腺のひとつである舌下腺がん、小唾液腺がんがあります。

舌下腺がん

唾液腺がんのうち、2~3%に発生します。舌下腺は舌の側面の下にあり、大きさは顎下腺の1/5程度です。舌下腺は粘性の高い唾液を分泌しています。

小唾液腺がん

唾液腺がんのうち、発生するのは1%程度です。小唾液腺は、舌の側縁とくちびる・頬・上あごの粘膜にあります。

唾液腺がんの初期症状

唾液腺がんの初期症状

唾液腺がんの初期症状でもっとも多くみられるのは、痛みをともなわない腫れやしこりです。耳下腺がんでは耳の下あたりに、顎下腺がんや舌下腺がんではあごの下に腫れやしこりの症状があらわれます。

がんが進行してくると、どの唾液腺がんにおいても痛みやしびれがあらわれます。耳下腺がんでは、顔面神経麻痺も起こることがあるのです。顔面神経麻痺では、顔が思うように動かない・目を閉じることができない・口から水分がこぼれる・片方の口角が下がるなどの症状がみられます。

顔面神経麻痺は、ほかの疾患でも生じることがありますが、耳の下あたりに腫れやしこりをともなう場合は耳下腺がんの可能性があります。

唾液腺がんの分類と5年生存率

唾液腺がんの分類と5年生存率

唾液腺がんを病期と組織型の悪性度にわけて、分類と5年生存率を確認しましょう。

ステージ分類と5年生存率

唾液腺がんのうち、耳下腺がんのステージを決めるTNM分類は以下のとおりです。

■T因子(がんの大きさや広がり具合)

T1がんの大きさが2cm以下で、ほかの組織や神経に広がっていない
T2がんの大きさが2cmを超えるが4cm以下で、ほかの組織や神経に広がっていない
T3

以下の条件のうち、どちらか一方または両方をみたす場合

  • がんの大きさが4cmを超える
  • がんがほかの組織や神経に広がる(T4に設定された組織や神経を除く)
T4a

以下の条件のうち、どちらか一方または両方をみたす場合

  • がんが皮膚・下顎骨・外耳道へ広がっている
  • がんが顔面神経へ広がっている
T4b

以下の条件のうち、どちらか一方または両方をみたす場合

  • がんが頭蓋底や翼状突起へ広がっている
  • がんが頸動脈を1周するように取り囲んでいる

■N因子(リンパ節に対する転移)

N0耳下腺とつながっているリンパ節への転移なし
N1

以下の条件のうち両方をみたす場合

  • がんが発生した場所と同側に1ヶ所のリンパ節転移で、大きさが3cm以下
  • リンパ節から外側にがんが広がっていない
N2a

以下の条件のうち両方をみたす場合

  • がんが発生した場所と同側に1ヶ所のリンパ節転移で、大きさが3cmを超えるが6cm以下
  • リンパ節から外側にがんが広がっていない
N2b

以下の条件のうち両方をみたす場合

  • がんが発生した場所と同側に複数箇所のリンパ節転移で、大きさが6cm以下
  • リンパ節から外側にがんが広がっていない
N2c

以下の条件のうち両方をみたす場合

  • がんが発生した場所と反対側または両側のリンパ節転移で、大きさが6cm以下
  • リンパ節から外側に広がっていない
N3aリンパ節転移の大きさが6cmを超えているが、リンパ節から外側にがんが広がっていない
N3bリンパ節転移の個数にかかわらず、リンパ節からほかの組織や神経にがんが広がっている

■M因子(遠くの臓器に対する転移)

M0唾液腺から離れた臓器への転移なし
M1唾液腺から離れた臓器への転移あり

TNMの各因子によって、耳下腺がんのステージは以下のとおりに分類されます。

ステージ T因子 N因子 M因子
ステージ1 T1 N0 M0
ステージ2 T2 N0 M0
ステージ3 T3 N0 M0
T1~T3 N1 M0
ステージ4a T1~T3 N2 M0
T4a N0~N2 M0
ステージ4b T4b Nにかかわらず M0
Tにかかわらず N3 M0
ステージ4c Tにかかわらず Nにかかわらず M1

耳下腺がんにおいて、論文発表されたステージ別の5年生存率は次のとおりです。

ステージ1100%
ステージ297.7%
ステージ371.6%
ステージ451.6%

(引用:耳下腺癌 184 例の治療成績

悪性度分類と5年生存率

唾液腺がんは、がん細胞の形状や増え方で分類される組織型によって、低悪性度群・中悪性度群・高悪性度群の3つにわけられます。5年生存率はそれぞれの組織型で異なり、下表のとおりです。

低悪性度群
5年生存率:85%以上
粘表皮癌(低悪性度)
腺房細胞癌
多型腺癌
明細胞癌
基底細胞腺癌
導管内癌
腺癌NOS(低悪性度)
上皮筋上皮癌
多形腺腫由来癌(被膜内・微小浸潤型)
分泌癌
オンコサイト癌
唾液腺芽腫
中悪性度群
5年生存率:50~85%
粘表皮癌(中悪性度)
腺様囊胞癌(篩状・管状型)
脂腺腺癌
リンパ上皮癌
高悪性度群
5年生存率:50%以下
粘表皮癌(高悪性度)
腺様囊胞癌(充実型)
腺癌NOS(高悪性度)
唾液腺導管癌
筋上皮癌
多形腺腫由来癌(広範浸潤型)
癌肉腫
低分化癌
扁平上皮癌

