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【最先端のがん治療】メチオニンを絶ってがんを治す「メチオニン制限治療」について

メチオニンは、普段口にする食品に含まれる必須アミノ酸の一つです。

がん細胞はこのメチオニンを取り込むことで代謝異常を亢進して増殖を繰り返すことが明らかになりました。

「メチオニン制限治療」は、この仕組みを基に生まれた治療で、がん細胞にメチオニンが行き届かないようにしてがんの根治を目指す最先端のがん治療です。

今回は、メチオニン制限治療を行う上で欠かすことの出来ない画像診断「全身のMET-PET」を国内で唯一実践している宇都宮セントラルクリニックの佐藤先生に、メチオニン制限治療について、実際の症例もあわせてお話を伺いました。

佐藤俊彦先生

佐藤俊彦
医療法人 DIC
宇都宮セントラルクリニック 理事

——本日は、よろしくお願いいたします。

佐藤俊彦先生(以下、佐藤) はい。よろしくお願いします。今回は私たちの宇都宮セントラルクリニックで実施している最先端のがん治療「メチオニン制限治療」についてお話したいと思います。

メチオニン制限治療とは、がんの代謝異常の糧となるメチオニンと呼ばれる必須アミノ酸の一つを絶つことで、がんを治す最先端のがん治療です。

がん細胞は代謝亢進するためにメチオニンをその細胞に蓄積するという特性を持っています。この特性を利用した画像診断の検査が前回ご紹介した「メチオニンPET(MET-PET)」です。

メチオニン制限治療は、「がん細胞は代謝異常」という研究結果のもとに生まれたがん治療で、がんが代謝異常するために必要なエネルギーとなる「メチオニン」を絶てば、がんが死滅するという仕組みです。つまり、がんを兵糧攻めにするわけです。

メチオニンが、がん細胞の代謝異常に深く関わっていることを発見したのが、がん研究の第一人者、ロバート・M・ホフマン博士(※1)です。1971年に、がん細胞の増殖において、必須アミノ酸の一つ「メチオニン」が代謝されることを研究発表されました。

それ以前まで、がん細胞の代謝異常に大量の糖(ブドウ糖/グルコース)を取り込むことが、1960年代にワールブルグ(※2)の発見でわかっていました。この仕組みを利用した画像診断が皆さんもご存じのPET検査です(正式名称はFDG-PET)。

その後、ホフマン博士の発見により、がん細胞の代謝異常において、糖以外にもメチオニンが深く関わっていることを発見して、「MET-PET」「メチオニン制限治療」が生まれたわけです。

宇都宮セントラルクリニックでは、以前よりがんの画像診断における有効性に着目し、最先端のデジタルPETを導入して「全身のMET-PET検査」を実施していました。そのことをお知りになったホフマン博士から、私に直接、全身のMET-PET検査の依頼がありました。

(※1)ロバート・M・ホフマン博士(Dr. Robert M. Hoffman):AntiCancer社の創立者兼CEO。世界的に有名ながん研究の第一人者。1971年にハーバード大学にて生物学の博士号を取得。現、カリフォルニア大学サンディエゴ校の外科部門教授。

(※2)オットー・ワールブルグ博士(Otto Heinrich Warburg):ドイツの生理学者、医師。1931年にノーベル生理学・医学賞を受賞。がん細胞の糖を大量に取り込む性質を発見した。その機序を基に生み出された画像診断が「FDG-PET」。

■メチオニン制限治療で乳がんが7ヵ月で消えた

佐藤 ホフマン先生のご依頼は、メチオニンを分解する酵素「オーラル・メチオニナーゼ」の効果を全身のMET-PET検査で確認してほしいとのことでした。その依頼で撮影したのが、こちらの診断画像になります。

