胆のうがんの末期・ステージ4における治療の選択肢について

胆のうがんの末期・ステージ4と診断されたとき、患者さんやご家族は「これからどうなるのだろう」とさまざまな思いを抱くでしょう。
病気のことを正しく理解し、どのような選択肢があるかを知ることは、治療に向き合うための大切な一歩です。
この記事では、胆のうがんの基本的な知識から現在受けられる治療の内容、納得のいく治療選択に役立つ情報まで、わかりやすく解説します。
目次
胆のうがん末期とは

胆のうがんの末期・ステージ4がどのような状態なのか、基本的なところから確認していきましょう。胆のうという臓器の特徴や、がんが起こる背景についてもわかりやすく解説します。
胆のうがんの基本知識
胆のうがんは、肝臓で作られた胆汁を一時的に蓄える袋状の臓器「胆のう」にできる悪性腫瘍です。胆道がんのうちの1つに分類され、消化器がんの中でも早期発見が難しいがんとして知られています。
胆のうは体の奥まった場所にあり、初期症状が出にくいことから、健康診断の超音波検査で偶然発見されるケースや、ある程度進行してから見つかるケースが多いのです。
また、胆のうの周りは肝臓や膵臓、十二指腸といった重要な臓器が密集しており、がんが広がりやすい特徴があるため、見つかったときには周りに影響が及んでいることもあります。
胆のうがん末期・ステージ4の定義と病態
ステージ4は、がんの広がりやリンパ節転移、遠隔転移の有無などをもとに分類される、もっとも進行した病期です。
ステージ4では、手術でがんをすべて取り除くことが容易ではないため、抗がん剤による薬物療法で進行を抑えたり、痛みなどのつらい症状を和らげる緩和ケアをおこなったりすることが主な治療目的となります。
胆のうがんを引き起こす要因
胆のうがんを引き起こす要因はいくつかあります。
胆のうがんでは、胆石がみられる患者さんが多い傾向があり、石による慢性的な炎症や胆汁成分の変化ががんの発生にかかわっていると考えられています。
また、生まれつき膵管と胆管の合流に異常がある「膵胆管合流異常」は、非常に高い確率でがんを合併するリスク要因として知られているのです。
そのほか、10ミリを超える大きなポリープや、なだらかに盛り上がった形の病変もがん化する可能性があります。
胆のうがん末期であらわれる主な症状

胆のうがんが末期・ステージ4まで進行すると、全身にさまざまな症状があらわれます。ここでは、特に多くみられる3つの症状について詳しく解説しましょう。
黄疸
黄疸は、胆のうがんが進行し、がんによって胆汁の通り道が塞がれることで起こります。
本来は腸へ流れるはずの胆汁が血液中に逆流し、胆汁に含まれる黄色い色素(ビリルビン)が全身を巡ることで、白目や皮膚が黄色く変色します。
また、尿の色が紅茶のように濃くなったり、便の色が白っぽくなったりすることもあるのです。さらに、ビリルビンの影響で皮膚に強いかゆみがあらわれることもあります。
腹痛
がんが周囲の組織や神経にまで広がると、痛みがあらわれます。特にみぞおちや右わき腹、右上腹部などの痛みが比較的よくみられます。
初期は無症状のことも多いですが、進行するとがんが周囲の神経に深く及ぶため、痛みが強まる傾向があるのです。
痛みの感じ方は人それぞれで、はっきりとした鋭い痛みだけでなく、お腹全体が重い・どんよりとした違和感としてあらわれることもあります。
体重減少
がん細胞が急激に成長して体のエネルギーを大量に消費するため、食事量にかかわらず短期間で体重が大きく減少します。
体重の減少には、食欲の低下や吐き気も大きく関わっています。胆のうがんが胃や十二指腸にまで広がると食事が十分に摂れなくなったり、消化機能が低下したりして、体重がさらに減少しやすくなるのです。
また、がんの進行によって食欲や肝機能が低下することで、全身のだるさ(倦怠感)もあらわれることがあります。
胆のうがん末期における余命

