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【最新がん治療】がんの増殖を防ぐ最強のコンビネーション放射線治療と免疫療法の併用

放射線治療と免疫療法の併用治療は昔から研究が行われていました。

近年、放射線治療の効果を高める免疫チェックポイント阻害剤の登場や、アブスコバル効果の発見によって、がんは放射線治療の時代を迎えたといっても過言ではありません。

そこで今回は、そんな放射線治療と免疫治療を併用することの効果についてご説明します。

最新がん治療 放射線治療

なぜがん患者さんは免疫力が落ちやすいのか?

放射線治療でがんに放射線を照射すると、がん細胞の遺伝子が放射線によって切断されるため、体内の免疫細胞が優位になってがん細胞をやっつけることができます。

つまり、放射線治療は免疫の働きと切っても切り離せない関係にあるのです。しかし、がん患者さんはその大切な免疫機能が落ちやすいという問題があります。

その理由は、がん細胞を攻撃する重要な免疫細胞のひとつである「T細胞」が、活性化しすぎて身体の正常な組織まで攻撃してしまうからです。いわゆる自己免疫疾である膠原病(こうげんびょう)も、この原理によって引き起こされます。

そこで、T細胞は自己免疫疾患に陥らないように、免疫を抑制する機能を発動します。つまり、がん細胞への攻撃のアクセルを踏みつつ、免疫が暴走しすぎないようにブレーキも同時にかけるのです。このT細胞のブレーキ機能を「免疫チェックポイント」といいます。

ところが、がん細胞はこの免疫チェックポイントを逆手にとって、T細胞の攻撃をあの手この手で邪魔しようとします。T細胞の表面には、攻撃すべき敵かどうかを見極める「PD-1」という物質がありますが、がん細胞は表面に「PD-L1」という物質を作って、T細胞が敵を見極める機能を封鎖してしまうのです。それによって、T細胞はがん細胞を攻撃対象とみなさなくなり、がん細胞が増殖しても反応しなくなります。

また、T細胞自体も増殖が抑えられたり、自滅に追いやられたりします。がん細胞が免疫力を邪魔するのはこれだけではありません。

がん細胞はT細胞の表面にある「CTLA-4」という物質を通じて、免疫細胞の司令塔の役割を担っている「樹状細胞」に対しても、がんへの攻撃を止めるよう働きかけます。

このように、がん細胞が免疫細胞の機能を悪用することで、結果的にがん細胞への攻撃力がパワーダウンしてしまうことになります。がん患者さんが健康な人よりも免疫力が下がってしまうのは、こうした背景があるからなのです。

放射線治療後の免疫療法で治療効果アップ

そもそもがんが発生するのは、免疫力が低下してしまうことが大きな原因です。

がん患者さんの免疫力が下がれば、がんが再び増殖する危険性が増します。もし手術でがん細胞を取り除いていたとしても、目に見えない微小ながんが残っていると、抗がん剤治療などでは根治できなかったがん細胞が、年月を経て再発したり、転移したりする可能性が高くなります。

そこでおすすめしたいのが、免疫力を強化する免疫療法です。

免疫療法とは、がんの3大標準治療に次ぐ「第4の治療法」として注目されている治療法です。簡単にいうと、私たちの身体に備わっている免疫細胞を強化して、がん細胞をやっつける方法です。

患者さんは本来の免疫機能が弱ってがん細胞が増殖している状態なので、その根本原因である免疫機能を強化することは、がんを治すうえで欠かせません

免疫療法は、自分の免疫細胞を採血によって体外に取り出し、培養・活性化して大量に増殖させ、点滴によって再び体内に戻す方法なので、身体にとても優しい治療法といえます。

また、最初にがんができた原発巣がわからない場合も、免疫療法で免疫力自体を強化することで、全身のがん細胞を減らす効果が期待できます。加えて、免疫療法で免疫力が上がれば、がんに限らず、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症への抵抗力も増します。

放射線治療は身体の免疫力との連携で治療効果が上がるので、放射線治療の後に自身の免疫細胞を増やして投与する免疫療法を行うことで、さらに高い治療効果が望めます。

放射線治療をすると、放射線を照射していない箇所のがんも小さくなるアブスコパル効果についてお話ししましたが、放射線治療と免疫療法を併用することで、このアブスコパル効果も期待できます。

関連記事:照射していない転移がんが消える「アブスコパル効果」

免疫細胞を増強する「BAK療法」

免疫療法のひとつであるBAK療法(BRM Activated Killer)」は、体内に備わっている免疫細胞の「ガンマ・デルタT細胞(γδT細胞)」と「NK細胞(ナチュラルキラー細胞)」を利用した治療法です。

