セカンドオピニオンを有効活用するために。がん治療における質問例や相談内容、聞くことのまとめ方を解説

がん治療において、主治医から診断結果や治療方針を聞いたときに、セカンドオピニオンを考慮する人が近年増えてきました。しかし「実際の受診では何を質問すれば良いのか」「限られた時間で効率的に相談するにはどうしたら良いか」など、進め方を悩むこともあるでしょう。
今回は、セカンドオピニオンにおけるシチュエーション別の具体的な質問例や事前準備など、実践的な内容を解説します。セカンドオピニオンを有効活用し、自分とってベストな治療に臨めるようにしましょう。
目次
がん治療でセカンドオピニオンを検討すべき状況やタイミングとは

がん治療において、セカンドオピニオンを受診したほうが良い状況を3つのポイントに分けて解説します。さらに、おこなう時期も大切であるため、併せて確認しましょう。
がんの種類や進行度が妥当か確認したい場合
がんと診断された場合、がんのタイプや進行度は治療方針を決める際に重要な手がかりとなります。医師のなかには、自分の専門分野について検査画像を読影できても、専門外の読影は詳しくないという方もいる可能性があるのです。
がんの種類や進行度に疑問がある場合は、セカンドオピニオンを利用して、画像診断のスペシャリストである「画像診断専門医」や「放射線診断専門医」に診断の根拠となったCT検査やMRI検査の画像を確認してもらうと良いでしょう。
画像診断の専門医は、病理医のようにあらゆる種類のがんの診断にかかわるため、中立的な観点からの意見を聞くことができます。
複数の治療方法があり悩んでいる場合
がん治療には、手術・放射線治療・薬物治療などさまざまあり、いずれか1つだけおこなわれることもあれば、2つ以上の治療を組み合わせることもあります。
主治医から複数の治療方法を提案されて悩む場合は、セカンドオピニオンを利用すると良いでしょう。それぞれの治療方法について、主治医とは異なる観点からプラス面・マイナス面の説明を受けることで、自分にとってどの治療がもっとも適しているか判断しやすくなるでしょう。
提案された治療以外の方法があるか知りたい場合
がん治療において「手術を勧められたが放射線治療は受けられないのか」「開腹手術といわれたが、腹腔鏡下手術はおこなえないのか」など、ほかの治療方法があるかどうか知りたいときはセカンドオピニオンを検討しましょう。
セカンドオピニオンによって、治療の選択肢が増える可能性もあります。仮に主治医と同じ意見だったとしても、異なる観点から説明を受けることで、進言された治療方針への理解が深まるケースが多いです。
セカンドオピニオンを受けるタイミング
セカンドオピニオンを受けるタイミングは、最初の診断が下りたときがもっとも適しています。診断結果が出る前や、がん治療を受けている途中に受けることは難しいでしょう。診断結果が出る前に受けようとしても、検査データなど判断材料が揃っていないため、医師がきちんとした意見を述べられません。また、がん治療を受けている途中で、セカンドオピニオンでほかの治療を勧められた場合、これまでの治療を変更するのが簡単ではないケースもあります。
がん治療のセカンドオピニオンにおいて確認すべき内容

がん治療でセカンドオピニオンを受ける際に、しっかり確認しておきたい内容について、3つのポイントに分けて解説します。
がんの診断や病状に関する内容
がんの診断や病状についてのセカンドオピニオン医師に以下の内容を確認すると良いです。
はじめに、CT検査・MRI検査・PET検査など画像診断を見た結果、どのような点で診断を下したのか尋ねてみましょう。ファーストオピニオンを聞いても理解できなかった点があれば質問して、詳しく説明を受けるようにしてください。
ファーストオピニオンで聞いたもののほかに、今後起こりうる症状にどのようなものがあるかも確認します。
現在のステージ・転移の有無・がん組織の種類・悪性度などの性質について、ファーストオピニオンと相違がないか確認したり、追加の情報を教示してもらったりすることができます。
治療方針に関する内容
治療方針については、セカンドオピニオン医師が推奨する治療方法とその理由を聞いてみましょう。ファーストオピニオンと同様の見解であれば、追加情報を確認することで治療への理解を深められます。
異なる場合は、さらに以下の内容を確認して、最終決定する際の判断材料とすると良いです。
- 治療方法が複数ある場合は、それぞれの治療のプラス面・マイナス面
- 治療による副作用や後遺症について
- 標準治療以外に受けられる治療方法の有無
- 手術や放射線治療の場合、施術方法の種類について
- 推奨する治療にかかる日数
日常生活や予後に関する内容
がん治療が始まると、日常生活に影響が及ぶことが考えられます。セカンドオピニオン医師が推奨する治療は、通院のみでおこなえるのか、入院が必要か確認すると良いでしょう。
がんの診断や病状から、生存率や治癒の可能性など今後の見通しについても、セカンドオピニオン医師の見解を聞くことをおすすめします。ファーストオピニオンで聞いた内容に、情報を加えて知見を増すことができます。
がん治療のセカンドオピニオンにおける質問例