胆のうがんの末期・ステージ4では、今後の見通しを把握しておくことが、治療の方向性を考えるうえで役立ちます。生存率や進行のスピード、余命にかかわる要因など、知っておきたいポイントを確認しましょう。
胆のうがん末期・ステージ4の5年生存率
胆のうがんの末期・ステージ4において、診断から5年後の生存率は2.1%と報告されています。
ステージ1の5年生存率は80%以上ですが、病期が進行するにつれて生存率は大きく下がります。ステージ4では診断から1年後の生存率が21.2%であり、発見時点ですでにほかの臓器へ転移しているケースが多いことが背景にあるのです。
胆のうがんは消化器がんの中でも治療が難しく、末期ではがんを完全に取り除く治療よりも、症状をやわらげることを中心とした治療が選択されます。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録全国集計」胆嚢がん(胆嚢癌)
胆のうがんの進行速度
胆のうがんは進行しやすいがんとされています。その理由の1つに、臓器自体の構造が挙げられます。
胆のうの壁は、消化管と異なり粘膜筋板や粘膜下層がないため、ほかの臓器に比べて薄く、発生したがんが壁を突き抜けやすい構造です。
さらに、胆のうのすぐ隣には肝臓や胆管、膵臓といった重要な臓器が密集しているため、壁を越えたがんはこれらの臓器へ速やかに広がる可能性があります。
また、初期段階では自覚症状がほとんどなく、痛みや黄疸などの症状があらわれた時点では、すでにがんが進行しているケースが多くみられます。
このように、胆のうがんは周囲へ広がりやすく、さらに早期には自覚症状が出にくい特徴があるため、早期発見・早期対応が重要です。
余命に影響を与える要因
胆のうがんの余命に影響を与える主な要因は以下のとおりです。
周囲への広がり
がんが隣接する肝臓や大きな血管、胆管などの重要な場所へどの程度広がっているかが重要なポイントです。
広範囲に及んでいる場合は、がんを完全に取り除く手術が難しくなり、治療の選択肢が限られるため、その後の経過に大きく影響します。
リンパ節転移
がんが発生した場所から、どのくらい遠くのリンパ節まで転移しているかが重要です。
転移の範囲が広いほど生存率は低くなる傾向があり、がん細胞が全身に広がっている可能性も高まります。その後の予後を左右する大きな要因の1つです。
患者の全身状態
患者さん本人の体力や持病の有無も予後に影響します。体力が維持されていれば、標準的な化学療法を継続できる可能性が高まり、生存期間の延長につながります。
胆のうがん末期における標準治療の選択肢

末期・ステージ4の治療は、薬でがんの進行を抑える方法から、体のつらい症状をやわらげるケアまで、いくつかの選択肢があります。それぞれの治療法について解説します。
薬物治療
薬物治療では、主に細胞障害性抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬が使用されます。
それぞれの治療について使用する薬剤や特徴を解説しましょう。
細胞障害性抗がん剤
細胞障害性抗がん剤は、従来から広く使われており、細胞分裂に働きかけてがん細胞の増殖を抑える薬です。主な薬剤には、点滴薬のゲムシタビンやシスプラチン、内服薬のS-1があります。
これらを組み合わせたGC療法・GS療法・GCS療法などが標準治療です。近年では、GC療法に免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせる治療が選択されることもあります。
全身のがん細胞に働きかけられる一方、正常な細胞にも影響を与えるため、吐き気やだるさ、白血球の減少などの副作用が生じることがあります。患者さんの体力や腎機能などの状態に合わせて、適切な薬剤の組み合わせや投与量が検討されます。
分子標的薬
分子標的薬は、がん細胞の増殖にかかわるタンパク質など特定の分子を標的にするタイプの薬です。
胆のうがんでは、がんの遺伝子を調べた結果によって、分子標的薬が治療の選択肢になることがあります。たとえば、特定の遺伝子異常が見つかった場合には、ペミガチニブやフチバチニブ、エヌトレクチニブなどの薬が検討されることがあります。
どの薬が使えるかは、見つかった遺伝子異常の種類やこれまでの治療内容によって異なります。 そのため、分子標的薬を使えるかどうかは、遺伝子異常の有無を調べたうえで判断されます。
検査には、多くの遺伝子をまとめて調べる「がん遺伝子パネル検査」などがあり、必要に応じて個別の遺伝子検査がおこなわれることもあります。
ゲムシタビン+シスプラチン+免疫チェックポイント阻害薬
がん細胞が免疫の働きを回避するしくみに作用する免疫チェックポイント阻害薬と、従来の細胞障害性抗がん剤を組み合わせた治療が選択されることがあります。
代表的なものに、ゲムシタビンとシスプラチンにデュルバルマブを加えた「GCD療法」や、ペムブロリズマブを加えた「GCP療法」などが挙げられます。
従来の細胞障害性抗がん剤と組み合わせることで生存期間を延ばす有効性が証明されており、現在はステージ4の初回治療として推奨されています。
緩和ケア
胆のうがん末期・ステージ4における緩和ケアは、胆道ドレナージを中心にさまざまなケアがあります。どのようなケアがあるか確認しましょう。
胆道ドレナージ
がんで胆道が詰まると胆汁が滞り、黄疸という皮膚が黄色くなる症状や強いかゆみが生じます。これを改善し、胆汁の流れを確保する処置が胆道ドレナージです。
方法には「外ろう」と「内ろう」の2種類があります。
外ろうはチューブを使い、胆汁を鼻やお腹から体の外に出して袋に回収する方法です。一方、内ろうは、ステントというプラスチックや金属の管を胆管内に置き、胆汁を腸の中へ流す方法になります。
黄疸が改善されると、体のだるさが和らぐだけでなく、抗がん剤治療を継続しやすくなるため、生活の質を保つうえで非常に重要な処置です。
そのほかの緩和ケア
緩和ケアは、痛み・不安・だるさなど、心身のさまざまな症状を診断時から和らげるケアです。
がんの強い痛みに対しては、モルヒネやオキシコドン、フェンタニルなどの医療用麻薬を使用します。骨転移による痛みには、症状緩和を目的とした放射線治療が検討されます。
ほかにも、吐き気には制吐剤、食欲不振やだるさにはステロイド薬の使用や日常の工夫で対処できます。
心の不安や経済的な悩みについては、専門の看護師やソーシャルワーカーへの相談も可能です。
胆のうがん末期における標準治療以外の選択肢