【メチオニン制限治療の効果と全身のMET-PET診断画像】

メチオニン制限治療の効果と全身のMET-PET診断画像

こちらは、乳がん(小葉がん)の患者さんのPET画像です。

向かって最右の画像がFDG-PET、中央の画像が全身のMET-PETによる画像です。矢印で示した部分に腫瘍があるのが認められます。

腫瘍部分を見比べていただけるとお分かりの通り、FDG-PETに比べて、全身のMET-PETのほうが強くUP TAKEを認めます。このことから、この腫瘍は細胞亢進にメチオニンを大量に使う性質である、ということが画像で診断できるわけです。

画像診断を基に、乳がんの患者さんには「AC治療(※3)」とあわせて、メチオニン制限治療を始めていただきました。メチオニン制限治療では、メチオニン制限食よる食事療法と、ホフマン先生の開発したメチオニンを分解する酵素のサプリメント「オーラル・メチオニナーゼ(Oral Mechioninase)」を服用していただきました。

オーラル・メチオニナーゼとは、食事に含まれるメチオニンを分解して吸収されないようにする作用を持つサプリメントです。

メチオニン制限食といっても、どうしてもわずかながらメチオニンは含まれます。オーラル・メチオニナーゼを服用することで、そのわずかなメチオニンをも酵素分解して、がん細胞に行き届かないようにするわけです。

メチオニン制限治療を7カ月行ったあとに全身のMET-PET検査を行ったところ、腫瘍の影はご覧のように消えました(前述画像の最左)。乳がんを治療できたのです。

私自身、この診断画像を見てメチオニン制限治療はこんなにも効くものなのかと改めて驚きました。

■がんは代謝異常という証明となる診断画像

私は、この診断画像が「がんは代謝異常である」というひとつの証明だと思います。

1960年代、がんは遺伝子異常によるものだという研究結果があり、当時はがんの原因が「遺伝子異常」なのか「代謝異常」なのか、という論争が巻き起こりました。

遺伝子異常とする主張が優勢となり、現在までにがんの治療の現場では「分子標的薬」や「遺伝子検査」が主流になっています。

ところが、白血病をのぞく、がん細胞の遺伝子は必ずしもすべてが同じではないこともわかったのです。

例えば、腫瘍はA、B、Cという異なる遺伝子を持つがん細胞から構成されることがよくあります。その場合に、Aに効く分子標的薬(※4)を投与しても、遺伝子の異なるB、Cには当然ながら効きません。腫瘍全体を同時に治療することができないわけです。

メチオニン制限治療であれば、がん細胞の代謝異常を促すメチオニンを止めることで、腫瘍全体を治療することができるのです。

私は全身のMET-PETの画像診断の結果から、がん治療において、代謝異常の説に立ち戻ることが大切だと実感しています。

FDG-PETとMET-PETの2つの診断画像を見比べて、がんの代謝異常の糧となる物質を明らかにし、代謝の強い成分を摂らないように食事制限しながら根治を目指す方法は、がん治療の新しいセカンドオピニオンだと思います。

(※3)AC治療:乳がんの代表的な抗がん剤治療。ACとは、アドリアマイシン(Adriamycin)とシクロホスファミド(Cyclophosphamide)という2種類の異なる作用機序の抗がん剤を組み合わせた治療で、その頭文字をとって AC 療法と呼ばれている。

(※4)分子標的薬:がん細胞の増殖させる遺伝子やタンパク質、栄養を運ぶ血管などを標的にしてがんを攻撃するがん治療薬。抗がん薬とは異なるさまざまな副菜用が出現することがわかっている。

■佐藤先生への質問

――この患者さんの場合、7ヶ月後にがんが消えていますが、メチオニン制限治療の期間は個人差がありますでしょうか?

佐藤 がんの種類によって治療期間は異なります。ただこの患者さんのように、メチオニン集積が大きい患者さんには大変よく効くので治療期間は短くなるでしょう。逆にメチオニン集積が少ない患者さんには効きにくいですね。私たちはその仕組みについても明らかにしていこうと現在も研究に取り組んでいます。

――なぜ、以前は全身のMET-PET検査ができなかったのでしょうか?