がん治療でセカンドオピニオンを受ける際に、どのように切り出したらよいか悩む人もいるでしょう。具体的な質問例をシチュエーション別に解説します。
がんの診断や病状に関する質問例
がんの診断や現時点の病状について、質問例は以下のとおりです。
がんの診断について
- 診断名は何ですか?
- どの程度がんが進行していますか?
- ステージでいうと、どこに当てはまりますか?
病状について
- がんの状態はどのくらい深刻ですか?
- 私のがんは体のどこにあり、何の検査で分かったのですか?
- これから先、どのような症状が起こる可能性がありますか?
ファーストオピニオンで聞いた内容と照らし合わせて、理解を深めたい点や見解が異なる点があれば、その場できちんと確認しましょう。
治療方針に関する質問例
治療方針に関する質問は、治療を選択する際と、選択した治療についての2つにわけて解説します。
治療を選択する際の質問例
がん治療を選択する際に、セカンドオピニオン医師に確認すると良い質問は以下のとおりです。
- 私の病状に対してできる治療は何がありますか?
- 私と同じような病状の患者さんは、どういった治療を選んでいますか?
- 主治医からいくつか治療法を提案されましたが、それぞれの治療について改善の見込みや副作用・後遺症などを教えてください
- 主治医から手術を勧められましたが、放射線で治療できる可能性はありますか?
- 標準治療のほかに、効果的な治療があるか教えてください
主治医から提案された治療方法と異なる治療について尋ねる場合、なぜその治療を受けてみたいのか理由も明確に伝えると良いでしょう。
選択した治療についての質問例
がん治療の方法は決めたものの、さらに知識を広げたいときの質問は次のものが挙げられます。
- 選んだ治療の目的は、根治を目指すものか、症状緩和させるものか教えてください
- 選んだ治療は、どのようなスケジュールで進めていくのですか?
- 選んだ治療方法には、どのような副作用や後遺症がありますか?
- 副作用が現れたときに対処法はありますか?
- 選んだ治療の効果が現れる確率はどのくらいですか?
- 治療効果が得られるまでにどのくらいの時間がかかりますか?
- 選んだ治療で効果がみられなかった場合、ほかにどのような治療がありますか?
日常生活や予後に関する質問例
がんの病状や治療方針だけではなく、日常生活への影響や今後の見通しに対する理解も必要です。日常生活と予後について、それぞれのシチュエーションで質問例をみていきましょう。
日常生活に関する質問例
日常生活にかかわる質問例は以下のとおりです。
- がん治療によって、長期間仕事を休む必要はありますか?
- 普段の生活で注意することはありますか?
- 現在摂っているサプリメントや健康食品を続けても大丈夫ですか?
- スポーツや趣味など、今まで通りの生活を続けられますか?
予後に関する質問例
予後に関する質問例は次のものが挙げられます。
- 治療によって、がんが治る可能性はありますか?
- 今の病状だと、どのくらい生きられますか?
- 推奨される治療を受けなかった場合、どのような可能性が考えられますか?
セカンドオピニオン受診時に時間を有効活用するためのポイント