ガンマ・デルタT細胞は、がん化し始めた細胞の変化を鋭く察知し、異常な細胞だけを狙い撃ちする免疫細胞です。

ノーベル賞受賞科学者の利根川進博士がガンマ・デルタT細胞を発見し、免疫療法の権威・海老名卓三郎博士ががんに有効な細胞であることを突き止め、BAK療法を開発しました。また、ガンマ・デルタT細胞は東京大学ががん患者さんを対象に実施した臨床試験でも採用されています。

もうひとつのNK細胞は、常に血液中をパトロールしており、がん細胞やウイルスなどの異物を発見すると、最前線で攻撃を仕掛ける免疫細胞です。

BAK療法は、自分の体内にあるこれらの免疫細胞を培養して増やし、再び体内に戻す治療法なので副作用もほとんどありません。まれに投与した当日に発熱する場合がありますが、一過性で数時間後には平熱に戻ります。

通常、がん細胞は免疫細胞からの攻撃を免れるために、約70%のがん情報を隠すといわれており、一般的な免疫療法ではうまくがんを攻撃できません。

しかしBAK療法なら、がん細胞を認識するために別の分子(NKG2D)を使用するので、多くのがん細胞に対してアプローチでき、微小ながん細胞に対する効果も期待できます。

患者さんは月に1回採血をして、約2週間かけて培養したリンパ球を点滴で戻すサイクルを1クールとして12回行うのが基本です。複数回行うのは、回数を重ねることで免疫細胞を強化できるからです。

BAK療法の工程(例)

治療工程1:患者さんから採血 患者さんから20mlの血液を採取。血液を遠心分離。

治療工程2:リンパ球抽出採取した20mlの血液からリンパ球(約1000万〜2000万個)を抽出。

治療工程3:初期培養〜培養(約14日間) 抽出したリンパ球の培養を開始。さらにCO2ガス培養機で平均14日間培養すると、リンパ球が最大約100億個に増殖。

治療工程4:リンパ球の回収とキラー活性処理 遠心分離でリンパ球のみ回収し、キラー活性処理でがん細胞への攻撃力を強化。

治療工程5:患者さんに点滴投与(約1時間) 培養・活性化したリンパ球200mlを静脈点滴で患者さんに戻す。

「免疫チェックポイント阻害薬」とは?

「なぜがん患者さんは免疫力が落ちやすいのか?」で、免疫細胞が暴走しないようにT細胞の働きを抑制する免疫チェックポイントについてお話ししました。

この働きを利用した免疫療法の薬が「免疫チェックポイント阻害薬」です。

簡単にいうと免疫細胞ががん細胞への攻撃をやめることなく、キープするように働く薬です。

免疫細胞のT細胞や、免疫細胞の働きを邪魔するがん細胞に作用し、身体の免疫機能にブレーキがかかるのを防いでくれる働きがあります。それによって、がん患者さんの免疫力が低下することで高まる再発や転移のリスクを軽減できます。

日本で承認されている免疫チェックポイント阻害薬の種類は「PD-1阻害薬」「CTLA-4阻害薬」「PD-L1阻害薬」の3種類です。

カーター元アメリカ大統領も、2015年に免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダを使用したことで、脳と肝臓に転移した悪性黒色腫(メラノーマ)がすべて消え、新たながん組織も見つからなかったことがメディアに報道されました。

現在、世界各国で免疫チェックポイント阻害薬の開発が急速に進んでいるので、今後ますます多くの薬が商品化され、ここでご紹介した以外の薬も新たに日本で承認される可能性が高いといえます。

免疫チェックポイント阻害薬によって、がん細胞に作用する場所や働き方が異なるので、治療効果のあるがんの種類もそれぞれ異なります。

免そのため、進行がんの患者さんには複数の免疫チェックポイント阻害薬を使い分けることが大切です。

当院でも、ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、イピリムマブ(ヤーボイ)、アテゾリズマブ(テセントリク)などの免疫チェックポイント阻害薬を患者さんに対して使い分けることで治療効果を上げています。

免疫チェックポイント阻害薬に加えて、抗腫瘍免疫を回復・増強する免疫療法を併用し、さらにアブスコパル効果を組み合わせると、より高い治療効果が望めます。

関連記事:照射していない転移がんが消える「アブスコパル効果」

まとめ

放射線治療と免疫療法の併用が、いかにがん治療に有効かご理解いただけたかと思います。 進行がんの場合は、サイバーナイフやトモセラピーなどの高精度放射線治療の後に、免疫チェックポイント阻害薬と免疫療法を併用することで、がんの進行を多方面から食い止めることができるということをぜひ覚えておいてください。

【監修】 佐藤俊彦 医師
医療法人 DIC
宇都宮セントラルクリニック 理事

出典:佐藤俊彦『ステージ4でもあきらめない 最新がん治療』(幻冬舎、2022/2/24)

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