乳がんの放射線治療が虚血性心疾患(IHD)のリスクを高める?

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乳がんの放射線治療が虚血性心疾患(IHD)のリスクを高める?

乳がんは、アメリカの女性のがん死亡理由の主な要因とされています。

そんななか、最新の放射線治療は乳がんを発症した患者の生存率を向上させましたが、同時に「虚血性心疾患」のリスクを高める恐れがあります。

乳がんと放射線治療、そして虚血性心疾患(IHD)の関係性についてお伝えします。

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乳がんと放射線治療

乳がんを発症した場合、そのがんが「局部的」と診断された段階では、生存率はより高くなります。
アメリカ人女性のうち60.8%が、この段階で診断を受けています。

監視疫学遠隔成績プログラム(SEER Program)のデータによれば、この段階における患者の5年生存率は、98.5%であるとのこと。
また、これらのケースでは、腫瘍摘出手術や乳房切除術といった外科的手術に加え、放射線治療も行われます。

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1~3つの陽性リンパ節を持つ女性の、再発性のがんや乳がんに関連する死亡率を減少させるという点から、乳房切除術後の放射線治療は有効であると言われています。
ただし、「胸部への放射線治療は、虚血性心疾患(IHD)の発症率を高める?」といった疑問が持たれています。

放射線治療とIHD

虚血性心疾患(HD)とは、心臓の周りを通っている「冠動脈」が、動脈硬化などによって狭くなったり閉塞して、心筋(心臓の筋肉)に血液が通らなくなることで起こる疾患です。

最近の研究では、女性が乳がん治療中に受ける放射線量が、IHDの続発のリスクに影響を与えることが示されています。

乳房および心臓への放射線量は、以前と比べて大幅に減少しています。
ただし、それでも右乳房の悪性腫瘍への放射線治療を行うと、心臓は約1~2Gyの線量の被ばくがあります。
左乳房の疾患に対する心臓被ばくは、10Gyに達することもあります。

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イギリス・オックスフォード大学の臨床試験サービス部門・治験責任者であるSarah C. Darby医師らは、浸潤性乳がんに対して外商社療法を受ける女性の、主要冠動脈疾患のケース・コントロール研究を実施しました。

Darby医師は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌で、以下のような例を挙げています。

  • ベースライン時に心臓病のリスク要因を持っていない50歳の女性は、心臓への3-Gyの放射線量で、80歳の時に重大なIHDのリスクを1.9%~2.4%(0.5%)、最低でも1つの急性冠動脈疾患のリスクを4.5%~5.4%(0.9%)高める。
  • 少なくとも1つ、心臓のリスク要因を持つ50歳の女性は、3-Gyの放射線量で80歳の時に重大なIHDのリスクを3.4%~4.1%(0.7%)高め、その時までに最低でも1つの急性冠動脈疾患のリスクを1.7%持っている。

Darby医師は研究結果について、このように伝えています。

「放射線関連のリスクは、おそらく女性がもともと持っているリスクを重複するものがある。そのため、心疾患のリスクが高い女性は、放射線関連のリスクも高くなると考えられる」

放射線の照射技術は、この数十年で大幅に改善されました。
しかし、放射線の照射に不随して起こる心臓の被ばくが懸念事項であることは変わりません。
この被ばくは、可能な限り最小限に抑えなければならない課題です。

トロント大学の放射線腫瘍学教授、Fei-Fei Liu医師は、次のように述べています。

「現代の技術をもって、乳がん患者の心臓への線量を大幅に減少させ、心臓病のリスク要因をしっかり管理できているか再確認することが重要である」

心臓への照射線量を減少させるには?

心臓への照射線量を大幅に減少させるには、次のような方法が考えられます。

  • 患者の体勢を変える(たとえば、仰向けからうつ伏せに変える)
  • 放射される領域を変更する

さらにDarby医師は、このように述べています。

「内部乳腺連鎖の放射をしない接戦勝者の研究では、うつぶせで治療を受けた患者の心臓に浴びる放射線量は、たいてい1~2Gyである。これは呼吸制御付きで、仰向けで放射線治療を受けた患者の心臓の放射線量と似ている。これら2つの方法は、がん専門医の間でさらに利用されることになるだろう」

また、Darby医師は「患者それぞれのCT画像を含む最新の放射線治療計画システムは、放射線治療医がさらに正確に、心臓への放射線量をコントロールする能力を向上させる」としています。

臨床医に対しても、このように呼びかけています。
「心臓への放射線量を減少させるために、標的組織の範囲に関して妥協することは、リスクがある行為。大切なのは、標的組織絵を的確にカバーすることである」

放射線治療のさらなる発展、進歩が望まれます。

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