セカンドオピニオンの時間は、一般的に30分〜1時間程度でおこなわれます。限られた時間を有効活用するために気をつけることを3つのポイントに分けて解説します。
具体的な質問をおこなう
医師から的確な意見をもらうためには、具体的な質問を用意しましょう。ファーストオピニオンを聞いて気になることや理解できないことを書き出し、整理しておきます。受診時には、質問しそびれることがないように質問リストを準備しておくと良いです。
どのように質問するべきか分からない場合は、がん相談支援センターに相談しましょう。質問したい内容や知識を増やしたい点を、相談員が一緒に考えてくれます。
質問事項の優先順位をつける
セカンドオピニオンの時間が30分〜1時間ほどであれば、質問できるのは3つ〜4つ程度と心に留めておきましょう。
質問リストのなかから、特に確認しておきたいものから優先順位をつけておくことをおすすめします。質問は簡潔にして、何を確認したいのかはっきり伝えると良いです。
信頼のおける人に同伴してもらう
セカンドオピニオン当日は、信頼のおける人と一緒に話を聞いてもらうと良いです。がんのように深刻な病気のときは、不安感から医師と上手に話せないこともあります。
困ったときに同伴者がいれば、サポートを受けられるでしょう。また、自分は医師とのやり取りに専念して、同伴者に質問の答えをメモしてもらうことも可能です。
がん治療のセカンドオピニオンにおける事前準備と注意点

がん治療でセカンドオピニオンを受ける際に、準備することや注意点について解説します。
がん治療のセカンドオピニオンにおける事前準備の流れ
がん治療でセカンドオピニオン受診までのおおまかな流れは、以下のとおりになります。
- 主治医の診断と治療方針を理解する
- セカンドオピニオンを希望していることを主治医に伝える
- 受診する病院を決定・予約する
- 主治医に紹介状を用意してもらう
- セカンドオピニオンを受診する
セカンドオピニオンの事前準備における注意点
がん治療のセカンドオピニオンを有益なものにするために、事前準備で注意する点を3つ紹介します。
セカンドオピニオン医師の選び方
セカンドオピニオンの医師を選ぶ際は、自分で探したり主治医から紹介してもらったりする方法があります。
主治医に紹介してもらうと、同じ診療科の医師が担当になる場合が多いです。その際は、セカンドオピニオンで話を聞いても主治医とほぼ同じ観点での説明となってしまうため、追加する情報が得られないことがあります。
新しい意見を求めたいときは、放射線科の専門医へ相談することをおすすめします。さまざまながんの画像診断をおこなっているため幅広い知見があり、主治医と違う観点から説明を受けられるでしょう。
セカンドオピニオンを受けるにあたり、主治医と違った観点を重視したい場合は、自分で探したり、がん相談支援センターで相談したりするほうが良いでしょう。
主治医と関係性を保つ伝え方
現在は、がん治療におけるセカンドオピニオンは日常的になっていますが、主治医と折り合いが悪くなることを気にする人もいます。
関係性を悪くしないために「提案された2つの治療方法を選ぶのに、ほかの医師の意見を聞きたい」「手術を勧めてもらったが、通院でできる放射線治療でも可能か聞いてみたい」などセカンドオピニオンを受けたい理由をはっきりと伝えましょう。
また、セカンドオピニオンを申し出る前に、主治医としっかり話し合い、診断や治療方針の根拠などを理解することが大切です
セカンドオピニオン受診にあたり必要なもの
セカンドオピニオンの受診が決定した際は、主治医に依頼して以下のものを準備しましょう。
- 診療情報提供書(紹介状)
- 血液検査・病理検査のデータ
- CT検査・MRI検査など画像診断のデータ
セカンドオピニオンを受ける際の準備や手順について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
>>セカンドオピニオンのやり方とは?準備するものや手順など解説
まとめ

がん治療におけるセカンドオピニオンを有効活用するためには、事前の準備が重要です。ファーストオピニオンを十分理解した上で、病状・治療方法・日常生活への影響など、自分が何を知りたいのか明確にして、具体的な質問を用意しましょう。限られた時間のなかで相談を効率的に進めるため、質問の優先順位をつけておくと良いです。
セカンドオピニオンの医療機関を選ぶ際は、新しい観点からの意見を得るために、放射線科専門医など主治医と診療科が異なる医師が担当しているところをおすすめします。今回紹介したシチュエーション別の質問例を活用し、より自分にあった治療の選択につなげていきましょう。
セカンドオピニオンを受けるか迷っている方は、以下の記事もご覧ください。
>>セカンドオピニオンに意味はあるのか?受けるべきか迷ったときに整理すべきポイントについて