唾液腺がんの検査・診断

唾液腺がんの検査・診断

唾液腺がんの検査・診断は次のようにおこなわれます。問診・視診・触診によって、腫れやしこり、痛み、顔面神経麻痺がみられた場合、がんである可能性が高いです。

がんが疑われる場合は、画像診断をおこないます。唾液腺がんにおいて最初におこなわれるのは超音波検査で、良性か悪性かおおよその判断ができます。

周りの組織への広がり具合を確認するために必要に応じておこなうのは、MRI検査やCT検査です。がんであるか否か組織型を判定するためには、超音波ガイドのもと病変部分に針を刺して一部の細胞を採取する穿刺吸引細胞診をおこないます。

穿刺吸引細胞診をおこなっても、組織型ががんであるか否か確定できないケースもあります。手術で切除した組織を病理検査した後に、がんであると診断されることもあるのです。

唾液腺がんの治療方法

唾液腺がんの治療方法

唾液腺がんの治療において、がんが取り除ける場合は手術が第一選択です。ほかの治療方法は、術後の補助や手術ができない場合に適用されます。治療方法について詳しくみていきましょう。

手術療法

手術療法は、唾液腺がんで根本的な治癒をめざす治療です。耳下腺がんと顎下腺がんの手術方法について解説します。

耳下腺がん

耳下腺がんでは、がんの広がり具合や悪性度によって切除する方法が決められます。切除方法は、耳下腺浅葉切除術・耳下腺全摘術・耳下腺拡大全摘術の3つです。顔面神経麻痺がみられない場合、耳下腺がんの手術ではできるだけ顔面神経を温存する方針が検討されますが、病状しだいで顔面神経も切除することがあります。

耳下腺浅葉切除術は、顔面神経より表面側のみ切除する方法です。がん病変が小さく悪性度が低いケースで適用されます。

耳下腺全摘術は、耳下腺をすべて切除する方法です。手術前の検査で悪性とはっきり診断されており、がんの大きさが耳下腺内にとどまっているケースで適用されます。

耳下腺拡大全摘術は、耳下腺のほかに近くの筋肉や皮膚・下顎骨・側頭骨など周りの組織も一緒に切除する方法です。がんが耳下腺を超えて広がっていたり、悪性度が高かったりするケースで適用されます。頸部リンパ節へ転移がある場合や悪性度が高い場合、転移の可能性がある頸部リンパ節を周りの組織ごと切除する頸部郭清術も同時におこないます。

顎下腺がん

顎下腺がんでおこなうのは、がん病変と顎下腺すべてを切除する顎下腺全摘術です。がんが顎下腺を超えて、近くの神経・筋肉・皮膚・骨などに広がっているケースでは、周りの組織も一緒に切除します。頸部リンパ節へ転移がある場合や悪性度が高い場合は、頸部郭清術も一緒におこなわれます。

手術による副作用の治療

耳下腺拡大全摘術や顎下腺全摘術において、周りの組織も切除したケースでは切除範囲が広いため、手術によって欠損した部分をもとに戻す顔面再建術をおこないます。顔面再建術では、体のほかの部位から皮膚や皮下脂肪などを移植して、顔の変形を矯正するのです。

がん組織と一緒に顔面神経を切除した場合、できる限り早急に神経の再建手術をおこないます。顔面神経の再建方法には次の2通りがあります。

  • ほかの部分から神経を移植して麻痺した部分を動かせるようにする方法
  • 顔面神経麻痺によって起こる見た目の変化を修復する方法

手術以外の治療方法

放射線治療は、手術で病変を完全に取り除けなかったり、組織型が高悪性度群であったりしたケースで術後補助療法に用いられます。ほかに放射線治療が検討されるのは、手術の適用にならなかったケースです。ただし、放射線治療の単独使用で根本的な治癒をめざすのは難しいとされています。

薬物治療は、一部の組織型の補助治療でおこなうことがあります。ただし現時点では、治療成績が良好かつ確立された方法がないため、その時点の条件で使用する薬剤が変わります。

まとめ

唾液腺がんは、罹患者数が非常に少なく希少がんに区分されています。唾液腺がんは発生した場所によって4種類にわけられ、発生頻度の多い順に耳下腺がん・顎下腺がん・舌下腺がん・小唾液腺がんがあります。

唾液腺がんの初期症状は、耳の下やあごのしたに痛みのない腫れやしこりです。進行してくると痛みやしびれがあらわれ、耳下腺がんでは顔面神経麻痺もあらわれることがあります。

唾液腺がんは、早期ステージで組織型が低悪性度群であると、5年生存率は85%以上と良好です。治療方法は手術が第一選択で、放射線治療や薬物療法は術後の補助療法としておこなわれます。

唾液腺がんのような希少がんでは、患者さん自身が治療にかかわる情報を集めるのが困難なこともあります。病状や治療に対する理解を深めたいときは、セカンドオピニオン制度の利用を検討してみましょう。

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