胆のうがんの末期・ステージ4では、抗がん剤などの標準治療に加えて、以下の治療法が選択肢となることがあります。それぞれの治療について特徴をみていきましょう。
放射線治療・化学放射線療法
放射線治療は、高いエネルギーの放射線をがんにあてて、がんを小さくしたり進行を抑えたりする治療です。主な目的は、痛みや黄疸といった症状を和らげ、生活の質を保ちながら生存期間を延ばすことです。
また、抗がん剤と放射線を組み合わせた化学放射線療法もあります。薬物治療と放射線治療を併用することで、がん細胞が放射線の影響を受けやすい状態を作り、より効率よく治療効果を高める方法です。
近年は、周囲の正常な組織を避けながらがんに集中的に放射線をあてる技術も進化しており、体への負担を抑えた方法が検討されています。
免疫放射線治療
免疫放射線治療は、放射線治療と免疫療法を組み合わせた治療法です。
放射線によってダメージを受けたがん細胞の情報を免疫細胞に学習させ、免疫療法を追加することで、免疫細胞の働きが活性化し全身への治療効果が高まる可能性が期待されています。
免疫放射線治療の特徴は、放射線をあてた場所以外のがんも小さくなる「アブスコパル効果」が期待できる点です。局所的な放射線治療と全身に作用する免疫療法の長所を組み合わせることで、遠隔転移があるステージ4でも検討される治療法になります。
ただし、すべての患者さんに一般的におこなわれる治療ではなく、適応は慎重に判断されます。希望する場合は、担当医や知見のある医師とよく相談しましょう。
免疫放射線治療についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
>>免疫放射線療法とは?最新がん治療について
胆のうがん末期におけるセカンドオピニオンの活用

セカンドオピニオンは、治療の方向性をより深く理解したり、治療の選択肢を広げたりするために役立つ手段です。受けるタイミングや、より充実した相談にするためのポイントについて解説しましょう。
セカンドオピニオンを受けるタイミング
胆のうがんの末期・ステージ4において、セカンドオピニオンを受ける適切な時期は、担当医から今後の治療方針を説明されたときです。また、治療の途中で病状が変化し、改めて方針を立て直す際も良い機会となります。
注意点として、セカンドオピニオンは「別の医師の意見を聞くこと」が目的であり、その場で新しい検査や治療を受けられるわけではありません。受診には現在の担当医が作成した紹介状や画像データが必要です。
ステージ4では治療方針を早めに整理することが大切なため、治療開始までの期限を担当医に確認し、すみやかに準備を進めましょう。
なお、費用は保険適用されず自費診療となります。
セカンドオピニオンを存分に活かすポイント
セカンドオピニオンを有意義なものにするために、聞きたい内容やこれまでの経過を事前にメモにまとめ、限られた時間を有効に活用しましょう。説明や内容の整理に不安がある場合は、家族など信頼できる人に同席してもらうことも大切です。
医師選びでは、主治医とは異なる分野の専門家に相談すると、より多角的な情報を得られます。胆道がんの診療経験がある医師や、がん診療を専門とする医療機関に相談すると、治療方針を別の視点から確認できます。
提案された方法以外の選択肢を検討したい場合、異なる専門分野の視点を取り入れることで治療の選択肢が広がり、より納得のいく決断につながるでしょう。
セカンドオピニオンについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
>>セカンドオピニオンとは?費用や注意点など徹底解説
>>セカンドオピニオンのやり方とは?準備するものや手順など解説
まとめ

胆のうがんの末期・ステージ4と診断されても、治療の選択肢はいくつかあります。
抗がん剤を中心とした薬物治療や、体にあらわれる症状をやわらげる緩和ケアなど、患者さんの状態や体力に合わせてさまざまな方法の検討が可能です。
また、セカンドオピニオンを活用することで治療の選択肢が広がり、本人や家族が納得したうえで治療に臨めます。担当医や専門家に、気になることを積極的に相談してみましょう。