佐藤 MET-PETに用いる薬剤「Carbon11」は半減期(薬剤の効果時間)が大変短く、従来のPET機器では全身を撮影するには長い時間がかかるため不可能でした。現在行われている一般のMET-PET検査で、頭部の撮影にのみにしか用いられていない理由のひとつでもあります。

ですが、宇都宮セントラルクリニックでは、最先端のデジタルPET装置を導入することで撮影時間の短縮を実現しています。

デジタルPET装置は、従来のPET装置のように撮影画像をアナログ信号からデジタル信号に変換する工程がなく、直接デジタル信号として扱うため撮影時間を短縮できます。また、デジタル信号を直接扱うことで、従来のPET装置のようにデジタル変換時に画像にノイズが載るようなことがなく、非常に高解像度で撮影できます。小さな腫瘍も鮮明な画像で確認できます。

現在、国内で全身のMET-PETを行えるのは宇都宮セントラルクリニックだけで、いまではアメリカからも全身のMET-PETのご依頼をいただいています。

【従来のPETとデジタルPETの違い】

出典:医療法人DIC 宇都宮セントラルクリニック「新型デジタルPET/CTについて」

――現在、全身のMET-PETはどれくらいの患者さんが受けられているのでしょうか?

佐藤 毎週1日、2名の患者さんを全身のMET-PETで診断しています。

――全身のMET-PETを受ける前、患者さんに制限はあるのでしょうか?

FDG-PETの場合は検査前に厳密な糖質制限がありますが、MET-PETで制限はありません。

――メチオニンの食事治療とは、どのようなものでしょうか?

佐藤 メチオニンは必須アミノ酸の一つで食事から摂ることになります。そこで、メチオニンを多く含む食品を制限することで、がんの細胞亢進のエネルギーとなるメチオニンを減らすことを目的とした食事療法です。

メチオニンは、肉、魚、乳製品など多岐にわたる食材に含まれているので、野菜を中心にしたメニューとなり、体に必要なエネルギーは、オリーブオイルなど油から摂っていただくことになります。

【メチオニンが多く含まれる食品】

順位食品名成分量
100gあたりmg
1卵類/鶏卵/卵白/乾燥卵白3200
2乳類/<牛乳及び乳製品>/(その他)/カゼイン2700
3魚介類/<魚類>/(さば類)/ごまさば/さば節2500
4魚介類/<魚類>/(さけ・ます類)/しろさけ/サケ節/削り節2400
5魚介類/<魚類>/とびうお/煮干し2300
6魚介類/<魚類>/(たら類)/まだら/干しだら2200
6魚介類/<魚類>/(かつお類)/加工品/かつお節2200
6魚介類/<魚類>/(かつお類)/加工品/削り節2200
9魚介類/<魚類>/(かつお類)/加工品/裸節2100
9魚介類/<魚類>/とびうお/焼き干し2100
9魚介類/<魚類>/(いわし類)/たたみいわし2100

出典:文部科学省 食品成分データベース

――ホフマン先生の分解酵素「オーラル・メチオニナーゼ」は、宇都宮セントラルクリニックで処方していただけるのでしょうか?

佐藤 オーラル・メチオニナーゼはサプリメントですので、個人でご購入いただけます。私どもから、ご案内差し上げます。

――メチオニン制限治療、全身のMET-PETを受けたい場合は、どのようにしたらよいでしょうか?

佐藤 全身のMET-PET、メチオニン制限治療のご相談は、当サイトよりお問い合わせください。

――本日は貴重なお話ありがとうございました。

■全身のMET-PET、メチオニン制限治療についてのご相談は、佐藤先生がCTO(最高技術責任医師)を勤める『BodyVoice』までお問い合わせください。

『BodyVoice』お問い合わせフォーム(トップページ最下部にございます)

——本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

聞き手

吉田 剛

吉田 剛:1971年、東京生まれ。短大卒業後、大手IT系出版社に就職。編集長を経験したのち、大手ゲーム会社に転職。その後、WEBメディアの編集長、フリーライターを経て、2021年からGIコンサルティングパートナーズのデザイン戦略部にてライターを務める。

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